2019 年 50 巻 p. 249-260
特殊鋼製鋼スラグを想定した,CaO-SiO2系ガラス状固化試料におけるFeおよびCrの化学状態を,各金属のK吸収端XANES領域におけるX線吸収分光(XAS)測定により調査し,試料中FeとCrの価数存在比をそれぞれ算出した.その存在比は溶融時の酸素分圧,塩基度(wt%CaO/wt%SiO2)を指標とする試料の組成,FeとCr各々が単独か共存かに影響を受け,大きく変化した.特に,価数を変化させ得る異金属が共存することによる価数存在比の変化は,同条件下で各金属単独の場合における価数によって異なることがわかった.より複雑な多元組成である実工程でのスラグ中金属の化学状態が単純でないことは容易に予想されるが,その調査および製綱工程の設計に指針を与える強力なツールとして,XASを利用した分析手法の適用が有効であることが示された.