YAKUGAKU ZASSHI
Online ISSN : 1347-5231
Print ISSN : 0031-6903
ISSN-L : 0031-6903
ノート
徳洲会グループ病院の救急外来における薬剤師業務に関する看護師アンケート調査
立石 裕樹 齋藤 靖弘宮田 祐一坂口 結斗山本 浩二郎武田 瑛司岩崎 睦宮崎 雄二前川 大輔吉川 眞維樹竹内 陽亮矢野 洋平後藤 貴央渡邊 裕之
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2024 年 144 巻 5 号 p. 577-584

詳細
Summary

We conducted a multicenter survey of emergency room nurses to obtain information that would be useful for the establishment of pharmacist services in emergency rooms. Notably, 199 valid responses were obtained from 12 hospitals. The most common expectation from pharmacists in the emergency room was “drug management” (70.9%), followed by “providing information to physicians regarding the patient’s medication history” (59.3%), and “auditing of dosage and interaction” (57.3%). The working arrangements that the survey respondents wanted regarding pharmacists in emergency rooms were: 24 h pharmacist (41.7% wanted this arrangement), day-shift pharmacist (24.6% wanted this arrangement), 24 h on-call (17.1% wanted this arrangement), day-shift on-call (5.0% wanted this arrangement), telephone support (11.1% wanted this arrangement), and 0.5% said that there was no need for pharmacists. In the analysis of factors affecting nurse satisfaction, day-shift pharmacist was a significant factor. We hope that the results of this survey will be used as a guide for the development of emergency room pharmacist services tailored to the unique characteristics and actual working conditions of each hospital.

緒言

救急外来では,独歩受診(walk in)患者だけでなく救急搬送患者を受け入れ,多科にわたる疾患に対する治療が行われる.重症度が高い患者に対しては複数の医薬品が緊急的に使用され,その選択や投与量に関して迅速な判断が求められる場合がある.また,副作用や中毒などの医薬品が原因となる疾患もあるため,入院前使用医薬品の正確かつ迅速な把握が必要となる.このように,救急外来における医薬品関連の情報収集及び他職種への情報提供は重要な意味を持ち,薬剤師が積極的に介入する必要性は高いと考えられる.しかし,病院薬剤師の人手不足や診療報酬上の評価が現状ないことから,同部署への薬剤師の専従配置は進んでいない.1一方,先行的に救急外来に対して薬剤師を専従配置している施設もあり,救急外来における薬剤師による持参薬鑑別の有用性,2救急外来からの入院患者に対する薬剤師の早期介入効果3などの初療段階から薬剤師が介入する有益性が示されている.さらに,2011年には日本臨床救急医学会から救急・集中治療領域に従事する薬剤師の認定制度である救急認定薬剤師が誕生し,2023年3月にはその上位資格の救急専門薬剤師が誕生した.このように,救急外来における薬剤師参画の基盤は整いつつあり,更なる有用性報告や専門性の向上が期待される.

海外では,2008年にAmerican Society of Health-System Pharmacists(ASHP)が救急外来における薬剤師業務に関する声明を発表し,4 2011年には同ガイドラインを公表した.5一方で,わが国の救急外来における薬剤師業務指針は関連学会から策定されておらず,救急外来で行う薬剤師業務は各施設で手探りの状況である.また,救急外来における薬剤師業務に関する医師を対象とした調査報告1はあるが,医師以外の職種を対象とした調査報告はない.多職種が勤務する救急外来において薬剤師業務を展開していくにあたり,医師以外の職種からも様々な意見を取り入れる必要があると考えられる.そこで本研究では,医療法人徳洲会グループ(当グループ)病院の救急外来担当看護師を対象とし,救急外来において薬剤師に求める業務内容と勤務体制,看護師満足度に影響する要因を調査することにより,救急外来における薬剤師業務の展開に有益な情報を得ることを目的とした.

方法

1. 調査方法

徳洲会救急薬剤師研究会に属する薬剤師会員に対して調査協力を依頼することで,当グループ内において協力施設を募集した.調査協力要請に応じた施設に所属する救急外来担当看護師を対象とし,紙面による無記名アンケート調査を実施した.調査期間は2023年1月18日–2023年3月17日の任意の2週間とし,回答者のプライバシーには十分に配慮した.なお,本アンケートの妥当性は,福岡徳洲会病院の救急外来以外の担当看護師に対して予備調査を行うことで検証した.

2. 調査項目

施設背景は,2022年の年間救急搬入台数,救急外来の担当看護師数,施設病床数,薬剤師数,救急外来における薬剤師の勤務体制,救急外来における救急認定薬剤師の勤務とし,各施設の調査担当薬剤師に回答を求めた.勤務体制は,専従(勤務時間の8割以上を担当),専任(勤務時間の5割以上を担当),兼任(他病棟を含めた担当),オンコール(電話呼び出し時のみ現場で対応),電話対応のみの5択とした.救急外来担当看護師に対するアンケートの記載項目をFig. 1に示す.回答者背景は,救急外来への従事年数,性別,役職の有無とした.薬剤師に関連する質問項目は,薬剤師への業務上の相談頻度(電話相談を含む),薬剤師に期待する救急外来における業務,薬剤師に期待する救急外来における勤務体制,現状の救急外来に対する薬剤師業務への満足度とした.薬剤師に期待する業務は加藤らの報告6を参考とし,薬品管理,救急搬送前の薬剤の準備,薬剤ミキシング,静脈路確保の補助,使用薬の確認・照合,心肺蘇生(cardiopulmonary resuscitation: CPR)時のタイムキーパー,初療での服用薬確認,薬物治療提案,投薬歴に関して医師への情報提供,救急搬送の原因が薬剤性である可能性の提言,用法用量・相互作用の監査,麻薬・向精神薬・筋弛緩薬の管理,麻酔薬管理,注射ルート管理,中毒の機器分析,聴診器等を使用したフィジカルアセスメント,プロトコール作成の17項目とした.また,薬剤師に期待する業務と勤務体制に関しては,現状の勤務体制と業務内容による選択バイアスを回避するために「現状の薬剤師業務を加味せずに回答して下さい」と質問文に記載した.

Fig. 1. Questionnaire Items

3. 統計解析

現状の救急外来における薬剤師業務に対する看護師満足度に影響する要因を検討するため,満足群(満足,やや満足)と非満足群(不満,やや不満,どちらともいえない)の2群に分け,救急外来の担当看護師と担当薬剤師の背景因子を比較した.単変量解析でp<0.20となった因子及び既報で関連性が指摘されている因子を説明変数とし,多変量ロジスティック回帰分析を実施した.また,因子間の多重共線性の確認として,分散拡大要因(variance inflation factor: VIF)が5を超える場合は対象因子を削除して対応した.統計解析にはソフトウェアEZR(version 1.61)7を使用し,有意水準はp<0.05とした.

4. 倫理的配慮

本研究は人を対象とする医学系研究に関する倫理指針には該当しないため,福岡徳洲会病院の研究倫理委員会から付議不要と判断された.

結果

1. 施設・回答者背景

当グループ病院の13施設から調査の協力が得られた.可能な限り施設条件を揃えるため,3次救急医療機関に該当する1施設を除外し,2次救急医療機関に該当する12施設を解析対象とした.協力施設の救急外来における救急搬入台数の中央値は5160台であり,救急外来担当看護師数の中央値は18名であった.救急外来における薬剤師の勤務体制は,専従が2施設(16.7%),オンコールが4施設(33.3%),電話対応のみが6施設(50.0%)であった(Table 1).各施設の救急外来担当看護師228名から199件の有効回答が得られた(回収率87.3%).救急外来の従事年数は1–3年が76名(38.2%),4–6年が48名(24.1%),7–9年が29名(14.6%),10年目以上が46名(23.1%)であり,男性が38名(19.1%),役職ありが29名(14.6%)であった.電話相談を含む薬剤師への相談頻度は週1–3回が137名(68.8%)で最も多かった(Table 2).

Table 1. Characteristics of Cooperating Hospitals

n
Number of hospitals12
Number of emergency transportations by ambulance per year, median [range]5160 [737–11533]
Number of nurses in the emergency room, median [range]18 [10–31]
Number of beds, median [range]341 [210–602]
Number of pharmacists, median [range]27 [5–47]
Pharmacist shifts in the emergency room, n (%)
Day-shift pharmacist2 (16.7)
Day-shift concurrent0
Day-shift on-call4 (33.3)
Telephone support6 (50.0)
JSEM-certified pharmacist working in the emergency room, n (%)1 (8.3)

JSEM: Japanese Society for Emergency Medicine.

Table 2. Characteristics of Nurses

n
Number of valid responses199
Male sex, n (%)38 (19.1)
Holding a position at the department, n (%)29 (14.6)
Years of emergency room experience, n (%)
1–3 years76 (38.2)
4–6 years48 (24.1)
7–9 years29 (14.6)
≥10 years46 (23.1)
Frequency of consultations with a pharmacist, n (%)
Not consulting50 (25.1)
1–3 times per week137 (68.8)
4–6 times per week11 (5.5)
≥7 times per week1 (0.5)

2. 薬剤師に期待する救急外来における業務

全選択肢の回答割合をFig. 2に示す.回答割合が高い業務は,「薬品管理」が114名(70.9%),「投薬歴に関して医師への情報提供」が118名(59.3%),「用法用量・相互作用の監査」が114名(57.3%)と続いた.一方,「聴診器等を使用したフィジカルアセスメント」は2名(1.0%),「静脈路確保の補助」は4名(2.0%),「注射ルート管理」は14名(7.0%)と低値であった.

Fig. 2. Expectations of Pharmacists Among Nurses in Emergency Room Services

Figures in [ ] represent the minimum–maximum value for each responding hospital. CPR: cardiopulmonary resuscitation.

3. 薬剤師に期待する勤務体制と現状の救急外来における薬剤師業務に対する看護師満足度

薬剤師に期待する救急外来における勤務体制は,24時間常駐が83名(41.7%),日勤帯常駐が49名(24.6%),24時間オンコールが34名(17.1%),日勤帯オンコールが10名(5.0%),電話対応が22名(11.1%),不要が1名(0.5%)であった(Fig. 3).また,現状の救急外来における薬剤師業務に対する回答者全体の看護師満足度は,満足43名(21.6%),やや満足48名(24.1%),どちらともいえない83名(41.7%),やや不満13名(6.5%),不満12名(6.0%)であり,勤務形態別では薬剤師の専従施設において看護師満足度が高い傾向が認められた(Fig. 4).

Fig. 3. Expectations of Pharmacist Shift Among Nurses in the Emergency Room
Fig. 4. Satisfaction with Pharmacist Services Among Nurses in the Emergency Room Based on Pharmacist Shift Type

4. 看護師満足度に影響する要因分析

過去に関連性が指摘されている薬剤師の専従,8単変量解析においてp<0.20となったオンコールと救急認定薬剤師の勤務の3因子を説明変数とした多変量ロジスティック回帰分析により,薬剤師の専従(オッズ比8.77,95%信頼区間3.03–25.40,p<0.01)が有意な因子として特定された(Table 3).VIFはすべて5未満であり,多重共線性は認められなかった.

Table 3. Multivariate Logistic Regression Analysis for Identification of Factors Affecting Nurse Satisfaction

Univariate analysisMultivariate analysis
Satisfied group (n=91)Non-satisfied group (n=108)p-ValueVIFOdds ratio (OR)95% confidence interval (CI)p-Value
Male sex, n (%)16 (17.6)22 (20.4)0.72
Holding a position at the department, n (%)12 (13.2)17 (15.7)0.70
Years of emergency room experience, n (%)
1–3 years38 (41.8)38 (35.2)0.38
4–6 years20 (22.0)28 (25.9)0.62
≥7 years33 (36.3)42 (38.9)0.77
Frequency of consultations with a pharmacist, n (%)
≥1 times per week71 (78.0)78 (72.2)0.41
Pharmacist shifts in the emergency room, n (%)
Day-shift pharmacist38 (41.8)9 (8.3)<0.01a)1.778.773.03–25.40<0.01
Day-shift on-call24 (26.4)46 (42.6)0.018a)1.150.950.49–1.860.89
JSEM-certified pharmacist working in the emergency room, n (%)14 (15.4)4 (3.7)<0.01a1.620.730.17–3.170.67

a)Fisher’s exact test: p<0.20. VIF: variance inflation factor, JSEM: Japanese Society for Emergency Medicine.

考察

2022年度に行われた日本病院薬剤師会のアンケート調査によると,救急外来に常駐して薬剤師業務を行っている施設は約15%であると報告されている.1それゆえ,救急外来における薬剤師の活動報告はまだ少なく,薬剤師にとっては発展途上の領域と考えられる.本調査は,救急外来において看護師が薬剤師に期待している業務及び勤務体制を明らかとした貴重な報告であり,今後の救急外来における薬剤師業務の発展に寄与すると考えられた.

救急外来において薬剤師に期待する業務として,「薬品管理」や「麻薬・向精神薬・筋弛緩薬の管理」,「使用薬の確認・照合」などの医薬品管理関連の業務は,他業務と比較すると高い割合を示した.病棟における医薬品管理は,病棟薬剤師が高い割合で関与していることが以前から報告されている.9本調査の全回答施設においても病棟薬剤師業務を実施しており,配置薬だけでなく麻薬や毒薬などの管理に関与している.そのため,救急外来における医薬品管理への関与も期待されていると推察した.また,救急外来では多様な疾患に対する薬物治療が行われるため,多数の配置薬があると考えられる.医薬品毎に室温や冷暗所などの適切な温度管理が求められ,気管挿管時などに使用される麻薬及び毒薬は,各種法律で規定された保管管理が必要となる.さらに,血栓溶解剤などの高価な医薬品も使用されるため,過去の使用実績や緊急性を考慮したうえで,配置薬の選定及び適切な在庫数設定に薬剤師が関与する必要性は高いと考える.

「初療での服用薬確認」や「投薬歴に関して医師への情報提供」,「原因が薬剤性である可能性の提言」も相対的に高い割合を示した.救命救急センター及び急性期一般病棟において,持参薬に関する薬剤師業務への看護師評価が高いと報告されている.10,11同様に,初療段階である救急外来においても,投薬歴の情報収集とその情報提供を同様に期待している結果と考えられる.救急搬入患者は入院前の使用医薬品などの情報が不十分な場合があり,診療情報提供書に記載された薬歴と実際の入院前使用医薬品に相違がある事例も多い.12お薬手帳や診療情報提供書の持参がある場合は,入院前使用医薬品の情報はどの職種でも収集可能であるが,救急外来に薬剤師を配置することで入院前使用医薬品に関する正確な情報提供が可能となったと報告13があるように,多領域の医薬品に関する薬効や用法用量を把握している薬剤師が介入する必要性は高いと考える.また,救急外来受診患者の3.3–3.5%が薬剤起因性疾患であったと報告されており,1416薬剤師が早期に介入することで原因推定に寄与できる可能性がある.

一方で,直接的に医薬品に関係しない「静脈路確保の補助」と「聴診器等を使用したフィジカルアセスメント」は非常に低値であった.救急搬入後の患者に対して,静脈路の確保や問診,触診などのフィジカルアセスメント,各種検査などが同時進行で実施される.その中で,入院前使用医薬品の確認や輸液等の必要薬剤の準備,ミキシングなどの直接的に医薬品に関与する業務への専念を強く期待されている結果であろう.また,一般病棟や集中治療室においても薬剤師が静脈路確保の補助及び聴診器等を使用したフィジカルアセスメントを行った有用性報告はなく,薬剤師の一般的な業務ではない.法的に静脈路の確保を薬剤師は行えず,看護師単独で行われている手技であることも鑑みると,回答率が非常に低値になったと推察される.さらに,「使用薬の確認・照合」や「CPR時のタイムキーパー」,「用法用量・相互作用の監査」などは施設間で大きな差が認められた.人的資源や救急搬入台数,患者の重症度などは施設間で異なるため,救急外来における薬剤師業務は一律である必要はないと考える.救急外来薬剤師業務に関するASHPのガイドラインが2021年に更新され,17 2023年にはスペインの救急外来薬剤師業務のポジションペーパーが公表され,18医薬品管理や薬物治療への参画,教育などの救急外来担当薬剤師が目標とすべき業務内容が提案されている.わが国において救急外来の薬剤師業務を展開するにあたり,各施設の特性や実情に応じてこれらも取り入れていくべきであろう.

薬剤師に期待する勤務体制では,24時間常駐が最も高い割合を示し,日勤帯常駐と合わせると約7割の救急外来担当看護師が薬剤師の長時間介入を期待していることが明らかとなった.救急外来担当看護師は,複数の救急搬入患者やwalk in患者の対応を同時に行い,更には,患者ケアや点滴ルート管理,入院病棟との連絡などの多様な業務を担っているため,多忙を極めると予想される.その中で,薬剤師が救急外来に常駐して医薬品関連業務を担当することに対する期待の表れであろう.また,病院看護・外来看護実態調査では,救急外来に常駐する看護師数は日勤帯より夜勤帯の方が少ないと報告されている.19今回,勤務時間帯別の看護師数は調査できていないが,同様に夜間人員が不足する施設が多いため,24時間常駐を支持する意見が多かった可能性が高いと考える.さらに,医師を対象とした調査においても常駐勤務が最も期待されており,救急外来における多くの薬剤師業務が医療の質的向上及び業務負担軽減に有用であると報告されている.1実際に,救命救急センターに薬剤師を24時間常駐させた結果,夜勤帯にも中毒情報などの様々な医薬品に関する情報提供が行われ,夜勤帯における薬剤師勤務の有用性が明らかとされている.20一方で,薬物中毒の定性及び定量評価,心肺停止患者の蘇生,急性期脳梗塞に対する血栓溶解療法などはオンコールで対応可能な業務である.まずは,オンコールで対応可能な業務から介入し,所属薬剤師数に余裕がある施設は専従あるいは専任勤務として様々な業務に関与することが望ましいと考える.救急外来において担当薬剤師の勤務帯で有意に医薬品関連インシデント件数が減少した報告21があり,薬剤師が医療安全的に貢献できる可能性もある.救急外来薬剤師による有益性データが蓄積されることで,診療報酬上の評価対象となることが切望される.

現状の救急外来における薬剤師業務への看護師満足度は,薬剤師の専従施設において高い満足度を示した.さらに,看護師満足度に影響する要因分析では,薬剤師の専従勤務のみが影響する因子であった.オンコール対応施設の救急外来における薬剤師業務は,薬物中毒や心肺停止,急性期脳梗塞などの決められた患者群のみに介入していると推察される.一方,専従勤務している施設では,入院前使用医薬品に関する情報提供や医薬品管理をはじめとした看護師に期待される業務を一通り遂行できており,更には他職種とのコミュニケーションを密に図ることで信頼関係を構築していると考えられる.薬剤師の専従化によって救急外来の看護師満足度が改善した報告8もあり,専従勤務は看護師満足度に大きく影響する因子であると考える.米国救急医学会では,救急外来における効率的かつ安全で効果的な医薬品使用を確保するうえで薬剤師が重要な役割を果たしていると認識している(https://www.acep.org/patient-care/policy-statements/clinical-pharmacist-services-in-the-emergency-department, 2023年7月6日).わが国の救急外来においても薬剤師の業務展開が進むことで,多職種チームの一員として受容されることに期待したい.本来であれば,介入内容別の満足度調査が望まれるが,今回は薬剤師の勤務形態などの施設背景を因子とした解析にとどまった.単施設の救命救急センターの看護師を対象とした薬剤師業務の満足度調査では,「配合変化の確認」や「薬剤投与方法などに関する相談応需」,「必要薬剤の迅速な調達」などの項目が高い満足度を示している.10今後,救急外来に薬剤師が関与する施設が増加した後に,介入業務内容別の満足度調査を行うべきであろう.

本研究の限界として,まず,救急外来担当看護師の定義が施設間で異なる可能性がある.施設によっては一般外来及び他病棟との兼務者も少なからず存在すると考えられる.また,選択バイアスを回避するために現状の勤務体制と業務内容を考慮せずに回答することを質問文に記載したが,結果に影響を与えた可能性は否定できない.さらに,本調査は無記名の紙面アンケートであるが,同施設の薬剤師が看護師への回答依頼を担当したため,感情バイアスが生じた可能性も考えられる.しかし,全国12病院の救急外来を対象とし,回収率87.3%のアンケートになったことを鑑みると,意義深い調査になったと考える.

本研究は,救急外来における薬剤師業務を確立させるための有益な報告となった.今後,救急外来における薬剤師の業務指針がわが国の関連学会や職能団体から発出され,各施設の特性や実状に応じた救急外来薬剤師業務が展開されることに期待したい.

謝辞

本アンケート調査に御協力くださいました医療法人徳洲会グループの薬剤師及び看護師の皆様に感謝申し上げます.

利益相反

開示すべき利益相反はない.

REFERENCES
 
© 2024 公益社団法人日本薬学会
feedback
Top