2024 Volume 144 Issue 3 Pages 291-297
Recently, radiotheranostics, which systematically combines diagnosis by nuclear medicine imaging and treatment by internal radiotherapy, constitutes a new modality in cancer treatment, with some clinical reports showing marked effects on cancer. We have been developing multifunctional chelates containing a target recognition unit, a radiation release unit, and a radioactivity pharmacokinetics control unit in the same molecule to develop efficient agents for cancer radiotheranostics based on chemical control of radioactivity pharmacokinetics. Using these compounds, we have achieved improved cancer accumulation and reduced renal accumulation in tumor-bearing mice, and have developed novel hybrid radiotheranostic agents that can be applied to simultaneously perform target-specific molecular imaging using γ-ray emitting radionuclides and internal radiotherapy using α-particle-emitting radionuclides. For example, 111In/225Ac-labeled PSMA-DA1, which targets prostate-specific membrane antigen (PSMA) for radiotheranostics, achieved clear in vivo imaging of PSMA in tumor-bearing mice and showed marked tumor growth inhibition. In addition to PSMA, this platform for radiotheranostics has also shown efficacy against various cancer target molecules, including carbonic anhydrase IX (CA-IX), which is highly expressed in hypoxic regions of cancer, and glucagon-like peptide-1 receptor (GLP-1R), which is highly expressed in insulinomas. This review presents these recent results of our studies on radiotheranostics for cancer.
近年,診断(diagnostics)と治療(therapeutics)を系統的に融合させた,セラノスティクス(theranostics)という医療概念が注目されている.セラノスティクスは,患者の病態を正確に診断し,適切な治療を選択することを一連の医療行為とみなす考え方であり,がん医療にとっては非常に重要な概念と考えられる.なかでも,ラジオセラノスティクス(radiotheranostics)と呼ばれる,放射線を利用した核医学イメージング(positron emission tomography: PET/single photon emission computed tomography: SPECT)による診断と内用放射線療法による治療を系統的に実施可能な手法として,がん診療の新規モダリティーになりつつある.1,2)ラジオセラノスティクスでは,まず生体透過性の高いγ線を放出する放射性同位元素(radioisotope: RI)を導入した分子プローブによって,がんの病態を正確に診断,把握し適切な治療法を選択する.その後,放射線治療が有効であるがんに対しては,同一の生体内動態を示すプローブに,細胞殺傷性の高いα線あるいはβ線を放出するRIを導入した化合物によって,がんの内用放射線治療を行うという流れでがんの診断と治療を同時に行う.3,4)
実際,2016年に報告された前立腺がん患者を対象とした前立腺特異的膜抗原(prostate-specific membrane antigen: PSMA)を標的分子とするラジオセラノスティクスに関する論文において,225Ac標識薬剤[[225Ac]Ac-PSMA-617]による劇的ながん縮小効果が認められ大きな注目を浴びた.5)最近では,前立腺がんを対象とするラジオセラノスティクス薬剤として,プルビクト[[177Lu]Lu-PSMA-617]が米食品医薬品局及び欧州医薬品庁に認可されている.6)
このようにラジオセラノスティクスの成功例が報告されている一方で,解決しなければならない課題も存在する.前述の前立腺がんを対象とした薬剤を含め,低分子化合物をRIのキャリア分子に用いる場合,それを生体に応用すると,多くの場合に腎臓などの正常組織への顕著な非特異的集積が確認され,その分,腫瘍への集積が低減する.これによって,PET/SPECTにおける診断精度の低下,RI内用療法における高い腎毒性が問題となる.したがって,放射性薬剤のがん集積性の向上と腎集積性の低減がラジオセラノスティクスの成功には非常に重要になると考えられる.
そこで,この問題を解決するために,筆者らはアルブミンバインダー(albumin binder: ALB)7)の応用を計画した.RIのキャリアとなる低分子化合物にALBを導入し,この化合物を生体内に投与すると,血液中でアルブミンとALBが可逆的に結合する.その結果,ALB含有プローブは腎臓で糸球体濾過を受けることが少なくなるため,腎臓への放射能集積が低減し,更に血中半減期が延長することによって,がんへの放射能集積の向上が期待できる.
これまでにラジオセラノスティクスに用いられてきた従来型ラジオセラノスティクス薬剤は,標的分子と結合する標的リガンドを含む「標的認識ユニット」,及び放射性金属錯体を含む「放射線放出ユニット」の2つのユニットから形成される,2官能性キレート型の化合物が主に用いられてきた.一方で,筆者らは腎集積の低減及びがん集積性の向上を目的として,放射性薬剤の体内動態を制御するために,同一分子中に「標的認識ユニット」と「放射線放出ユニット」に加えて,「体内動態制御ユニット」としてALBを導入することを考えた.そこで,これら3つのユニットを直線上に配置した直鎖型3官能性キレート化合物を基盤とする「ハイブリッド型ラジオセラノスティクス薬剤」の開発を行うことを計画した.
本稿では,このハイブリッド型ラジオセラノスティクス薬剤の概念を元に開発したプローブについて,「標的認識ユニット」として,PSMAリガンド,炭酸脱水酵素IX(carbonic anhydride-IX: CA-IX)リガンド,グルカゴン様ペプチド-1受容体(glucagon like peptide-1 receptor: GLP-1R)リガンドを導入した研究成果を紹介する.
PSMAは前立腺がんの細胞膜に特異的に発現し,その発現量ががんの悪性度に相関することから,PSMAを標的とした放射性薬剤の開発研究が活発に行われてきた.8,9)特に,α線放出核種225Acにより標識されたPSMA-617[[225Ac]Ac-PSMA-617]は,177Luによるβ線治療に対して抵抗性を示した前立腺がん患者においても顕著な治療効果が認められ,PSMAを標的としたα線内用治療が大きな注目を集めている.5)しかし,[225Ac]Ac-PSMA-617は高度な腎臓への非特異的な放射能集積が認められることに加え,225Acの半減期が10日間であるのに対し,[225Ac]Ac-PSMA-617のクリアランスが早いため,放射能の腫瘍滞留性が低いことが報告されている.10)したがって,プローブの腫瘍滞留性を向上させることで,225Acによる治療効果をより高めることができると考えられる,そこで本研究では,腫瘍滞留性と腎集積低減を目的とした新規PSMA標的ラジオセラノスティクス薬剤の開発を計画した.11)
本検討に用いたプローブ設計をFig. 1(a)に示す.金属配位子には,1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,7-(diacetic acid)-4,10-diglutaric acid(DOTADG)を選択した.DOTADGは1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetraacetic acid(DOTA)の4つのカルボキシ基を維持しつつ両側に2つの機能性ユニットを導入できることから,様々な金属を配位させることが可能となる.12,13) DOTADGの両側にPSMAリガンド及びALBとして4-(p-iodophenyl)butyric acidを導入したPSMA-DA1を設計した.本プローブ設計では,既報の分岐型プローブ14,15)と異なり,PSMAリガンドとALBの間にキレート部位を直鎖型に配置することにより,両端のユニットがそれぞれ独立して各標的分子及びアルブミンに結合できると考えられる.また,コントロール化合物として,ALBの代わりにアニリンを導入したPSMA-DBも合わせて設計した.これらの化合物の111In標識体を用いてPSMAプローブとしての基礎的性質を評価し,モデルマウスのSPECTイメージングを行い,225Ac標識体を用いてモデルマウスの治療実験を行った.
(a) Chemical structures of [111In]In-PSMA-DA1 and [111In]In-PSMA-DB. (b) Binding of [111In]In-PSMA-DA1 to LNCap and PC-3 cells with or without 2-PMPA. Data are expressed as the mean±standard deviation of six independent experiments (* p<0.05). (c) Radioactivity of the extracted LNCaP tumors, blood, and kidneys after the intravenous injection of [111In]In-PSMA-DA1 or [111In]In-PSMA-DB into LNCaP tumor-bearing mice (n=3) and the ratios of the radioactivity in the LNCaP tumors to that seen in the blood or kidneys. This figure was modified in part with permission from Iikuni S. et al., J. Med. Chem., 64, 13429–13438 (2021). Copyright 2021 American Chemical Society. (Color figure can be accessed in the online version.)
作製した[111In]In-PSMA-DA1について,PSMA発現細胞に対する結合実験を行った[Fig. 1(b)].[111In]In-PSMA-DA1はPSMA高発現細胞であるLNCaP細胞に高く結合した一方,PSMA低発現細胞であるPC-3細胞にはほとんど結合しなかった.また,LNCaP細胞への結合はPSMA阻害剤である2-PMPAの添加により有意に低減し,プローブのPSMA特異的結合性が示された.
次に,PSMA高発現LNCaP腫瘍を用いた体内放射能分布実験を行った[Fig. 1(c)].青色の線はALB導入体である[111In]In-PSMA-DA1,橙色の線はALBを含まない[111In]In-PSMA-DBの結果を示す.ALBの導入により,腫瘍集積が顕著に向上し,腫瘍滞留性が認められた.血中滞留性も向上し,PSMAプローブが主に集積する腎臓にも高い集積が認められた.さらにALBの導入により,腫瘍血液比及び腎臓比の経時的な上昇が示された,よって所期の通り,ALBの導入により腫瘍滞留性の向上及び腎集積性の低減に成功した.
次にLNCaP腫瘍移植マウスを用いたSPECT撮像を行った[Fig. 2(a)].ALB導入体である[111In]In-PSMA-DA1を投与したマウスにおいて腫瘍が明瞭に描出され,投与48時間後には腎集積を上回る腫瘍集積が確認された.一方,ALBを含まない[111In]In-PSMA-DBでは腫瘍集積がほとんど認められなかった.よって,[111In]In-PSMA-DA1によりPSMA高発現腫瘍のインビボイメージングを達成した.
(a) Coronal SPECT/CT images of LNCaP tumor-bearing mice obtained at 24 and 48 h post injection using [111In]In-PSMA-DA1 or [111In]In-PSMA-DB. White arrows and circles indicate LNCaP and kidneys, respectively. (b) Curves of tumor growth for mice that were administered with [225Ac]Ac-PSMA-DA1 (20 kBq), [225Ac]Ac-PSMA-DB (20 kBq), or vehicle. Data are expressed as the mean±standard deviation ([225Ac]Ac-PSMA-DA1: n=6; [225Ac]Ac-PSMA-DB: n=5; vehicle: n=4). This figure was modified in part with permission from Iikuni S. et al., J. Med. Chem., 64, 13429–13438 (2021). Copyright 2021 American Chemical Society. (Color figure can be accessed in the online version.)
次に,[225Ac]Ac-PSMA-DA1(20 kBq), [225Ac]Ac-PSMA-DB(20 kBq)及びvehicleをLNCaP腫瘍モデルマウスに投与し,その後の腫瘍成長を観察した[Fig. 2(b)].Vehicle投与群では経時的な腫瘍成長が認められた一方,ALBを含まない[225Ac]Ac-PSMA-DBの投与により,その腫瘍成長の抑制効果が認められた.しかし,その効果は限定的であり,ALBを含まない[225Ac]Ac-PSMA-DBを投与しても腫瘍は成長し続ける結果となった.一方,ALBを導入した[225Ac]Ac-PSMA-DA1を投与したところ,顕著な腫瘍成長の抑制効果が認められ,投与後のマウスの腫瘍成長は確認されなかった.別途,マウスの体重を確認した結果,投与直後にマウスの体重の一時的な減少が認められたが,その後体重は回復しvehicle群を上回った.これらの結果より,[225Ac]Ac-PSMA-DA1を用いたα線内用放射線治療により,顕著な副作用を示すことなく,がんを治療することに成功した.さらに,投与放射能量について,既報プローブである[225Ac]Ac-RPS-074の148 kBq10)と比較して顕著に低い20 kBqで治療効果が確認できたことから,[225Ac]Ac-PSMA-DA1が高効率なPSMA標的がん治療に有用であることが示された.
がんの低酸素領域は,化学療法や放射線治療に対する抵抗性があり,がん細胞の増殖,転移の促進にも関係している.16)また,腫瘍の増殖や放射線治療に伴って,劇的にその絶対的局在を変えることも知られており,17)低酸素腫瘍の診断・治療には,ラジオセラノスティクスの概念が有効であると考えられる.18)この標的分子として,低酸素がん細胞の膜表面に特異的に発現することが知られている,CA-IXを選択し,CA-IXを標的としたがんのラジオセラノスティクス薬剤の開発を計画した.19,20)
Figure 3(a)にプローブの設計について示す.CA-IXに対して高い親和性を有するimidazothiadiazole sulfonamide(IS)誘導体をCA-IXリガンド,広く汎用されている金属配位子であるDOTAを結合させたDO3A-IS1を設計・合成し,更に腫瘍集積向上と腎集積低減の戦略として,前述したPSMA標的薬剤と同様にALBに着目し,DO3A-IS1に3種類の異なるALB基を導入した新規CA-IX標的ラジオセラノスティクス薬剤としてIS-DO2A-ALB1, IS-DO2A-ALB2, IS-DO2A-ALB3を設計・合成した.治療用核種である90Yや225Acを用いた標識体の開発に先立ち,DOTA-IS1, IS-DO2A-ALB1, IS-DO2A-ALB2, IS-DO2A-ALB3の111In標識体を作製し,がんセラノスティクス用薬剤としての基礎的評価を行った.
(a) Chemical structures of IS-[111In]In-DO2A-ALB1-3 and [111In]In-DO3A-IS1. (b) In vivo biodistribution study of [111In]In-DO3A-IS1, IS-[111In]In-DO2A-ALB1, IS-[111In]In-DO2A-ALB2, and IS-[111In]In-DO2A-ALB3 using HT-29 tumor-bearing mice. Values are expressed as % injected dose/g of organ tissue. Each value represents the mean±standard deviation for five mice. (c) Coronal SPECT/CT images of HT-29 tumor-bearing mice obtained at 24 h postinjection using [111In]In-DO3A-IS1 or IS-[111In]In-DO2A-ALB1. Yellow arrows and white circles indicate HT-29 tumors and kidneys, respectively. This figure was modified in part with permission from Iikuni S. et al., Mol. Pharm., 18, 966–975 (2021). Copyright 2021 American Chemical Society. (Color figure can be accessed in the online version.)
まずCA-IX高発現細胞であるHT-29と低発現細胞であるMDA-MB-231を用いて細胞結合実験を行った.各細胞に[111In]In-DO3A-IS1を加えてインキュベートし,細胞に結合した放射能を測定した.その結果,[111In]In-DO3A-IS1は,MDA-MB-231細胞と比較してHT-29細胞に有意に高い結合性を示した.またHT-29細胞への結合は,CA阻害剤であるアセタゾラミドの添加により有意に低減した.この結果から,[111In]In-DO3A-IS1はCA-IX高発現細胞に選択的に結合していることが示唆された.
次に,CA-IX高発現であるHT-29腫瘍を移植したモデルマウスを用いて,[111In]In-DO3A-IS1, IS-[111In]In-DO2A-ALB1, IS-[111In]In-DO2A-ALB2, IS-[111In]In-DO2A-ALB3の体内放射能分布実験を行った[Fig. 3(b)].[111In]In-DO3A-IS1はHT-29腫瘍へ経時的に集積した一方で,血液から速やかにクリアランスされ,腎臓に高く集積し保持される傾向が認められた.また,IS-[111In]In-DO2A-ALB1, IS-[111In]In-DO2A-ALB2, IS-[111In]In-DO2A-ALB3はいずれも,[111In]In-DO3A-IS1に比べ血液中の放射能濃度が増加し,腫瘍の放射能集積が向上した.腎臓への集積については,ALB基を導入した3種類の111In標識体IS-[111In]In-DO2A-ALB1, IS-[111In]In-DO2A-ALB2, IS-[111In]In-DO2A-ALB3はいずれも,[111In]In-DO3A-IS1に比べ,腎臓への放射能集積が低減した.特に,IS-[111In]In-DO2A-ALB1が腎臓への集積を最も低減させた.また腫瘍/腎臓集積比については,IS-[111In]In-DO2A-ALB1において,1.0を超えるタイムポイントが複数確認された.したがって,IS-[111In]In-DO2A-ALB1は評価化合物の中で良好な体内動態を示すことが明らかとなった.
次に,最も良好な体内動態を示したIS-[111In]In-DO2A-ALB1を用いてSPECT/CT撮像実験を行った[Fig. 3(c)].黄色矢印が腫瘍,白色円が腎臓を示す.IS-[111In]In-DO2A-ALB1は,[111In]In-DO2A-IS1と比較して腫瘍をより明瞭に描出し,一方で腎臓への集積は低減した.この結果より,診断用核種である111Inの代わりに,治療用核種である90Yや225Acを導入したIS-DO2A-ALB1が,腎臓への放射線被ばくが少ない治療用放射性薬剤としても有用である可能性が示された.
インスリノーマは神経内分泌腫瘍の一種であり,GLP-1Rが高発現であることが報告されている.21)グルカゴン類似ペプチドであるExendin-4は,GLP-1RアゴニストとしてGLP-1Rに対する高い親和性を有している.そのため,現在までにExendin-4を基盤としたインスリノーマ標的核医学イメージングプローブの開発が活発に行われてきた.22)しかし,既存のプローブは腎臓での顕著に高い放射能集積を示すことが報告されている.23,24)これは腎臓に近接したインスリノーマの検出における障害になり,腎臓に対する過剰な線量負荷をもたらす可能性があるため,Exendin-4を基盤としたプローブは腎臓への顕著に高い放射能集積が課題点として考えられている.そこで,前述したPSMA, CA-IX標的ラジオセラノスティクス薬剤の開発と同様に,Exendin-4にALBを導入したプローブ設計を行うことを計画した.25)
Figure 4(a)にプローブ設計を示す.GLP-1RのリガンドであるExendin-4に,配位子として様々な金属核種と錯形成が可能なDOTAを,そしてDOTAにALBとして4-(p-iodophenyl)butyric acidを導入し放射性金属には,臨床で広く利用されており半減期が長く扱い易い111Inを導入した,[111In]In-E4DA1を設計した.また,ALB導入による体内動態への寄与を評価するため,コントロールとしてALBを含まない[111In]In-E4Dを併せて設計し,[111In]In-E4DA1のGLP-1Rイメージングプローブとしての有用性評価を行った.
(a) Chemical structures of [111In]In-E4DA1 and [111In]In-E4D. (b) Coronal SPECT/CT images of INS-1 tumor-bearing mice obtained at 4 h postinjection using [111In]In-E4DA1 or IS-[111In]In-E4D. Red and yellow circles indicate INS-1 tumors and kidneys, respectively. This figure was modified in part with permission from Iikuni S. et al., Mol. Pharm., 19, 1019–1027 (2022). Copyright 2022 American Chemical Society. (Color figure can be accessed in the online version.)
GLP-1Rを高発現しているINS-1細胞を用いたインビトロでの細胞結合実験を行い,[111In]In-E4DA1のGLP1-Rへの特異的結合性を確認後,腫瘍移植マウスを用いたインビボ実験を行った.Figure 4(b)にSPECT/CTの結果を示す.黄色の枠が腎臓,赤色の枠が腫瘍を表しているが,コントロール化合物であるALBを含まない[111In]In-E4Dでは腎臓に高い放射能集積が認められ,腫瘍を明瞭に描出できなかった.一方で,ALBを含む[111In]In-E4DA1では,腎臓での放射能シグナルはほとんど観察されず,腫瘍に高い放射能集積が認められ,腫瘍の明瞭な描出に成功した.
本稿では,筆者らが独自に開発した3官能性キレート化合物を基盤としたハイブリッド型ラジオセラノスティクス薬剤の開発に関して,PSMA, CA-IX, GLP-1Rを標的分子とする最近の研究成果を紹介した.本薬剤設計は,原理的に「標的認識ユニット」「放射線放出ユニット」「体内動態制御ユニット」をあらゆるがんの標的分子に応用可能である.今後,次世代ラジオセラノスティクス薬剤開発を加速する新たなプラットフォーム技術として展開していきたい.
本研究は京都大学大学院薬学研究科病態機能分析学分野にて実施されたものであり,研究の遂行にご協力頂いた病態機能分析学分野のメンバーに衷心より感謝の意を表します.また,225Acを用いた治療実験は日本メジフィジックス株式会社との共同研究にて実施されたものであり,この場を借りて感謝申し上げます.本研究の一部は日本医療研究開発機構(AMED)産学連携医療イノベーション創出プログラム・セットアップスキーム(ACT-MS)の助成を受けて実施したものであり,ここに深謝いたします.
本研究の一部は日本メジフィジックス株式会社から研究費及び研究資材を受けて実施したものである.
本総説は,日本薬学会第143年会シンポジウムS23で発表した内容を中心に記述したものである.