YAKUGAKU ZASSHI
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The Impact of a Picture Book to Improve Medication Compliance in Pediatric Patients: A Questionnaire Survey
Kensuke Yoshida Anna KiyomiSuguru TohyamaKanami TakeTakuma ShojiYonggon LeeKyongsun PakMunetoshi Sugiura
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2024 Volume 144 Issue 11 Pages 1031-1037

Details
Summary

Poor medication compliance in children can affect treatment efficacy. We examined the impact of a picture book created by pharmacists to improve medication compliance in children. Our study aim was to assess the effects of the pharmacist-created picture book on medication compliance in children and their parents in collaboration with an outpatient pharmacy. This study included 74 children [recovery rate 28/74 (37.8%)] aged 3–6 years and their parents between March 2023 and March 2024. In the item “Have you experienced any difficulties in giving medication to your child?” the proportion of respondents answering, “Always” or “Sometimes” decreased from 78.3% (18/23) to 34.7% (8/23) after reading the picture book (p<0.01). When answering the question “What specific situations have you found challenging when giving medication?” the number of responses decreased from (an average/mean) of 1.5 situations before reading the picture book to 1 situation. Regarding whether guardians felt a greater appreciation for the importance of giving medication to their children after reading the book, 64.3% answered “Yes,” the highest response. A positive correlation (correlation coefficient=0.77, p<0.01) was observed between “Is the child interested in taking the medication?” and “Is the child able to take the medicine? Pharmacists need to raise public awareness of the importance of medication adherence. Since picture books are likely to be repeatedly read aloud, they are considered effective. The results of this study suggest that pharmacist-created picture books may contribute to improving medication compliance in children.

緒言

国内における小児の服薬アンケート調査の研究では,66.4%の保護者が3歳以上の小児が薬を飲むことを嫌がった,飲まなかったことが報告されており,対象剤形は粉薬が84.2%と最も多いとされる.1小児の服薬困難な主な理由は,苦味,におい,ざらつきなどの薬剤的性質があげられており,保険調剤薬局における対策として服薬ゼリーやジュースに混ぜるなどの助言や指導が行われている.2,3また,保護者はこれらの服薬困難に対して,薬をアイスやジュース,様々な食品と混ぜることで改善の努力をしている.4しかし,粉薬を溶解することで苦味を生じる薬剤や薬効に影響を与える薬剤があり,5可能な限りそのままの剤形での服用が望まれる.

小児における服薬コンプライアンスの低下は腎移植,喘息,アトピー性皮膚炎,肝移植の領域において報告されており,6,7服薬コンプライアンスが治療効果に影響を与えることが予想される.また,年長児の服薬コンプライアンス低下の要因の一つとして,保護者による途中断薬も指摘されており,8保護者に対しても正しい服薬理解を促すことが重要である.事実,薬剤師がパンフレットを用いた服薬指導を保護者に対して行ったところ,小児のコンプライアンスが39%向上したと報告されており,9小児及び保護者に対しての薬剤師を活用した更なる取り組みが望まれる.しかしながら,薬剤師を主体とした取り組みだけではマンパワー不足の点からも普及が難しく,保護者が主体となって身近な生活の中で取り組むことが大切である.

そのような背景の中,筆者らは小児患者及び保護者に対して薬を正しく服用することを伝えるための絵本を作成した.本研究で使用された絵本「ベンゼンじまのポポロン」の内容は薬剤師が作成しており,主人公のウサギのポポロンが病気になったお母さんを助けるため薬をもらう冒険に出るという内容である.10

本研究は,保険調剤薬局と連携し,小児及び保護者に焦点を当て,薬剤師が作成した絵本による服薬コンプライアンス変化についてのアンケート調査を行い,その効果について検討したので報告する.

方法

1. 研究デザインと対象

アンケート研究として,2023年3月から2024年3月の期間にまいにち薬局古淵店に来局し,薬局スタッフが業務内に対応可能であった3–6歳の小児患者及び保護者を対象とした.アンケート協力者へは,A4又はB5用紙に印刷したカラーの絵本を配布した.絵本の読み聞かせ方法は,絵本の配布時に寝かしつけの際などに行うよう口頭にて伝えたが,実際の読み聞かせ方法は保護者へ一任した.除外基準は,粉薬又はシロップの処方がなく,外用薬,点眼,錠剤,点鼻,貼付剤,坐剤,吸入のみが処方されていた患者,ほかの臨床試験や臨床研究に参加している患者とした.絵本の読み聞かせ前のアンケートは来局時に保護者が直接又は保護者から回答を聞き取った薬剤師が紙面に記載し,読み聞かせ後はQRコードを用いてGoogleフォームによるアンケートで保護者が回答した(Fig. 1).対象者からはすべてアンケートへの回答によって同意を取得したこととした.

Fig. 1. Survey Before and After Reading the Picture Book

Parents were asked to fill out a paper survey before reading the picture book. After reading the book, parents were asked to respond via a QR code on Google Forms.

2. 調査項目

アンケートは背景因子(小児の年齢・性別,保護者の年代,過去の絵本の読み聞かせの有無,処方日数,内服薬の数,剤形)とし,質問内容は,1)お子様にお薬を飲ませることで困ったことはありますか,2)お薬を飲ませることで困ったことは具体的にどのような場合ですか(複数回答可),3)何回絵本を読み聞かせしましたか,4)絵本を読み聞かせた後,お子様の感情の変化はありましたか,5)「はい」と答えた方は具体的にどのような変化ですか(自由記載),6)絵本を読み聞かせた後,お子様は薬を飲むことに興味を持ちましたか,7)絵本を読み聞かせたことで,お子様へ薬を飲ませることの大切さをより実感できるようになりましたか,8)お子様は絵本に興味を持ちましたか,9)絵本についての感想があれば教えてください(自由記載),10)絵本を読み聞かせた後,お子様は薬局や薬剤師の仕事に興味を持ったと思いますか,11)絵本を読み聞かせた後,お子様は薬が飲めるようになりましたかの11項目とした.

3. 統計解析

絵本の読み聞かせ前後に保護者から回答があった患者について,カテゴリー変数データの比較にはマクネマー検定を実施しp値を算出した.主要評価項目は,「お子様にお薬を飲ませることで困ったことはありますか」の項目とし,「毎回」又は「時々」の割合を読み聞かせ前後で比較した.各アンケート項目の相関についてはスピアマンの順位相関係数を実施しp値を算出した.検定の有意水準は0.05とした.統計解析には,JMPバージョン14.2(SAS Institute, Cary)を使用した.

4. 倫理審査

本研究は東京薬科大学の人を対象とする医学・薬学並びに生命科学系研究倫理審査委員会の承認(承認番号2022-030)を得て実施した.

結果

1. 絵本の読み聞かせ前の背景

アンケート回答者数は74名であった.保護者の年代は30代が53.6%と最も多く,すべての保護者が読み聞かせ歴が有と回答した.処方日数は,中央値(四分位)で7日(5–10日),内服薬の種類は3種類が46.5%と最も多く,ついで2種類以上と4種類以上がそれぞれ21.4%,1種類のみは10.7%であった.剤型は散剤が38.0%と最も多く,ついでシロップ剤(36.0%),外用薬(10.0%),点眼(6.0%),錠剤と点鼻(4.0%),貼付剤(2.0%),坐剤と吸入は0%であった.使用されていた薬剤は,粉薬(オロパタジン塩酸塩,モンテルカストナトリウム),シロップ剤(アセトアミノフェン,カルボシステイン,ケトチフェンフマル酸塩,チペピジンヒベンズ酸塩,トラネキサム酸,レボセチリジン塩酸塩),外用薬(白色ワセリン,ヘパリン類似物質,ヒドロコルチゾン酢酸エステル,ベタメタゾン吉草酸エステル・ゲンタマイシン硫酸塩),点眼薬(エピナスチン塩酸塩点眼,オロパタジン塩酸塩点眼),錠剤(オロパタジン塩酸塩),点鼻(モメタゾンフランカルボン酸エステル水和物),貼付剤(ツロブテロール)であった(Table 1).「お子様にお薬を飲ませることで困ったことはありますか」の項目は,「毎回」は26.7%,「時々」は40.0%,「あまりない」は22.7%,「全くない」は10.6%であった.「お子様にお薬を飲ませることで困ったことは具体的にどのような場合ですか」の項目は,「苦くて飲めない」は27.0%,「粉薬が飲めない」は14.4%,「シロップが飲めない」は12.6%,「子供が薬を飲む大切さを理解してくれない」は10.3%,「機嫌が悪くて飲めない」は9.8%,「甘くて飲めない」は7.5%,「ざらつきがあって飲めない」は6.9%,「子供が薬に興味を示さない」は6.3%,「体調が悪くて飲めない」は5.2%であった.

Table 1. Patient Background Before the Picture Book Reading

Sex (male : female)15 : 13
Agea)4.5 (4–5)
Age of parents (%)
20s14.3
30s53.6
40s32.1
History of reading picture books to children (Yes : No)28 : 0
Prescription daysa)7 (5–10)
Types of oral medications (%)
110.7
221.4
346.5
Over 421.4
Dosage form (%)
Tablets4.0
Powder38.0
Syrup36.0
Topicals10.0
Patch2.0
Suppositories0
Ophthalmic6.0
Nasal drip4.0
Inhalation0

a)Data are presented as the median (interquartile range [IQR]), unless otherwise indicated. N=28. Tablets: Olopatadine hydrochloride. Powder: Montelukast sodium, olopatadine hydrochloride. Syrup: Acetaminophen, carbocisteine, ketotifen fumarate, tiotropium bromide, tranexamic acid, levocetirizine hydrochloride. Topicals: Betamethasone valerate and gentamicin sulfate, heparinoid, hydrocortisone acetate, white petrolatum. Patch: Tulobuterol. Ophthalmic: Epinastine hydrochloride, olopatadine hydrochloride. Nasal drip: Mometasone furoate hydrate.

2. 絵本の読み聞かせ後のアンケート結果

読み聞かせ前アンケートの回答者のうち,読み聞かせ後に回答があったのは28名(37.8%)だった.「服用期間中に何回絵本を読み聞かせしたか」の項目は1回が46.4%と最も多かった.「子供の感情の変化はあったか」,「子供は薬を服用することに興味を持ったか」,「子供は薬局や薬剤師の仕事に興味を持ったか」の項目は「どちらともいえない」が46.4%,50.0%,42.8%と最も多かった.保護者に対しては「子供へ薬を服用させることの大切さをより実感できるようになったか」の項目が「はい」と回答したのが64.3%で最も多かった.「子供は薬が飲めるようになったか」の項目は,「どちらともいえない」が32.1%と最も多く,ついで「少しそう思う」が28.6%,「そう思う」が25.0%,「あまりそう思わない」が10.7%,「そう思わない」が3.6%であった(Table 2).「お子様にお薬を飲ませることで困ったことはありますか」の項目は,「毎回」は10.7%,「時々」は17.9%,「あまりない」は39.3%,「全くない」は32.1%であった.

Table 2. Survey Items After Reading the Picture Book

How many times did you read a picture book to the children during the dosing period? (%)
146.4
228.6
More than 3 times25.0
Has there been a change in the child’s emotional state? (%)
Yes28.6
No25.0
Can’t say either way46.4
Is the child interested in taking the medication? (%)
Yes35.7
No14.3
Can’t say either way50.0
Have you had any difficulties giving your child medication? (%)
Always10.7
Sometimes17.9
Rarely39.3
Never32.1
(For parents) Do you feel more aware of the importance of having your child take his/her medication? (%)
Yes64.3
No10.7
Can’t say either way25.0
Is the child interested in picture books? (%)
Yes75.0
No7.1
Can’t say either way17.9
Is the child interested in pharmacy or pharmacist work? (%)
Yes28.6
No28.6
Can’t say either way42.8
Is the child able to take the medicine? (%)
I think so25.0
Slightly agree28.6
Can’t say either way32.1
Not so much10.7
I don’t think so3.6

N=28.

自由記載の項目として「絵本を気に入って,薬を飲む前に自分で読んでから薬を飲みにくるようになりました」,「ポポロンが応援してくれている,と言って苦いお薬も頑張って飲んでいました」,「薬の意味,薬の大切さ,薬剤師さんの役割などに興味が出てきたように思う」,「絵本を読んでから自分以外の家族が薬を飲む事に興味を持ち「飲ませてあげる」と水を準備して,全部飲み切るか確認するまでになった」,「親が飲み切る様子を見て,自分もしっかり飲むようになったのでありがたい.薬局に絵本が置いてあるので待機時間が学びの時間になり,体調不良ながら母子にとって有意義な時間だと感じている.このような取り組みは本当に興味深い」などの回答があった.

3. 絵本の読み聞かせ前後の「お子様にお薬を飲ませることで困ったことはありますか」の項目に対する推移

絵本の読み聞かせ前から「全くない」と回答があった項目を除いた23名を対象に解析を行った.主要評価項目である「毎回」又は「時々」の項目は読み聞かせ前は78.3%(18/23)で,読み聞かせ後は34.7%(8/23)へと推移していた(p<0.01)(Fig. 2).また,「お薬を飲ませることで困ったことは具体的にどのような場合ですか」の重複回答が中央値で1.5項目から1項目へと減少していた.絵本の読み聞かせ前から「全くない」と回答があった項目は,読み聞かせ後においても同様であった.また,絵本の読み聞かせ前後で内服薬の種類に変更はなかった.

Fig. 2. Answers to the Question, “Have You had Any Difficulties Giving Your Child Medication?” Before and After Reading the Picture Book

Those who responded “not at all” before reading the picture book were excluded.

4. アンケートの各項目に対する相関関係

「絵本を読み聞かせた後,お子様は薬を飲むことに興味を持ちましたか」と「絵本を読み聞かせた後,お子様は薬が飲めるようになりましたか」の間には正の相関がみられた[相関係数(ρ)=0.77, p=0.0001].そのほかのアンケート項目においては相関がみられなかった.

考察

服薬コンプライアンスの低下は,治療効果にも影響を与え,薬剤によって期待される効果が得られない可能性もあるため,その対策は重要である.6,7薬剤師は,服薬コンプライアンスが低い小児に対しては,年齢に応じた服薬方法の指導や保護者へ助言を行なっている.例えば,ペースト状に練り,味のわかり難い頬の内側や顎の奥などに塗布,服薬ゼリーに混ぜる,ジュースなどに混ぜる,オブラートに包んで服用するなどである.11しかし,これらの対策は,小児の服薬コンプライアンスに対する意識自体を向上させる訳ではないのが現状である.そのため,小児及び保護者の服薬コンプライアンスに対する意識自体を向上させ得る対策が必要であると考えられる.そこで本研究は,服薬に対する心理的側面に着目し,新しいアプローチとして,薬剤師が作成した絵本による小児及び保護者の服薬コンプライアンスに対する意識変化を検討したため報告する.

小児における服薬コンプライアンスは多面的な問題であり,保護者の薬に対する困難,認識なども服薬コンプライアンスに影響する.12,13そのため,本研究では「お子様にお薬を飲ませることで困ったことはありますか」の項目を主要評価項目とし,薬剤師の作成した絵本の読み聞かせの効果を検討した.その結果,「お子様にお薬を飲ませることで困ったことはありますか」の項目に対する絵本の読み聞かせ前後の推移では「毎回」又は「時々」の項目が78.3%から34.7%へと減少し,「あまりない」又は「全くない」の項目は21.7%から65.3%へと上昇していた.さらに「お薬を飲ませることで困ったことは具体的にどのような場合ですか」の重複回答が1.5項目から1項目へと減少し,保護者に対しては「子供へ薬を服用させることの大切さをより実感できるようになったか」の項目が「はい」と回答したのは64.3%と最も多い回答であった.4–6歳になると薬剤に対する理解度が高まり,服薬方法の自主選択,自己管理をするなど自発的に取り組む傾向であったことが報告されているものの,14本研究において保護者が小児の服薬困難感を訴えていることから,医療従事者からの服薬支援が必要であると考えられる.薬剤師による服薬支援のアプローチは様々されてきているが,24,9,11薬剤師が作成した絵本を通して小児の服薬コンプライアンスを向上させる報告はこれまでにない.絵本による読み聞かせによって,小児及び保護者の薬に対する意識が上昇し,自発的に薬を飲む大切さを理解したため,「お子様にお薬を飲ませることで困ったことはありますか」の項目が改善していたと考えられた.

一方で,「子供の感情の変化はあったか」,「子供は薬を服用することに興味を持ったか」,「子供は薬局や薬剤師の仕事に興味を持ったか」,「子供は薬が飲めるようになったか」の項目は「どちらともいえない」が最も多かった.この結果は,かならずしもすべての小児に対して絵本の影響がある訳ではなく,アンケートを回答した時期,読み聞かせの回数,小児の機嫌,保護者の生活背景などの状態も慎重に考慮しなければいけないと推察された.しかし,自由記載の項目に着目すると,小児が自発的に行動変容を起こしていた記載も複数あった.さらに「子供は薬が飲めるようになったか」の項目は,「少しそう思う」と「そう思う」の合計が53.6%と半数を超えていたことから,絵本の読み聞かせ前後で,小児自身の服薬改善に行動レベルでの影響が生じたことを裏付けている.自由記載の項目中には,絵本を気に入る,ポポロンが応援してくれている,薬の意味,薬の大切さ,薬剤師の役割などに興味が出てきたなどの記載があった.また,「絵本を読み聞かせた後,お子様は薬を飲むことに興味を持ちましたか」と「絵本を読み聞かせた後,お子様は薬が飲めるようになりましたか」の項目間には正の相関がみられた(ρ=0.77, p=0.0001).以上のことから絵本が小児のコンプライアンスの向上に影響を及ぼした理由は,絵本中に登場する魅力ある動物達を好きになり,心理的側面から薬を身近に感じた,好きになった,あるいは薬を飲むことに興味を持ったことでコンプライアンスの向上につながったものと考えられた.行動継続を維持させるためには,その行動を好きになることが大切であり,スポーツにおいては前向きな感情が行動継続を維持させると報告されていたことから,15本研究も絵本を読み聞かせすることによって小児に前向きな感情が起こり,服薬の継続が可能となっていた可能性がある.しかしながら,小児の性格は多種多様であり,多感な時期でもある.そのため,保護者との家庭環境や発熱などによる身体的要因といった複数の要因が小児のコンプライアンスへと影響していたことが予想されるがその詳細は不明であり,より詳細に絵本の影響を明らかにするためには前向き研究での検討が必要である.

本研究の限界として,以下の6点が挙げられる.第一にアンケートの回収率が低く,症例数も少なかったことから絵本の効果について正確な結果を反映していない可能性がある点である.今後は回収率及び症例数を増やし,更なる検討が必要である.しかしながら,症例数が23名と少ないにもかかわらず「お子様にお薬を飲ませることで困ったことはありますか」の項目で統計的に絵本によるコンプライアンス向上効果がみられた点は特筆すべき点である.第二にアンケートが一店舗の薬局のみで実施されており,地域によるバイアスが否定できない点である.地域差を減らすために今後はより多くの地域での実施が望まれる.第三に読み聞かせ後の残薬を確認しておらず,正確なコンプライアンスの把握ができなかった点である.第四に読み聞かせ後にアンケート回答をした対象者は,意識が高い親であり,絵本の読み聞かせや服薬に対する対応を丁寧に行なっていた可能性が考えられた.第五にアンケート項目は筆者らが作成しており,調査者バイアスへの影響は否定できない.最後に,薬剤交付時の服薬指導による影響も考えられるが本研究では検討を行っていない.薬剤師が服薬指導を行うことでコンプライアンスが向上する可能性があるため,9絵本のみのコンプライアンスに対する効果を検討するためには,服薬指導自体の影響も考慮した検討が必要である.

以上のことから,われわれの作成した絵本は,症例数が少ないながらも心理的側面から服薬コンプライアンス向上に寄与する新規アプローチ方法である可能性が示された.薬剤師は薬の専門家の視点から,継続的な服薬指導を通して一般の方々へ薬を服用することの大切さを認知させていく必要があり,絵本は繰り返し読み聞かせを行う特徴があることから,効果的であると思われる.本研究の結果から,薬剤師が作成した絵本は,小児の服薬コンプライアンス向上に寄与する可能性があることが示唆された.

謝辞

本研究のアンケート調査へ御協力を頂いた,川口祐以様,まいにち薬局のスタッフ及びアンケート回答に御協力を頂いた保護者の皆様に感謝致します.

利益相反

本研究は株式会社ヤナリのまいにち薬局古淵店にて行われていた.また,本研究で用いた絵本の販売権及び著作権は株式会社ヤナリが保有している.

REFERENCES
 
© 2024 The Pharmaceutical Society of Japan
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