YAKUGAKU ZASSHI
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一般論文
ハッショウマメ(Mucuna pruriens)の個人間インターネット取引での広告・販売の実態に関する調査
佐藤 謙一郎肥田 あゆみ新美 芳樹岩田 淳岩坪 威
著者情報
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2023 年 143 巻 12 号 p. 1057-1067

詳細
Summary

Mucuna pruriens (MP) is leguminous plant which contains 5% of L-3,4-dihydroxyphenylalanine (levodopa) in its seeds. It may have a potential to be used as an alternative therapy for Parkinson’s disease (PD). Meanwhile, there is a concern in terms of public health that MP products can be overused by patients with PD. As an entry for patients with PD to acquire MP products in Japan, they are often purchased via internet auctions or free markets. MP products are not reagrded as ‘pharmatheutical’ by Japanese law as long as the specific legal requirements on advertisements are met, so that the MP products can be advertised or sold without any permission from the authorities. In this study, we aimed to conduct internet survey as to the complianse status of these legal requirements. Several major internet auction or free market websites in Japan were surveyed in May–June 2023 by the authors, and 1157 MP product pages were examined. We found approximately 30–40% of the MP products were suspected to have potential legal risks in terms of their advertisements in their website descriptions, such as claiming pharmatheutical efficacy or describing pharmatheutical-like dosages. In addition, approximately 30–40% of the MP products also did not refer to cautions not to take MP products excessively because of the levodopa ingredients. Current study suggested the need of careful description of the MP products in the auction or free market websites for the MP products exhibitors or sellers, in order to fullfill legal requirements as well as to prevent MP abuse.

1.はじめに

ハッショウマメ(Mucuna pruriens variant utilis)はムクナ豆とも称される豆科の植物で,インド・東南アジア・東アジア・中南米・アフリカといった熱帯や亜熱帯の広い範囲に分布しており,1その種子の乾燥重量中の5%程度にL-3,4-dihydroxyphenylalanine(levodopa)を含む1ことが知られている.Dopamineの前駆物質であるlevodopaを主成分とする医薬品は筋強剛・寡動・振戦・姿勢反射障害を特徴とした運動症状等を呈する神経変性疾患であるパーキンソン病(Parkinson’s disease: PD)に対する標準的な薬物治療としてこれまで数十年にわたって利用されてきており(パーキンソン病診療ガイドライン2018, pp. 25–27),2同じくlevodopaを含むハッショウマメはPD運動症状を改善させる効果が一定程度はあると考えられている.35しかしながら,PDに対する非薬物療法としての有用性については,エビデンスの不十分さ,含有量の不安定さ,安全性の観点等からこれまでのところ特に推奨されていない(パーキンソン病診療ガイドライン2018, pp. 214–215).2

わが国においてはハッショウマメは江戸時代に伝来し栽培されてきたが徐々に栽培量がへり,直近の半世紀ほどはほとんど食用とされてこなかった農作物である.6近年,収量が多い・健康によいなどの有用性があるとして国内での栽培地域が再び徐々に拡大してきつつあるとされる.7,8その食品としての用法用量として通用している典型的なものは「調理した豆1回3粒を1日3回」ないし「焙煎粉末を1回3 gを1日3回」といったものである.この場合,粉末中のlevodopa含有量を3%と仮定すると,270 mg/d相当程度のlevodopa単剤が摂取されることになる.この程度の量であっても,今後もし仮に一般に広く流通するようになった場合,現在治療中のPD患者において主治医による処方量を明らかに超えた実質的な自己投薬が可能になり過剰摂取につながり得るといった,医療管理上及び公衆衛生上の懸念が考えられる.

このようにハッショウマメには医薬品の成分(levodopa)が一定量含まれるが食品扱いで消費者のもとへ流通しているのは,医薬品の販売流通を規制する法律「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下,薬機法)にいう「医薬品」(薬機法第2条第1項)とはみなされず,製造販売について特に規制当局による制約を受けない(薬機法第14条第1項)からと考えられる.ただしそれには要件があり,「医薬品的な効能効果を標ぼう」したり,「アンプルなど医薬品的形状」であったり,あるいは「用法用量が医薬品的」であったりしないよう[昭和46年第476号通知・II判定方法(二)],コンプライアンス上注意する必要がある(具体的な論拠は方法のセクションで後述する).

そもそも現在のわが国で消費者にどのような経路・態様でハッショウマメが流通する状況になっているのかというと,一般に流通している農作物ではないため,一般企業,農家,個人が耕作・収穫した豆を加工して道の駅・直売所などの店頭,又はネット上で食品として販売することが主な経路になっている.特に,近年のインターネットサービスの普及とともに,これまで特に流通販路を持たないような個人でもフリーマーケット(フリマ)などを介して不特定の相手にハッショウマメを販売することが可能になった.販路を持つ一般企業は監督官庁のコントロールが相対的に及び易いと考えられるのに比べると,個人については一般論としてはコンプライアンス上の問題が起こり易い,ないし解決され難いと考えられる.実際,医薬品の場合について,ネット上のフリマサイトの規約で法令(薬機法)に基づいて取引が禁止されているにもかかわらず個人によって出品されるケースが過去に散見されていたことが先行研究で示されている.9そしてハッショウマメについても,フリマサイトを検索・閲覧してみると出品の説明文において「パーキンソン病」のように具体的な疾患名を挙げている,「1日3回服用する」のように用法用量を記載しているなど,医薬品的な効能効果を標ぼうする又は用法用量が医薬品的であるように見受けられるハッショウマメの出品が現に散見された(筆者調べ,2023年5月).これは上述の要件からすると無承認無許可医薬品とみなされて法令上の問題が生じてくる可能性がある.

さらには,法律上の問題だけではなく,医療・公衆衛生上の懸念もある.例えば,「効能効果を標榜」(昭和46年第476号通知)した場合,他のインターネットサイトで調べる・確認するなどの慎重さを促すようなステップを介さないため,PD患者やその親族がハッショウマメを注意事項の留意なしに購入し安易に使用する可能性がより懸念される.また医薬品的な用法用量が記載されている場合にも,その服用量が適正である保証はなく,安全性や過剰服用の問題はやはり懸念される.このような,今後仮にハッショウマメが普及して行った場合にそれに伴って想定され得る弊害に対して臨床の立場から備えておくためには,まず消費者のもとへどのような態様で流通していくのか,その入り口の特徴に関する実態を知る必要がある.そこで本研究では,ハッショウマメのインターネット上での個人間取引の実態について検討する目的で,フリマサイト・オークションサイトでのハッショウマメの個人販売の実態に関して調査を行うこととする.

方法

1. 本研究について

本研究はフリマサイト・オークションサイトにおける出品ページ及びその記述内容を検討対象とするインターネットサーベイである.10「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」にいう人を対象とした研究ではないため,倫理審査を要しない.また患者データその他の個人を識別可能な情報は取得していない.なお本検討では個別のサイトや出品者について評価することが目的ではないので,固有名に言及することはしないものとする.

2. 対象サイトの検索・情報抽出

わが国において利用者数が多く代表的な国内フリマサイト及び国内ネットオークションサイトの計4サイトを検討対象とし,それぞれのパソコンサイトにおいて「ムクナ豆」「ハッショウマメ」「八升豆」を検索用語として入力し,出品検索を行った(期間:2023年5月30日–同年6月2日).出品画面について組み入れ基準を充たしかつ除外基準に抵触しないと筆者らが判断した各出品ページをすべて画面保存したうえで,所定の項目について判定及び情報取得を行った.これら検索・保存・判定・抽出にあたっては筆者自身がすべてパソコン上の手作業で行い,スクレイピングなどの自動化処理は用いていない.

組み入れ基準として,出品中ないし売り切れの出品(オークションサイトについては落札済のみ)で,ハッショウマメの販売形態として豆そのものないし加工品としての粉末(焙煎粉末)を対象とした.また除外基準として,ハッショウマメの苗・葉・お茶を含む出品,出品種類が混在しているもの,出品者が株式会社ないし有限会社である出品,また出品物の販売者ないし加工者が株式会社ないし有限会社であると出品ページ内の情報から明示的に判別できる出品,は対象から除いた.

情報取得する項目としては,出品アカウント名の文字列の前半部分,送料込・税込での合計の出品価格(オークションサイトの場合は最終落札価格),ハッショウマメの販売形態(g単位での豆販売,g単位での粉末販売,粒単位での豆販売,のいずれか),出品量・単位(gないし粒),耕作用の種子としての利用に言及しているか否か,また含有成分としてlevodopaないし関連成分名(「L-ドパミン」「ドーパミン」「ドパミン」等)に言及しているかについて情報取得を行った.なお出品アカウント名については,サイトが異なる場合には文字列が一致していても異なるアカウントとして扱った.

3. ハッショウマメが医薬品に当たるかどうかについて

ここで,ハッショウマメが医薬品に当たらないと考える法的な論拠及びその要件を以下に述べる.まず「医薬品」とは薬機法第2条第1項で定義されており,一般に医療機関で処方されるような医薬品は「日本薬局方に収められている物」(同項第1号)として判断が比較的容易だが,それ以外で(例えばハッショウマメのように)食品か医薬品かの区別がしづらいようなものについては同項第2号・第3号に規定する医薬品に該当するか否かが問題となる.この判断基準は昭和46年第476号通知(及びこれを継承した平成13年第243号通知)によって示されており,「医薬品としての目的を有しているか,又は通常人が医薬品としての目的を有するものであると認識するかどうかにより判断する」とされる.大まかには(I)物の成分本質(原材料),効能効果,形状及び用法用量の観点から医薬品的であるかを検討し,(II)それに基づいて所定の方法によって判定する,とされる[「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(昭和46年第476号通知)].

そして物の成分本質(原材料)については昭和46年第476号通知・別添「食薬区分における成分本質(原材料)の取扱いについて」で示されており,「食薬区分における成分本質(原材料)の取扱いの例示」(令和5年2月17日通知)・別添1「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に例示されているものを含む物はそのまま医薬品とみなされる[昭和46年第476号通知・II判定方法(一)].一方で上記成分本質リストに例示されていない場合[令和5年2月17日通知・別添2「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」に収載されている場合など]でも,①「医薬品的な効能効果を標ぼうするもの」,②「アンプル形状など専ら医薬品的形状であるもの」,③「用法用量が医薬品的であるもの」にあたると判断される場合には同様に医薬品とみなされることになる[昭和46年第476号通知・II判定方法(二)].

上記基準に照らすと,ハッショウマメは令和5年2月17日通知・別添2「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」に全草が収載されていて,またlevodopaは食品表示基準第9条第9項にいう栄養成分にも該当しないから,昭和46年第476号通知・II判定方法(二)に従うと,医薬品的な効能効果を標ぼうしたり,アンプルなど医薬品的形状であったり,また用法用量が医薬品的であったりする場合には,無承認無許可医薬品とみなされて薬機法第14条第1項(医薬品,医薬部外品及び化粧品の製造販売の承認)違反にあたる可能性がある.加えて,出品ページで無承認医薬品とみなされる出品について効能効果的な説明等を記載することは,平成10年9月29日第148号通知「薬事法における医薬品等の広告の該当性について」に示されている広告の3要件「1. 顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確」と言え,「2. 特定医薬品等の商品名が明らかにされて」おり,また「3. 一般人が認知できる状態である」ことにも該当するから,3要件をすべて充たしていて医薬品の広告にあたるので,薬機法第68条(承認前の医薬品,医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止)違反にもあたる可能性がある.

ところで昭和46年第476号通知及びそれを継承した平成13年第243号通知では,通常の食生活からして容易に食品であることがわかるような「1 野菜,果物,菓子,調理品等その外観,形状等から明らかに食品と認識される物」については上記判定方法によることなく「明らか食品」として医薬品として扱わない,ということも示されている.ハッショウマメは未加工であれば一見してエンドウマメや大豆のように通常一般人が認識するようないわゆる豆の範疇に入っているから,上記ハッショウマメが医薬品として扱われてしまう要件を検討するまでもなく医薬品にはあたらないとする議論も考えられる.しかしこれについては,行政側の運用として『有効成分が添加されている場合,一般的でない場合,主目的が食品でない場合,乾燥品であって医薬品として使用されている場合』には明らか食品には当たらないとしている文献がある.11これに基づくと,ハッショウマメやその焙煎粉末自体がわが国で一般的な植物・食品であったとは,温暖な地域に適する植物であることも踏まえると少なくとも全国レベルでは言えないと考えられる.また用法用量が「1回3粒」などと記載されているような場合には食品としてはあまりに少量であり,主目的がその食用としての豆であるとは言えない可能性が高いと考えられる.したがって,一般性や主目的に関する判断は地域性によるという可能性はなお残るものの,ハッショウマメは「明らか食品」には当たらないのではないかと考察する(筆者らの私見).また,たとえハッショウマメが「明らか食品」に該当するものであったと仮定しても,つまり医薬品と看做される恐れを別段考慮しなくてよいとしても,「販売に供する食品につき,乳児用,幼児用,妊産婦用,病者用その他内閣府令で定める特別の用途に適する旨の表示」をすることは健康増進法第43条第1項(特別用途表示の許可)で制限されている.特定の疾患名を挙げることは「病者用…の用途に適する旨の表示」にあたるから,やはり許可なく医薬品的な効能効果を挙げることは違法になる.したがって,いずれにしても,製造販売にあたって医薬品的な効能効果を謳わないよう注意するべきであることには変わりない.

4. 判定項目とその基準

上記の論拠を踏まえて,ハッショウマメの販売が法令(薬機法ないし健康増進法)上違法にならないための要請という観点から,「医薬品的な効能効果を標ぼう」しているか,「アンプルなど専ら医薬品的形状である」か,また「用法用量が医薬品的である」か,といった項目について各出品ページについて筆者ら自身で判定した.なおこのように法律上の要件を評価基準に用いているのは,医薬品的な性質を帯びるハッショウマメの個人間インターネット取引の適正さについて評価するにあたって,医療倫理上のいわばminimum requirementとしても関係法規が機能していると考えたことによる.また追加項目として「副作用など注意事項に言及しているか」についても判断した.

ここで,「医薬品的な効能効果」については基準や例示が一応公表されているとはいえ表現の仕方によっては判断がかならずしも容易ではないという問題があり,医薬品的な効能効果に該当するかどうかは最終的には監督官庁が判断するものであって本検討の筆者らの判断と一致する保証はないところ,その乖離の程度について確認する術もない.このため,微妙な表現について判断せずに済むように,基本的には保守的かつ機械的に判断し易い基準を用いることにした.具体的には,特定の疾患名が明示的に記載されている場合には{具体的な疾病の治療又は予防を目的とする効能効果[「医薬品の範囲に関する基準」Iの2(一)]}又は「[医薬品的な効能効果の暗示(同(三)]」にあたる可能性が(文脈によらず)高いと考えられるため,『具体的な疾患名(パーキンソン病,うつ病,アルツハイマー病など)について直接的に言及しているか(病名の単語が含まれるか)』を本項目における基準とした.

また医薬品的な用法用量の判断については,平成13年第243号通知における例示を参照し判定を行った.ただし,食品においても機能性表示食品の場合は「一日当たりの摂取目安量:1日3粒」といった表現が許容されているが,機能性表示食品の届出情報検索12において「ハッショウマメ」「ムクナ豆」に関連して該当する食品はサーベイ実施時点までにおいて存在せず,また現に機能性表示食品である旨が記載された出品は確認されなかったため,一般に機能性表示食品として許容されている表現(例:「一日当たりの摂取目安量:1日3粒」など)であっても判断対象とした(なお先述の通り,出品物の販売者ないし加工者が株式会社・有限会社であると出品ページ内の情報から明示的に判別できる出品は検討対象から除いている).

また副作用の記載の有無については,例えば『食べ過ぎるとドパミン過剰によって不眠や下痢になる』のように,過剰服用による弊害があることと,その結果としての症状名が同時に併記されている場合に,注意事項に言及ありと判定することにした.単に『食べ過ぎ注意』というだけのように適量服用を勧めるのみの場合はどのような食品にも当てはまり得る非特異的な表現であるので,対象外とした.

5. 統計解析

データ解析は統計ソフトR(R Foundation for Statistical Computing, Vienna)を用いて行った.解析内容として,(1)抽出した判定・項目について各サイト・各販売形態(豆vs.粉末)での統計結果を,二値変数は頻度と%,連続変数は推定値及び95%信頼区間としてまとめた.続いて(2)異なるサイトの結果をまとめるためにメタアナリシスの手法を用いて統合値を得た.なおオッズ比を求めたときには,その95%信頼区間に1が含まれていなければ統計学的に有意と判断した.さらに,(3)出品者毎に出品数には違いがあると考えられるが,その平均出品数,及び出品数分布の出品者による偏り(ジニ係数)を算出した.また出品の説明における記載内容には典型的なパターンがいくつかあると考えられたことから,それを潜在クラス分析(latent class analysis)によって抽出することを試みた(出品単位での検討).これにはRパッケージ(poLCA)を用いた.13なおクラス数を決定するにあたってはクラス数を1–12の範囲で各々結果を得て,最もBayesian information criterion(BIC)値が小さくなるクラス数を採用した.

最後に,(4)levodopa単剤100 mgと同量を摂取するために必要なハッショウマメをサイトで購入するのにかかる価額を算出した.これは以下のEq.(1)

  
(1)

として得られる.まず乾燥重量1 gあたりの価格(日本円/g)は上記メタアナリシスで出品形態毎に算出した点推定値を用いる(なお粒単位の豆販売の場合(例:20粒で400円など),1粒=0.8 gとしてg単位に変換した).またハッショウマメのlevodopa含有量については,生豆で5.0%と仮定して,14更に煮て食する場合にlevodopa含有量が1/4–1/3程度に低下するという報告があるので,15,16豆として食する場合には元の乾燥重量に対して含有量は1.25–1.67%であるとする.一方で焙煎した粉末の場合,levodopa含有量は(調理条件にもよるが)1/2–2/3程度に低下するという報告があるので,15,16粉末として食する場合には元の乾燥重量に対して含有量は2.5–3.33%であるとする.これらを上記Eq.(1)に代入して算出した.

結果

1. データ抽出結果

検索によりヒットした合計1157件の出品について検討した.このうち豆(g単位)は422件,粉末(g単位)は414件,豆(粒単位)は321件であった.4サイトの内訳でみるとサイトAが745件,サイトBが227件,サイトCが118件,サイトDが67件であった.出品されたハッショウマメの総重量は単純に積算して506.2 kg[豆(粒単位)は1粒=0.8 gとして計算],全体のうちで売り切れ又は落札済の出品は957/1157件(82.7%)を占めていた.

2. 出品種別の統計

4サイト及び3種類の出品種類[豆(g単位)・粉末(g単位)・豆(粒単位)]毎に,抽出した変数について統計をとった(Table 1).基本的にはサイト毎にばらつきが大きいが,豆(g単位)において「PD病名あり」については概ね3–4割とどのサイトも同様の結果が得られていた.

Table 1. Statistics of Each Variable, Summarized by Type of Product and Website

Type of MP productWebsite No.NReferring to diseasse name of PDReferring to other disease namesReferring to dosageBeing shaped like pharmatheutical productsAny of the left 4 items applyReferring to caution in useReferring to levodopa includedPrice per unit weight (JPY/g)
Bean (sold in gram-units)1324108 (33.33%)49 (15.12%)76 (23.46%)0 (0%)149 (45.99%)81 (25%)150 (46.3%)6 (4–17.4)
24821 (43.75%)25 (52.08%)24 (50%)0 (0%)33 (68.75%)24 (50%)33 (68.75%)8.8 (4.2–18)
3269 (34.62%)9 (34.62%)9 (34.62%)0 (0%)9 (34.62%)9 (34.62%)9 (34.62%)6 (4.9–29.6)
4248 (33.33%)9 (37.5%)8 (33.33%)0 (0%)14 (58.33%)9 (37.5%)14 (58.33%)9.4 (4.3–18)
Powder (sold in gram-units)1233161 (69.1%)88 (37.77%)115 (49.36%)0 (0%)187 (80.26%)67 (28.76%)139 (59.66%)11.5 (9–14)
210745 (42.06%)71 (66.36%)71 (66.36%)0 (0%)82 (76.64%)71 (66.36%)82 (76.64%)12.8 (11.3–19)
3378 (21.62%)11 (29.73%)11 (29.73%)0 (0%)11 (29.73%)11 (29.73%)11 (29.73%)12 (10.7–19)
4374 (10.81%)25 (67.57%)25 (67.57%)0 (0%)25 (67.57%)25 (67.57%)25 (67.57%)18.5 (11.7–20.2)
Bean (sold in grain-units)118839 (20.74%)23 (12.23%)22 (11.7%)0 (0%)53 (28.19%)21 (11.17%)117 (62.23%)34.3 (21.9–84.1)
27222 (30.56%)20 (27.78%)17 (23.61%)0 (0%)23 (31.94%)16 (22.22%)53 (73.61%)43.8 (8.9–62.5)
3550 (0%)0 (0%)0 (0%)0 (0%)0 (0%)0 (0%)33 (60%)20.6 (18.8–31.3)
460 (0%)2 (33.33%)0 (0%)0 (0%)2 (33.33%)0 (0%)0 (0%)49.9 (38.2–71.8)

Binomial variables are summarized in frequency (%), and continuous variable is summarized in median and 95% CI. Abbreviations: MP, Mucuna pruriens; PD, Parkinson’s disease; JPY, Japanese Yen; CI, confidence interval.

続いてサイト毎のばらつきを均すためにメタアナリシスの手法を用いて比率及び平均値を統合した(Table 2).豆(g単位)においては「PD病名あり」「その他病名あり」「用法用量あり」「服用にあたっての注意事項の説明あり」は概ね3割強であった.粉末(g単位)については「その他病名あり」「用法用量あり」「服用にあたっての注意事項の説明あり」の該当割合はより高く,4–5割程度であった.なお「その他病名」の具体例としてはうつ病,アルツハイマー病,注意欠陥・多動症(ADHD)等が確認され,また用法用量の具体例としては「(粉末で)1回3 gを1日3回まで」のような記載が確認された.

Table 2. Synthesized Statistics with Meta-analysis

Type of productReferring to diseasse name of PDReferring to other disease namesReferring to dosageBeing shaped like pharmatheutical productsAny of the left 4 items applyReferring to caution in useReferring to levodopa includedPrice per unit weight (JPY/g)
Bean (sold in gram-units)0.346 (0.302–0.393)0.32 (0.186–0.493)0.335 (0.233–0.456)0 (—)0.52 (0.4–0.637)0.348 (0.248–0.464)0.521 (0.401–0.638)9.3 (7.4–11.2)
Powder (sold in gram-units)0.337 (0.146–0.602)0.504 (0.339–0.667)0.538 (0.393–0.677)0 (—)0.659 (0.45–0.821)0.476 (0.292–0.667)0.597 (0.419–0.753)13.4 (11.9–15.0)
Bean (sold in grain-units)0.054 (0.003–0.487)0.108 (0.024–0.376)0.05 (0.005–0.345)0 (—)0.143 (0.027–0.503)0.05 (0.006–0.327)0.573 (0.304–0.805)37.4 (26.3–48.5)

Different estimates by websites were syntheiszed with meta-analysis. Random effect model was applied. Estimates and their 95% CI are provided. Abbreviations: MP, Mucuna pruriens; PD, Parkinson’s disease; JPY, Japanese Yen; CI, confidence interval.

「アンプルなど形状が医薬品的」であるような出品は出品種類にかかわらず全く認められなかった.また「PD病名あり」「その他病名あり」「用法用量あり」のいずれかに該当するものについて法令に抵触する可能性があるものとして別個に集計すると,豆(g単位)・粉末(g単位)については該当するものが実に5–6割にのぼった.なお現在販売中・入札受付中のものは販売済ないし落札済のものと比較して,法令違反にあたり得る出品である可能性が有意に高かった[オッズ比3.4(95%信頼区間:2.4–5.0)].また「levodopa言及あり」は5割程度に該当していた.

さらに,乾燥重量1 gあたりの価格は豆(g単位)が9.3円/g,粉末が13.4円/g,豆(粒単位)が37.4円/gで,出品種類で違いがあった.なお豆のうち豆(粒単位)の出品は種子としての用途に言及されている可能性が有意に高かった[オッズ比:19.9(95%信頼区間:13.4–30.1)].豆(粒単位)の出品は「PD病名あり」「その他病名あり」「用法用量あり」に該当する割合も低く,食品というよりは主に種子用途としてのカテゴリーで出品されているものと考えられた.

3. 出品者による出品の特徴

サイトの区別なくすべての出品者について各自の出品総数をカウントした結果,出品者毎の出品総数は平均11.9(95%信頼区間:1–53)個であった.また最小1個,25%値2個,75%値12個,最大84個とロングテール様の分布をしており,ジニ係数を計算すると0.606(>0.5)で出品者毎の出品総数の差が大きいという結果であった.

さらに,各出品の説明パターンはその出品者に依存すると考えられ,そのパターンを検出するため「PD病名あり」「その他病名あり」「用法用量あり」「服用にあたっての注意事項の説明あり」「levodopa言及あり」のそれぞれ2値変数を投入して潜在クラス分析を行った(Fig. 1).なおBIC値に基づいて潜在クラス数は4と決定した.Figure 1では,各クラスに属する出品について,各変数の出現確率を示している.大まかには,これらの変数がほぼ全項目記載されている出品群(Class1),「PD病名あり」「levodopa言及あり」のみが主に充たされている出品群(Class2),いずれの項目もほぼ記載されていない出品群(Class3),病名のみ記載されていない出品群(Class4)の4パターンに分けられるという結果になった.

Fig. 1. Latent Class Analysis of Product Explanation Patterns

Four classes were identified, and each of them has different patterns of probabilities to meet each variable. The number of classes (=4) was determined based on the BIC value. Abbreviations: PD, Parkinson’s disease; BIC, Bayesian information criterion. (Color figure can be accessed in the online version.)

4. Levodopa等用量のための必要費用

最後に,levodopa単剤100 mgと同量を摂取するために必要なハッショウマメをサイトで購入するのにかかる価額を算出した.豆として食する場合の元の乾燥重量に対する含有量を1.25ないし1.67%とし,粉末として食する場合には元の乾燥重量に対する含有量を2.5ないし3.33%として条件を変更し,それぞれの条件の2∗2=合計4つの組み合わせを用いて,Table 2で得た統合コスト(日本円/g)をEq.(1)に代入して必要価額を得た(Table 3).条件にもよるが,豆(g単位)はおおむね約60–70円/levodopa100 mg等用量,粉末は約40–50円/levodopa100 mg等用量,また豆(粒単位)は大幅に高く約200–300円/levodopa100 mg等用量という結果になった.

Table 3. Calculated Cost to Obtain MP Product of Which Amount is Equivalent to 100 mg of Levodopa Medications, by Different Levodopa Content (%) Conditions

Assumed conditions: levodopa content (%) when cooked, among 1 g of dry beanCalculated cost to obtain MP product of which amount is equivalent to 100 mg of levodopa medications (in JPY)
Bean (boiled)Powder (roasted)Bean (sold in gram-units)Powder (sold in gram-units)Bean (sold in grain-units)
1.252.5074.453.6299.2
1.253.3374.440.2299.2
1.672.5055.853.6224.4
1.673.3355.840.2224.4

Abbreviations: MP, Mucuna pruriens; JPY, Japanese Yen.

考察

ハッショウマメはlevodopaを5%程度含有し,収量がよく健康にもよい作物という位置づけでその全国栽培量が近年増えてきているとされ,もし今後の栽培量の増加に伴うハッショウマメの流通増加が起こった場合に,様々な医学管理及び公衆衛生上の懸念が想定され得る.例えば,現在治療中のPD患者において過剰摂取のリスクがあるばかりではなく,運動症状が出ている未受診のPDないし他のパーキンソン症候群患者においては中途半端に自己治療をしているような形になるため,診断や適切な介入開始が遅れたり,急に自己中断する結果として悪性症候群のリスクを惹起したりするなどの可能性があり得る.17また特に黒質・線条体系の変性がない健常人においても,levodopaによる副作用として不眠,消化器症状,また精神症状などは出得る.このような想定され得る弊害に対して臨床の立場から備えておくためには,まず消費者のもとへどのような態様で流通していくのか,その入り口の特徴に関する実態を知る必要がある.そこで本研究では,ハッショウマメのインターネット上での個人間取引の実態について検討する目的で,フリマサイト・オークションサイトでのハッショウマメの個人販売の実態に関して調査を行った.

結果として,「PD病名」「その他の病名」など具体的な疾患名が記載されている,また「医薬品的な用法用量」が記載されている出品が,豆の販売形態(豆vs.粉末)にもよるが概ね3–4割程度に認められていた.したがって,未承認医薬品扱いとなって薬機法違反にあたるか,あるいは仮に「明らか食品」として医薬品とは扱われなくとも健康増進法違反にあたるなど,いずれにしてもハッショウマメのインターネット出品のうち少なくない割合が法令違反を指摘され得る状態なのではないかと考えられた.また「服用にあたっての注意事項の説明あり」についても3–4割の出品で観察されるのみであり,医療的にも,かならずしも副作用などリスクが認識されず,安易な使用につながり得る懸念が潜在的にある状態と考えられた.

また記載のパターンを潜在クラス分析からみると,ほぼ全項目に抵触してしまっている出品説明のパターン(Fig. 1,Class1)やPD病名とlevodopa含有をメインで記載している出品パターン(Fig. 1,Class2)が見い出されており,これらについてはそれをみた消費者がより気軽に服用し易くなる恐れもあるので,より注意が必要と思われる.一方で,何も記載していないパターン(Fig. 1,Class3)や,用法用量を記載しつつ注意事項も説明しているパターン(Fig. 1,Class4)があり,これらはかならずしも問題があるとも言い難いパターンである.このように複数の出品記載パターンがある中で,出品者による出品数の偏りが大きいため(ジニ係数>0.5),全体の印象として受ける出品記載パターンには一部特定の多数出品者による出品の特徴が反映され易いことになる.そして,そのような印象は問題のあるパターンの出品を更に助長させる方向に働き易いと考えられる.逆に,一部の多数出品者が説明記載の内容をより適切に修正することによって,特に問題のない説明記載の全体的な割合が大きく向上することが期待できる.このため,出品の説明において,サイト運営者及び出品者(特に一部の多数出品者)にはより慎重な表現が求められる.またこれは現に行政による消費者間取引サイトへの監視強化がこれまで為されてきているこれまでの状況18,19と整合的である.

患者自身によるハッショウマメの服用についてはPD診療ガイドラインにおいては特に推奨されていないものの,サプリメントなどの非薬物療法はPD患者による自己責任での使用は否定するものではないとしており,2 PD患者が自ら望んでハッショウマメを服用することを一概に否定する必要はないと考えられる.既に述べたように,そもそものハッショウマメのPDに対する非薬物療法としての有用性は全体としてみるとかならずしもエビデンスが十分ではないが,一定の薬理学的効果は少数ながら示されてきている.具体例を挙げると,8人のPD患者において単回投与によるPD症状改善をlevodopaと二重盲検法で比較したクロスオーバー試験3では,ハッショウマメによる効果発現までの時間がより短く,またON時間がより長かったという結果が報告されている.また18人のPD患者において単回投与によるPD症状改善や副作用発現の程度をlevodopaと二重盲検法で比較したクロスオーバー試験4では,ハッショウマメはlevodopaの場合と運動症状の改善効果が非劣勢で,ジスキネジアその他の副作用がより少なく,またON持続時間がより長かったという結果が報告されている.一方で,継続的に用いるには悪心,不眠,パーキンソン症状の悪化など,忍容性がlevodopaよりも低かったという結果も報告されている.5これらを踏まえると,既存のlevodopa製剤を完全代替することは効果・副作用の観点からあまり現実的ではないと考える.

また費用面も,PD患者を含む使用者が継続的に服用するかを左右する重要な要素であるが,本検討においては,levodopa単剤100 mgと同量を摂取するために必要なハッショウマメをフリマサイトで購入するのにかかる金額は50円程度と見積もられた.levodopa単剤での内服医薬品としてわが国で承認されているものはドパストンカプセル(250 mg):薬価18.3円,ドパゾール錠(200 mg):薬価13.5円があるが,保険適用になることも踏まえるとlevodopa単剤100 mg分に要する自己負担分は医薬品であれば3円未満となり,実に10倍以上の差があることがわかる.

さらに,現在わが国でほとんど利用されていないこれらのlevodopa単剤20ではなく,末梢におけるlevodopaからdopamineへの代謝を阻害し中枢へ到達するのを促進するdopa decarboxylase inhibitor(DCI)が添加されたレボドパ/カルビドパ等levodopa/DCIと比較してみる.DCIなしのlevodopa単剤で同等の効果を得るために3.5–5倍程度の用量が必要とされている4ので,診療で頻用されるlevodopa/DCI 100 mg分と同程度の改善効果を得るためにはハッショウマメに単純計算で200–300円近く費やす必要があることになる.そうすると,既に1日数錠のlevodopa/DCI製剤による加療がなされているPD患者において完全にハッショウマメで代替させることはわが国においては費用面からも負担がむしろ大きいと考えられる.

一方で,既に処方されているlevodopa製剤に対する完全な代替ではなく,一部の代替,ないし追加・補完という使用の場合は,現実に利用される可能性がより高いと考えられる.例えば,現に通用しているハッショウマメの用法をみると,「煮豆を1回3粒(=約2.4–3 g相当)を1日3回」ないし「粉末を1回3 gを1日3回」を上限とするといったものである.豆として食する場合の元の乾燥重量に対する含有量を1.25ないし1.67%とし,粉末として食する場合には元の乾燥重量に対する含有量を2.5ないし3.33%とした場合,この典型的な用法に従うと,煮豆の場合90–150 mg/d,粉末の場合225–300 mg/dのlevodopa(単剤)が摂取されるということになる.これは通常のPD患者の一日のlevodopa必要量を一部代替できるに過ぎない量であるが,費用的にもハッショウマメ購入に必要な価額としても大まかに100–300円/日程度とそこまで大きい負担ではない.このため,この少しばかりの薬効増加を期待してPD患者が自ら追加的に使用するというようなパターンは(特に推奨しなくとも)現にあり得るものとして想定しておく必要はあると思われる.これに関連する問題として,初期PDでまだ必要levodopa量の多くない未受診者についてはその受診・診断を遅らせてしまう程度に影響し得るということがある.また一方で,上記用法用量に留まらずに過剰使用してしまう例もあり得るという問題もある.

わが国のPD患者のうちどのくらいの割合がハッショウマメを摂取しているか・したことがあるか・今後しそうかの目安ははっきりしないが,2013年の報告では,300人のPD患者にアンケートを取ったところうちわずか1.3%(4人)がハッショウマメ(ムクナ豆)を購入したことがあり,うち1人のみが継続していると回答している.21 2023年現在,実際においてどの程度であるかは全く不明であるもの,購入歴のある者の割合はこの2013年の報告時よりは増えてきている可能性もある.状況によっては,今後の調査が必要になってくるかもしれない.

本検討には限界がいくつか存在する.まず検索したサイトの仕様上,出品ないし落札日時が特定できず横断的な検討に留まるため,出品数の季節的変動の要素は考慮できていないし,また落札後に一定期間を経て既に削除されてしまった過去の出品がどの程度あったのか確かめることは困難である.また「医薬品的な効能効果」を始めとする判定項目についての判断がかならずしも正しい保証はない.さらに,本検討で確認した出品の総重量は0.5トン程度と,(個人間取引に着目している以上はむしろ当然ではあるが)全国での流通量のごく一部について検討しているに過ぎない可能性が高い.その根拠として,2022年の和歌山県内のハッショウマメの生産総量が3.3トン程度,かつそれが全国生産量の3割ほどとする報告があり,7年間生産量を10トン強とすれば一般企業も含めた場合の全国の年間生産量の5%未満ということになる.このため,本検討におけるような個人間取引だけではなく企業による生産・販売活動についても着目していく必要があると考えられる.とはいえ観察範囲では重量あたりの価格的には本検討で算出された値と概ね同程度であって,また推奨される用法用量もほとんど変わらないものが記載されており,利用者にとっての利用し易さ自体は個人からの調達でも企業からの調達でもほぼ変わりないと考えられるから,本検討の結果にはなお一定の意義がある.

結論として,個人によるハッショウマメのインターネット出品において,医薬品的な効能効果及び用法用量を挙げるなど法令に抵触する可能性のある出品が少なからず観察され,また副作用に関する注意記載もかならずしも十分ではないことがわかった.もし今後このような状態が続くとともにハッショウマメがより一般に流通するようになった場合には,PD患者及び未受診の潜在的PD患者においてハッショウマメが使用されることが増えてくると考えられる.具体的には,医療者側の知らぬ間に,PD患者においてlevodopa/DCIで0.5–1錠/日程度に相当する量のハッショウマメ由来のlevodopaが処方薬に代替されている,ないし処方薬に上乗せされている,ということは(効果的にも)費用負担的にも現実に起こり得ると想定される.そうすると,摂取量が過剰な場合にはPD患者に対する医療管理上に影響を及ぼし得るし,また臨床研究や治験において正確な服薬状況がかならずしも反映されないことにもなり得る.このため,今後の流通状況によっては,脳神経内科医を始めとする診療チームにとってハッショウマメ服用の可能性について考慮することの必要性が,これまでよりも高まってくるかもしれない.また同時に,ハッショウマメの特性や注意事項などについて広く一般に周知されることが望ましいかもしれない.

謝辞

本研究は,AMEDの課題番号JP22rea522004の支援を受けた.

利益相反

開示すべき利益相反はない.

REFERENCES
 
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