YAKUGAKU ZASSHI
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Symposium Reviews
The Roles of Pharmacists and Pharmacies in Sustainable Medical Care: Current Status and Outlook Three Years After the Issuance of Recommendations by the Science Council of Japan
Masato Yasuhara
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2024 Volume 144 Issue 12 Pages 1083-1089

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Summary

Three years have passed since the Science Council of Japan issued its recommendations entitled “Profession and lifelong learning of pharmacists responsible for sustainable medical care.” These recommendations include active involvement in community medicine, securing patient information necessary for pharmaceutical management, harmonizing undergraduate and post-graduate education, reform of the certification system for specialty-credentialed pharmacists, and development of the pharmacist resident system. This paper provides an overview of recent trends and future prospects for pharmacists and pharmacies in Japan.

1. はじめに

第24期学術会議では,2020年9月に「持続可能な医療を担う薬剤師の職能と生涯研鑽」と題する提言を発出した.1具体的には,地域医療への能動的関与,薬学的管理に必要な患者情報の確保,卒前教育と卒後教育の調和,領域別認定・専門薬剤師制度の改革,薬剤師レジデント制度の整備の5項目を提言した.その後,2021年6月には厚生労働省より「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会 取りまとめ」が公表され,2文部科学省の薬学系人材養成の在り方に関する検討会からは,2022年8月に「6年制課程における薬学部教育の質保証に関するとりまとめ」,3 2023年2月に「薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)」が示された.4また,この3年間は新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019: COVID-19)対策に追われた期間でもあった.本稿では,地域医療への能動的関与を中心に現状を整理するとともに,海外の状況も含めて今後の薬剤師職能の方向性について考察したい.

2. 薬剤師・薬局に係わる制度改革と日本学術会議の活動

近年の医学・薬学の急速な進歩と少子高齢化の進展を背景に,薬剤師・薬局の役割,責務は大きく変化してきた.Table 1には,薬剤師養成を主眼とする薬学教育6年制が導入された2006年以降の薬剤師・薬局に係わる主な制度改革と関連する日本学術会議薬学委員会の活動を年表形式で示した.

Table 1. System Reforms Related to Pharmacists and Pharmacies and Activities of the Pharmaceutical Sciences Committee of the Science Council of Japan

年月薬剤師・薬局に係わる制度改革日本学術会議薬学委員会の活動
2006年4月6年制薬学教育導入
2008年7月報告:医療系薬学の学術と大学院教育のあり方について
2008年8月提言:専門薬剤師の必要性と今後の発展—医療の質の向上を支えるために—
2010年4月医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について(医政局長通知)報告:薬学分野の展望
2010年11月シンポジウム:薬剤師の職能とキャリアパス
2012年4月診療報酬改定:病棟薬剤業務実施加算新設
2012年9月シンポジウム:チーム医療における薬剤師の職能とキャリアパス
2013年5月シンポジウム:リバーストランスレーショナルリサーチ(rTR)
2013年6月日本再興戦略,規制改革実施計画
2013年12月薬学教育モデル・コアカリキュラム(平成25年度改訂版)
2014年1月提言:薬剤師の職能将来像と社会貢献
2014年6月改正薬事法施行(一般用医薬品のインターネット販売,要指導医薬品)
2014年8月シンポジウム:薬剤師の職能将来像と社会貢献
2015年3月規制改革会議公開ディスカッション:医薬分業における規制の見直し
2015年10月患者のための薬局ビジョン
2016年4月診療報酬改定:かかりつけ薬剤師指導料新設
2016年10月シンポジウム:専門・認定薬剤師制度の現状と課題
2017年9月報告:社会に貢献する医療系薬学研究の推進
2018年4月診療報酬改定:地域支援体制加算新設
2018年11月シンポジウム:ビッグデータの創薬と医薬品適正使用への活用に向けた提言
2018年12月薬機法等制度改正に関するとりまとめ
2019年4月調剤業務のあり方について(医薬・生活衛生局総務課長通知)
2019年8月シンポジウム:薬剤師が担う日本の医療と薬学教育
2019年12月薬機法等の一部を改正する法律公布
2020年4月オンライン服薬指導の時限的・特例的取扱い
2020年9月提言:持続可能な医療を担う薬剤師の職能と生涯研鑽
2021年4月シンポジウム:薬のエキスパートが語る”よくわかる新型コロナウイルスワクチン”
2021年6月薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会取りまとめ
2021年7月シンポジウム:新型コロナワクチンを正しく知る
2021年8月地域連携薬局・専門医療機関連携薬局の認定
2021年9月現行制度の下で実施可能な範囲におけるタスク・シフト/シェアの推進について
2021年11月シンポジウム:地域共生社会における薬剤師像を発信する
2022年2月シンポジウム:新型コロナウイルス感染症の予防と治療Up-to-Dateそして変異株への対応
2022年4月診療報酬改定:薬局・薬剤師業務の評価体系の見直し,リフィル処方箋
2022年7月薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループとりまとめ
2022年8月6年制課程における薬学部教育の質保証に関するとりまとめ
2023年1月電子処方箋導入シンポジウム:薬剤師のプロフェッショナリズムを考える
2023年2月薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)
2023年3月医療計画作成指針(薬剤師の確保)
2023年6月薬剤師確保計画ガイドライン,規制改革実施計画
2023年9月シンポジウム:薬剤師に期待する地域医療への能動的関与

2000年の頃から,医療安全の問題が大きくクローズアップされ,疲弊した医師が臨床現場から立ち去ってしまうことなどが問題となった.これに対し,2010年には「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」と題する医政局長通知が出され,現行法制下で実施可能な薬剤師業務として,プロトコールに基づく薬物治療管理などが例示された.2012年の診療報酬改定では,病棟薬剤業務実施加算が新設され,薬剤師の病棟業務に弾みがつくこととなった.この時期は,薬学教育の4年制から6年制への移行期で,新卒者が出ず,薬剤師の確保に難渋する施設も特に多かった.2013年には政府の基本方針となる日本再興戦略が出され,一般用医薬品のネット販売が規制改革の一丁目一番地に位置づけられ,翌年には要指導医薬品などを新設した改正薬事法が施行されることとなった.2015年には,規制改革会議の公開ディスカッションで,医薬分業が本当に患者の役に立っているのかが議論された.これを受けて,同年10月には厚生労働省から「患者のための薬局ビジョン」が出され,モノから人へ,かかりつけ薬剤師・薬局を中心とする薬局のあり方が提示された.その後の診療報酬改定では,2016年にかかりつけ薬剤師指導料,2018年には地域支援体制加算が新設されることとなった.

2018年には,医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)の見直しをはかる厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会から,薬機法等制度改正に関するとりまとめが出され,調剤後の継続的なフォローを義務づけた薬剤師法の改正や,薬局機能を表す地域連携薬局や専門医療機関連携薬局の名称独占を定めた薬機法の改正に反映された.翌年4月に発出された医薬・生活衛生局総務課長通知では,調剤において,薬剤師でなければできないこと,非薬剤師でもできることの範囲が明示され,調剤業務における非薬剤師の活用を促すこととなった.また,新型コロナウイルス感染症パンデミックの中で,2020年にはオンライン服薬指導の特例的扱いが可能となった.

さらに,2021年には厚労省の薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会からとりまとめが発出され,将来的には薬剤師が過剰になる需給推計が示されるとともに薬剤師の地域偏在,業態偏在が喫緊の課題と指摘されるなど,薬剤師の養成から薬剤師の業務・資質向上まで広範な問題が提起された.2ついで翌年には,文部科学省の薬学系人材養成の在り方に関する検討会から「6年制課程における薬学部教育の質保証に関するとりまとめ」が発出され,6年制課程の薬学にかかる学部・学科の新設や入学定員の抑制方針,薬剤師の地域偏在解消に向けた地域枠の設定,教学マネジメントの確立,内部質保証への取組などの課題と方向性が示された.3

この間,日本学術会議薬学委員会では,薬剤師や薬学の研究・教育のあり方について検討を重ね,Table 1に示すような提言・報告の発出や関連するシンポジウムの開催を行ってきた.2020年9月に発出された提言「持続可能な医療を担う薬剤師の職能と生涯研鑽」は,2014年1月の提言「薬剤師の職能将来像と社会貢献」の内容を継承するものであり,5 2016年10月開催のシンポジウム「専門・認定薬剤師制度の現状と課題」や2019年8月開催のシンポジウム「薬剤師が担う日本の医療と薬学教育」における議論等を踏まえて作成された.2020年10月に発足した第25期学術会議薬学委員会に設置された地域共生社会における薬剤師職能分科会では,前期の提言を具現化すべく,薬学以外の多領域の専門家を交えて3回のシンポジウムを開催した.

3. 提言への対応状況

提言で掲げた,地域医療への能動的関与,薬学的管理に必要な患者情報の確保,卒前教育と卒後教育の調和,領域別認定・専門薬剤師制度の改革,薬剤師レジデント制度の整備の5項目について,その後の対応状況を以下に紹介する.

3-1. 地域医療への能動的関与

地域包括ケアシステムの構築が進む中で,薬剤師・薬局は多職種と連携しつつ,積極的に役割分担を果たしていかなければならない.処方箋を持参した患者のみならず,地域住民の健康サポート役を担うことが求められている.薬局から地域に出て多職種と協働することにより,薬剤師の活動が広く社会から認知され,患者のため地域のために役立つ薬剤師職能の発揮につながると考えられる.そのためには,薬局内での業務の効率化や業務分担の見直しも必要であろうことを提言した.

2018年の薬機法等制度改正に関するとりまとめに基づき制定された2019年の医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律により,患者自身が自分に適した薬局を選択できるよう,機能別の薬局の知事認定制度(名称独占)が導入され,2021年8月から地域連携薬局と専門医療機関連携薬局の認定制度が施行された.地域連携薬局は,医療や介護の関係施設と連携しながら患者さんを支える薬局で,外来の受診から医療機関への入院,退院後に自宅や介護施設等で在宅医療を受ける際の訪問対応など,地域の病院,診療所,介護施設等と協力し,安心して切れ目のない薬物治療を提供する体制を備えている.2024年2月末現在で地域連携薬局の認定数は4232件であった.専門医療機関連携薬局は,がん等の専門的な薬学管理に他医療提供施設と連携して対応できる薬局であり,2024年2月末で認定数は186件であった.なお,2016年10月に開始された健康サポート薬局の届出は,2023年9月末現在で3123件であった.

一方,薬局内での業務の効率化や業務分担の見直しについては,2019年4月の医薬・生活衛生局総務課長通知により,調剤において,薬剤師でなければできないこと,非薬剤師でもできることの範囲が明示され,調剤業務における非薬剤師の活用を促すこととなった.経済財政運営と改革の基本方針2023では,医療専門職のタスク・シフト/シェア,薬局薬剤師の対人業務の充実,対物業務の効率化,地域における他職種の連携の推進等が挙げられている.2023年3月には厚生労働科学研究費による研究班から調剤業務における調製業務の一部外部委託における医療安全確保と適正実施のためガイドライン(暫定版)が示され,6 2023年12月には,厚生労働省により薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会が設置されている.

2021年6月の薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会とりまとめでは,将来的に薬剤師が過剰になると予想される一方で,薬剤師の従事先には業態の偏在や地域偏在があることが指摘された.これに対し,第8次医療計画に向けての医療計画作成指針では,薬剤師の資質向上の観点に加え,薬剤師確保の観点から,病院薬剤師及び薬局薬剤師それぞれの役割を明確にし,薬剤師の就労状況の把握及び地域の実情に応じた薬剤師の確保策を講じること,地域医療介護総合確保基金(修学資金貸与,病院への薬剤師派遣)の積極的な活用,都道府県の薬務主管課と医療政策主管課が連携して取り組むこと等が必要であること,取組の検討及び実施に当たっては,都道府県,都道府県薬剤師会・病院薬剤師会,関係団体等が連携すること等が記された.7

さらに,2023年6月には,厚生労働省から薬剤師確保計画ガイドラインが公表され,薬剤師の偏在指数を指標とした薬剤師確保の方針が示された.現在,各地域において薬剤師確保に向けた取組が検討されており,例えば石川県では2024年度から石川県地域連携薬剤師共育プログラムと石川県薬剤師修学資金返済支援事業が開始されている.

文部科学省の6年制課程における薬学部教育の質保証に関するとりまとめでは,将来的な入学定員の抑制方針とともに,薬剤師の地域偏在に対する地域枠の活用等が提言された.既にいくつかの大学において,入学者選抜に地域枠が設定されている.また,文部科学省は2023年度から地域の医療ニーズに対応した先進的な薬学教育に係わる取組支援事業の公募を開始しており,地域医療の充実に向けた医療現場と教育の協働効果が期待される.

3-2. 薬学的管理に必要な患者情報の確保

薬剤師の調剤業務において,患者や医薬品に関する十分な情報なしには適正な薬学的管理は成り立たない.調剤に必要な患者情報が処方箋を発行する医療機関から確実に提供されるようなシステムの構築が必須である.提言では,医療機関と薬局が連携して,個人情報保護に配慮しつつ,病名,検査値,アレルギー歴等の患者情報を患者とともに共有するシステムの構築を求めた.

経済財政運営と改革の基本方針2023では,デジタルトランスフォーメーション(digital transformation: DX)の推進が提唱され,医療DXの推進に向けた取組として,マイナンバーカードによるオンライン資格確認の用途拡大,レセプト・特定健診情報等に加え,介護保険,母子保健,予防接種,電子処方箋,電子カルテ等の医療介護全般にわたる情報を共有・交換できる「全国医療情報プラットフォーム」の創設及び電子カルテ情報の標準化,個人健康情報管理(personal health record: PHR)として本人が検査結果等を確認し,自らの健康づくりに活用できる仕組みの整備などが挙げられている.2023年1月には電子処方箋が導入されたが,運用開始後1年で導入率は約6%であり,厚生労働省の電子処方箋等検討ワーキンググループにおいて機能の拡大や運用ルールについての検討が重ねられている.

3-3. 専門薬剤師制度の改革

専門薬剤師制度が国民から理解されるよう,名称の整理や認定基準の整合性を図るとともに,制度の質保証の仕組みを見直して更に検討すべきであることを提言した.

2020年度から3年間にわたり厚生労働科学研究費補助金による研究班が組織され,「国民のニーズに応える薬剤師の専門性のあり方に関する調査研究」が実施された.研究班では,資格を有する薬剤師の名称と定義を認定薬剤師(ジェネラル),領域別認定薬剤師,専門薬剤師の3段階に整理し,専門薬剤師の認定要件を示すとともに,第三者機関による質保証と薬剤師の専門領域の決定を提言した.8

3-4. 薬剤師レジデント制度の整備

今後の卒前教育の方向性を考慮しつつ,わが国における薬剤師レジデント制度の推進に向けてあり方の検討が必要であることを提言した.

2019年度から3年間にわたり厚生労働科学研究費補助金による「薬剤師の卒後研修カリキュラムの調査研究」が実施された.さらに,2021年度からは厚生労働省の委託事業として「卒後臨床研修の効果的な実施のための調査検討事業」が3年間にわたって実施された.これらの検討を経て,2024年3月に薬剤師臨床研修ガイドラインが発出され,研修期間は原則として1年間以上とし,調剤業務は3ヵ月程度,病棟業務は6ヵ月間程度を必修とし,かならず在宅訪問業務を含むこととする研修プログラムが例示されている.9

3-5. 卒前教育と卒後教育の調和

卒業後の多様な薬剤師のキャリアパスを支援して,社会のニーズに応える薬剤師を養成していくためには,卒前・卒後の教育に係わる関係者が目的意識を共有し,調和のとれた教育カリキュラムを提供していく必要があることを提言した.

2021年6月の薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会とりまとめにおいても,臨床実践能力の担保のためには,薬学教育での実習・学習に加えて,免許取得直後の臨床での研修が重要であり,卒前(実務実習)・卒後で一貫した検討が必要であり,研修制度の実現に向けて,卒前の実務実習との関係性を含め,研修プログラムや実施体制等について検討すべきであると指摘された.2023年2月に公表された薬学教育モデル・コア・カリキュラムでは,薬剤師として求められる基本的な資質・能力として,プロフェッショナリズムから社会における医療の役割の理解まで10項目が挙げられ,これらの資質・能力は生涯にわたって研鑽していくことが求められるとされた.4

4. COVID-19と薬剤師

2019年12月に中華人民共和国で初めて検出されたCOVID-19は,2020年に入って世界中に感染拡大し,わが国では2023年5月に2類感染症相当から季節性インフルエンザと同等の5類感染症に引き下げられるまで3年余りの期間に,社会制度や医療の在り方に大きな影響を及ぼした.公衆衛生や感染対策の重要性への社会の認識が改まり,ワクチンや治療薬開発の必要性が再認識されることとなった.発熱外来を受診した患者に対する処方箋調剤,消毒薬やover the counter(OTC)薬の供給,誤った情報が氾濫する中での適切な情報提供など,コロナ禍における地域の薬局の機能の重要性が評価された.2020年4月からのオンライン服薬指導の時限的・特例的取扱いは,その後の恒常的なオンライン服薬指導へと継承されることとなった.一方,ワクチンの打ち手論争は,わが国における薬剤師職能や薬剤師教育の課題を示唆することとなった.

米国では,2020年12月から2023年1月までの期間に薬剤師によるCOVID-19ワクチン接種が3億回以上行われ,これは米国内の全ワクチン接種の半分以上を占めた.米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)では,米国民の大部分が薬局から5マイル以内に居住しており国民にとってアクセスし易いことを重視して,薬局を政府のCOVID-19ワクチン接種戦略のキー部分に位置づけたと説明している.

カナダのブリティッシュコロンビア州では,胃腸障害,頭痛,尿路感染症,痔,アレルギー性鼻炎,結膜炎,ニキビなどの軽い病気や避妊について,2023年6月から薬剤師が処方できることとなった.また,英国では2026年から,一定の要件を満たして登録した薬剤師に自動的に処方権が与えられるとのことである.これらは,コロナ禍を契機に,それぞれの地域特性や医療環境に応じた長年にわたる薬剤師の取組の積み重ねの成果と考えられるが,薬剤師職能の新たな展開の可能性を示唆するものである.

5. おわりに

コロナ禍を経て社会が求めるのは,全国遍く質の高い薬物治療の提供と国民の健康増進に寄与する薬剤師であろう.持続可能な医療を担う薬剤師は,薬剤師免許取得後の生涯研鑽によって培われる.薬局,医療機関,大学,学会,職能団体,行政・自治体が連携して,卒後の初期研修としての薬剤師レジデント制度,その後の認定・専門薬剤師制度や大学院博士課程などの諸制度を個々の薬剤師の必要に応じて提供することで,社会の期待に応える薬剤師の養成が実現するものと考える(Fig. 1).

Fig. 1. Pharmacist Career Path Diagram

(Color figure can be accessed in the online version.)

謝辞

提言の作成に御尽力賜った第24期日本学術会議薬学委員会薬剤師職能とキャリアパス分科会委員の皆様に深謝する.さらに,3回にわたる公開シンポジウムの開催等により,提言の具現化に尽力された第25期日本学術会議薬学委員会地域共生社会における薬剤師職能分科会委員の皆様に御礼申し上げる.

利益相反

開示すべき利益相反はない.

Notes

本総説は,日本薬学会・日本医療薬学会・日本学術会議共同主催シンポジウム「薬剤師に期待する地域医療への能動的関与」で発表した内容を中心に記述したものである.

REFERENCES
 
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