2020 年 51 巻 p. 25-30
メスバウアー分光は固体の電子状態測定,特に鉄原子の状態測定に広く用いられている.メスバウアースペクトルから得られる主なパラメータとしては原子の価数を反映したアイソマーシフト,磁気モーメントを反映した内部磁場,原子周囲の対称性を反映した四極子分裂の3つがある.メスバウアー分光測定には一般的には放射性同位体(RI)線源をγ線源として用いるが,RI線源の代わりに放射光を光源として用いるメスバウアー分光法がいくつか開発され,高輝度,高指向性という放射光の利点をメスバウアー分光へ持ち込むことができるようになっている.これらの手法の中から通常のメスバウアー分光とほぼ同様のスペクトルを得ることができる2つの手法について紹介する.