X線分析の進歩
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分析応用
ルビジウム化合物に対する高エネルギー分解能蛍光検出X線吸収微細構造(HERFD-XAFS)測定-生体内ウランの化学形の評価法の前検討として
佐藤 遼太朗上原 章寛大澤 大輔石井 賢司松村 大樹沼子 千弥及川 将一武田(本間) 志乃
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2023 年 54 巻 p. 193-201

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抄録

ウランなどのアクチニドの内部被ばくの際,キレート剤で除染する効率の評価には,体液中のキレート剤に結合しているウランと生体物質に結合しているウランの割合を求めることが必要である.これらウランの化学種を判別するのにX線吸収微細構造(XAFS)法は有効であるが,従来の蛍光XAFS法では,キレート剤のウラン錯体と血清中のウラン錯体のXAFSスペクトルが類似しており,ウランと結合する配位子の区別が困難であるなどの問題があった.そこで本研究では,高いS/B比で明瞭な形状のXAFSスペクトルを得ることのできる高エネルギー分解能蛍光検出X線吸収微細構造法 (HERFD-XAFS)により,生体内でウランに結合する生体物質やキレート剤の分別が可能であるかの検討を行った.測定には強度の高いアンジュレーター光を用いるため,試料ダメージがあっても安全な代替元素として,U Lα1線 に近いエネルギーのRb Kα線を選択し,Rb2SO4などの無機標準試料と,ルビジウム添加血清液滴試料のHERFD-XAFS測定をSPring-8 BL11XUで試みた.0.1 wt% Rb2SO4,RbClおよびRbBrのHERFD-XAFSでは,通常の蛍光XAFSよりもS/B比が高く振動構造が明瞭なX線吸収端近傍構造(XANES)スペクトルが得られた.ルビジウム添加血清液滴試料のHERFD-XAFSスペクトルも得ることができたが,1.5時間の測定で試料ホルダーに用いたポリプロピレンフィルムに穴があいたことからホルダーの窓材の検討が必要であることがわかった.

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© 2023 公益社団法人日本分析化学会 X線分析研究懇談会
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