X線分析の進歩
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原著論文
和歌山カレーヒ素事件における住友金属鉱山製亜ヒ酸25缶のSPring-8鑑定の問題点
河合 潤岩井 信
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2020 年 51 巻 p. 119-140

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抄録

シンクロトロン放射蛍光X線(SR-XRF)分析の問題点を,和歌山ヒ素カレー事件の鑑定分析に基づいて調査研究した.この事件では,亜ヒ酸の缶が異なれば,不純物として含まれるアンチモンのX線ピーク強度が違うことを立証するために,住友金属鉱山株式会社製As2O3の25缶がSPring-8 BL08Wで測定された.鑑定を行った中井泉は,缶が異なれば不純物元素アンチモン(Sb)の蛍光X線ピーク強度が変化したという趣旨の証言をした.ところが,Sb濃度が同一であったにもかかわらず,Sb/As蛍光X線強度比が異なると証言した場合が複数存在した.一方では,林真須美関連亜ヒ酸は,パターン認識によってカレーに入れられた亜ヒ酸と同一の蛍光Ⅹ線スペクトルであると結論された.SR-XRFの測定精度は悪く,測定ごとに強度はばらつき,濃度が近接したSR-XRFスペクトルは,偶然のばらつきによって,同一であるかのように見えたり異なるかのように見えたことを示した.これらの事実に基づいて,SR-XRFによる定量分析値の信頼性は低いことを結論した.SPring-8のSR-XRF検量線は一応は直線であるが,実測値はその直線からのばらつきが大きいことが原因であると結論した.

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© 2020 公益社団法人日本分析化学会 X線分析研究懇談会
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