2025 Volume 145 Issue 2 Pages 155-161
Introduction: This study examines current OTC pharmaceuticals in Japan categorized as potential substances for abuse and discusses future initiatives for drug abuse prevention. Methods: The Pharmaceuticals and Medical Devices Agency package inserts search function was used to identify OTC pharmaceuticals containing substances prone to abuse. Subsequently, the corresponding OTC pharmaceuticals containing the designated ingredients were investigated, analyzing their therapeutic and risk categories. Results: In total, 1427 (13.9%) OTC pharmaceuticals contained the designated ingredients, with those containing methylephedrine and dihydrocodeine accounting for the majority (1245/1427, 87.2%). Among the therapeutic categories, oral cold medicines were predominant at 564, followed by antitussives and expectorants at 213, and oral rhinitis medicines at 100. Regarding risk categories, designated schedule II pharmaceuticals predominated in 9 out of 11 therapeutic category classifications. Conclusion: Designated schedule II pharmaceuticals, such as oral cold medicines, antitussives and expectorants, and oral rhinitis medicines, pose a high risk of drug abuse. Addressing this challenge necessitates collaboration between pharmacists and registered sales clerks to implement preventive measures aligned with current trends in drug abuse.
近年の日本では,少子高齢化による国民医療費の増大や生活習慣病の増加に伴う未病対策などからセルフメディケーションが重要視されている.そのため,政府は医療費抑制策としてセルフメディケーションの推進を掲げ,様々なOTC医薬品の使用促進策を進めている.具体的には,2014年度よりすべての一般用医薬品(要指導医薬品を除く)のインターネット販売が解禁になり,2017年度からは医療費控除の特例であるセルフメディケーション税制がスタートし,現在ではほぼすべてのOTC医薬品が容易に入手できる環境になった.
一方で,わが国におけるこれまでの薬物乱用対象薬物は,覚せい剤をはじめ,危険ドラッグ,大麻などの違法薬物が主であったが,近年では違法薬物に限定されず,「使っても違法にならない薬物」にシフトしている.その中心になるのが処方薬や市販薬である.特に,市販薬における最大のメリットは「誰でもどこでも入手できる」ことである.そのため,一般用医薬品による「カフェイン中毒」や「アセトアミノフェン中毒」などで救急搬送されるケースが近年増加しており,1,2)高校生の約60人に1人が過去1年以内に治療目的ではなく乱用目的で市販薬を使用した経験があると回答している3)など,市販薬の乱用は特に若年者層において社会問題となっている.厚生労働省研究班が実施している「全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査」では,原因が市販薬である症例が2012年以降明らかに著しく増加傾向にあると報告されている.4)
厚生労働大臣は,OTC医薬品に使用される成分のうち,一部を「濫用等のおそれのある医薬品」として指定している.具体的には,コデイン(鎮咳去痰薬に限る),ジヒドロコデイン(鎮咳去痰薬に限る),エフェドリン,メチルエフェドリン(鎮咳去痰薬のうち内用液剤に限る),プソイドエフェドリン,ブロモバレリル尿素の6成分である.これらの成分を含むOTC医薬品については,販売に際して,他店舗での購入状況や購入理由の確認,販売時の数量制限など薬局及び店舗に対して自主的な「販売に関する対策」を求めている.5)特に,コデイン,ジヒドロコデイン,メチルエフェドリンの3成分については,令和5年2月8日付け薬生発0208第1号厚生労働省医薬・生活衛生局長通知により,2023年4月1日から薬効分類・剤形における指定範囲の制限が撤廃され,6)今後の動向が注目されている.
そこで今回,薬物乱用のおそれがあるOTC医薬品(要指導医薬品,第1類一般用医薬品,指定第2類一般用医薬品,第2類一般用医薬品,第3類一般用医薬品)に対する薬物乱用防止対策を模索する目的で,現在日本で販売されており「濫用等のおそれのある医薬品」に該当するOTC医薬品の特徴について調査し,得られた結果から薬物乱用防止に対する今後の課題について考察した.
国内で販売されているOTC医薬品の中から「濫用等のおそれのある医薬品」の指定成分を含有するOTC医薬品(以下,指定成分含有OTC)を探索するために,2023年4月4日時点での医薬品医療機器総合機構(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency: PMDA)の添付文書等検索機能『一般用医薬品・要指導医薬品情報検索』(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcSearch/)を用いて指定成分含有OTCを抽出した.
1. 日本で販売されている指定成分含有OTCの抽出「濫用等のおそれのある医薬品」の6成分について『一般用医薬品・要指導医薬品情報検索』の「成分名」の項目に1つずつ指定成分を入力して検索を行い,指定成分含有OTCの抽出を行った.
2. 抽出された個々の指定成分を含有する指定成分含有OTCの特徴についての調査抽出された個々の指定成分を含有する指定成分含有OTCの特徴について『一般用医薬品・要指導医薬品情報検索』の「薬効分類(医薬品の種類)」及び「リスク区分」のツールを使用して,薬効分類(例;かぜ薬(内用),解熱鎮痛薬,制酸薬,など)及びリスク区分(要指導医薬品,第1類一般用医薬品,指定第2類一般用医薬品,第2類一般用医薬品,第3類一般用医薬品)をそれぞれ指定して検索を行い,薬効分類及びリスク区分の観点から抽出される指定成分含有OTCの特徴を調査した.なお,集計にはMicrosoft Excel®2019を用いた.
3. 倫理的配慮本研究は,一般に検索可能なWeb上で公開されている添付文書検索サイトを用いた調査研究であるため「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」には該当せず,倫理委員会による倫理審査を必要としない研究である.
PMDAで検索可能であったOTC医薬品(要指導・第1類・指定第2類・第2類・第3類)全10244品目中,指定成分含有OTCの品目数は,計1427品目(13.9%)であった.これ以降は,この1427品目に絞って検討した.
1. 指定成分含有OTCにおける指定成分毎のリスク区分指定成分含有OTC 1427品目を指定成分毎にリスク区分別に分類した結果をTable 1に示す.メチルエフェドリン含有OTCが最も多く774品目(54.2%)であった.ついで多かった指定成分はジヒドロコデインで471品目(33.0%),プソイドエフェドリンで92品目(6.4%),ブロモバレリル尿素で82品目(5.7%),コデインで5品目(0.4%),エフェドリンで3品目(0.2%)と続いた.また,指定成分含有OTC 1427品目のうち,「濫用等のおそれのある医薬品」の6成分すべてにおいて指定第2類一般用医薬品を占める割合が多く,全体として計1417品目(99.3%)が指定第2類一般用医薬品であった.
Specified ingredient | Number of OTC items containing specified ingredient (%a)) | Number of OTC items containing each specified ingredient by risk classification (%b)) | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
Pharmaceuticals requiring guidance | Schedule I pharmaceuticals | Designated-schedule II pharmaceuticals | Schedule II pharmaceuticals | Schedule III pharmaceuticals | ||
Codeine | 5 (0.4%) | 0 | 1 (20.0%) | 4 (80.0%) | 0 | 0 |
Dihydrocodeine | 471 (33.0%) | 0 | 0 | 471 (100.0%) | 0 | 0 |
Ephedrine | 3 (0.2%) | 0 | 0 | 3 (100.0%) | 0 | 0 |
Methylephedrine | 774 (54.2%) | 0 | 2 (0.3%) | 765 (98.8%) | 7 (0.9%) | 0 |
Pseudoephedrine | 92 (6.4%) | 0 | 0 | 92 (100.0%) | 0 | 0 |
Bromvalerylurea | 82 (5.7%) | 0 | 0 | 82 (100.0%) | 0 | 0 |
Total | 1427 (100%) | 0 | 3 (0.2%) | 1417 (99.3%) | 7 (0.5%) | 0 |
Table presents data compiled under conditions where designated range restrictions were abolished as of April 1, 2023. a)Number of OTC items containing each specified ingredient/total number of OTC items containing specified ingredient. b)Number of OTC items containing each specified ingredient in each class/total number of OTC items containing specified ingredient in each class.
薬生発0208第1号厚生労働省医薬・生活衛生局長通知による3成分の改正に伴う変化についてTable 2に示す.指定範囲の制限撤廃によるOTC医薬品の品目数が3成分ともに増加した.特にメチルエフェドリンは指定3成分の中で最も多く,87品目から774品目(8.90倍)に増加した.ついでジヒドロコデインが170品目から471品目(2.77倍)に増加,コデインが4品目から5品目(1.25倍)に増加した.また,3成分全体としては261品目から1250品目(4.79倍)に増加した.
Specified ingredient | Timing of the designated range restrictions abolished | Number of OTC items containing specified ingredient | Number of OTC items containing each specified ingredient by risk classification (%a)) | ||||
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Pharmaceuticals requiring guidance | Schedule I pharmaceuticals | Designated-schedule II pharmaceuticals | Schedule II pharmaceuticals | Schedule III pharmaceuticals | |||
Codeine | Limited to Antitussive and Expectorants (Before March 31, 2023) | 4 | 0 | 1 (25.0%) | 3 (75.0%) | 0 | 0 |
The designated range restrictions abolished (After April 1, 2023) | 5 | 0 | 1 (20.0%) | 4 (80.0%) | 0 | 0 | |
Dihydrocodeine | Limited to Antitussive and Expectorants (Before March 31, 2023) | 170 | 0 | 0 | 170 (100.0%) | 0 | 0 |
The designated range restrictions abolished (After April 1, 2023) | 471 | 0 | 0 | 471 (100.0%) | 0 | 0 | |
Methylephedrine | Limited to oral liquid of Antitussive and Expectorants (Before March 31, 2023) | 87 | 0 | 0 | 87 (100.0%) | 0 | 0 |
The designated range restrictions abolished (After April 1, 2023) | 774 | 0 | 2 (0.3%) | 765 (98.8%) | 7 (0.9%) | 0 |
a)Number of OTC items containing each specified ingredient in each class/total number of OTC items containing each specified ingredient.
指定成分含有OTC 1427品目について,薬効分類毎の特徴をFig. 1に示す.かぜ薬(内用)が564品目と最も多く,ついで鎮咳去痰薬が213品目,鼻炎用内服薬が100品目,解熱鎮痛薬が76品目,と続いた.また,品目数は少ないものの,外用痔疾用薬,鎮うん薬,抗ヒスタミン薬主薬製剤,殺菌消毒薬(特殊絆創膏を含む)などにも指定成分が含まれていた.
薬効分類別の全OTC医薬品に対する指定成分含有OTCの割合及びそのリスク区分別の割合についてTable 3に示す.指定成分含有OTCの割合では,かぜ薬(内用)が676品目中564品目(83.4%)と最も高く,ついで,鎮咳去痰薬が339品目中213品目(62.8%),鼻炎用内服薬が179品目中100品目(55.9%),解熱鎮痛薬が397品目中76品目(19.1%),と続いた.また,リスク区分別では全薬効11分類中,殺菌消毒薬(特殊絆創膏を含む)と鎮痛・鎮痒・収れん・消炎薬(パップ剤を含む)の2分類を除く9分類において指定第2類一般用医薬品の割合が最も多かった.
Therapeutic Category (Total number of items) | Number of OTC items containing specified ingredient (%a)) | Number of OTC items containing each specified ingredient by risk classification (%b)) | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
Pharmaceuticals requiring guidance | Schedule I pharmaceuticals | Designated-schedule II pharmaceuticals | Schedule II pharmaceuticals | Schedule III pharmaceuticals | ||
Oral cold medicines (676) | 564 (83.4%) | 0 | 0 | 564 (100.0%) | 0 | 0 |
Antitussives and Expectorants (339) | 213 (62.8%) | 0 | 2 (0.9%) | 211 (99.1%) | 0 | 0 |
Oral rhinitis medicines (179) | 100 (55.9%) | 0 | 0 | 100 (100.0%) | 0 | 0 |
Antipyretic analgesics (397) | 76 (19.1%) | 0 | 0 | 76 (100.0%) | 0 | 0 |
Topical antihemorrhoids medicines (118) | 8 (6.8%) | 0 | 0 | 6 (75.0%) | 2 (25.0%) | 0 |
Antidizziness medicines (70) | 3 (4.3%) | 0 | 0 | 3 (100.0%) | 0 | 0 |
Antihistamines (21) | 3 (14.3%) | 0 | 0 | 3 (100.0%) | 0 | 0 |
Bactericidal disinfectants (323) | 3 (0.9%) | 0 | 0 | 0 | 3 (100.0%) | 0 |
Hypnotics and Sedatives (42) | 2 (4.8%) | 0 | 0 | 2 (100.0%) | 0 | 0 |
Analgesics, Astringents, Antiphlogistics etc. (1417) | 2 (0.1%) | 0 | 0 | 0 | 2 (100.0%) | 0 |
Womens’ medicines (63) | 1 (1.6%) | 0 | 0 | 1 (100.0%) | 0 | 0 |
a)Number of OTC items containing specified ingredient in each therapeutic category/total number of OTC items in each therapeutic category. b)Number of OTC items containing each specified ingredient in each class/total number of OTC items containing specified ingredient in each therapeutic category.
今回,OTC医薬品に対する薬物乱用防止対策を探求する目的で,現在日本で販売されており「濫用等のおそれのある医薬品」に該当するOTC医薬品の特徴について調査した.
2023年4月時点でPMDAで検索可能であったOTC医薬品(要指導・第1類・指定第2類・第2類・第3類)全10244品目中,指定成分含有OTCの品目数は計1427品目であり,現在日本で販売されているOTC医薬品の約14%が乱用のおそれがあるOTC医薬品であることが明らかになった.また,指定成分毎でみると,メチルエフェドリンが1427品目中774品目(54.2%),ジヒドロコデインが1427品目中471品目(33.0%)となり,メチルエフェドリンとジヒドロコデインで1245品目(87.2%)を占めており(Table 1),日本で販売されているOTC医薬品において,特にメチルエフェドリンとジヒドロコデインを含有するOTC医薬品の品目数がほかの指定成分を含有するOTC医薬品と比較して極めて多いことが明らかになった.また,この2成分に関しては,厚生労働省医薬・生活衛生局長通知による3成分の改正に伴う指定制限の撤廃により,2023年4月1日から該当する指定成分含有OTCの品目数が4.79倍に増加していることから(Table 2),これまで以上に注意が必要な指定成分であることが明らかになった.
次に,指定成分含有OTC 1427品目の薬効分類別及びリスク区分別に関する特徴についてである.まず,指定成分含有OTCの品目数が多い薬効分類(100品目以上販売されているOTC医薬品)として,かぜ薬(内用),鎮咳去痰薬,鼻炎用内服薬が明らかになった(Fig. 1).特に,指定成分含有OTCでもっと多かったメチルエフェドリンは,多くのかぜ薬(内用)及び鎮咳去痰薬に含有しており,ついで多かったジヒドロコデインについても同様であったため,特にかぜ薬(内用),鎮咳去痰薬を販売する際には薬物乱用のリスクを踏まえたOTC医薬品の販売を心がける必要がある.また,指定成分含有OTCの薬効分類毎のリスク区分別特徴であるが,かぜ薬(内用),鎮咳去痰薬,鼻炎用内服薬における指定成分含有OTCの品目数の割合が50%以上[かぜ薬(内用);83.4%,鎮咳去痰薬;62.8%,鼻炎用内服薬;55.9%]を示し,更にすべてにおいて指定第2類一般用医薬品の割合が非常に高かった(Table 3).厚生労働省が実施した2023年度医薬品販売制度実態把握調査によると,濫用等のおそれのあるOTC医薬品を複数個購入しようとした1256件中,240件(19.1%)において質問等されずに購入できた,405件(32.2%)において複数個の購入が必要な理由を伝えたところ購入できたと報告されており,7)約2割が質問されずにOTC医薬品が購入できており,約3割は薬剤師等の関与があったにもかかわらず複数個購入できている現状が明らかになっている.以上のことから,特に指定第2類一般用医薬品のかぜ薬(内用),鎮咳去痰薬,鼻炎用内服薬については,薬物乱用の危険性が非常に高いOTC医薬品であるいうことを改めて薬剤師が再認識してOTC医薬品の販売に携わることが非常に重要であると考える.
一方,今回の調査研究においては,主に3つの研究限界を念頭に置く必要がある.まず,1つ目はTable 1及び2で示している指定成分含有OTCの品目数である.基本的にOTC医薬品は,医療用医薬品とは異なり,1錠(又は1包)中に複数の有効成分が含まれる配合剤である.例えば,ジヒドロコデインとメチルエフェドリンの両方を含有している鎮咳去痰薬のようなOTC医薬品も存在する.しかし,本調査では「濫用等のおそれのある医薬品」として指定されているコデイン,ジヒドロコデイン,エフェドリン,メチルエフェドリン,プソイドエフェドリン,ブロモバレリル尿素の6成分について成分毎にPMDAの添付文書等検索機能『一般用医薬品・要指導医薬品情報検索』を用いて品目数を調査している.そのため,ジヒドロコデイン・メチルエフェドリンの両方を含有しているOTC医薬品などは各1品目ずつ(合計2品目)として集計していることから,実際の注意すべきOTC医薬品の品目数は今回の結果よりも少ない可能性がある.2つ目は漢方製剤である.今回の調査研究では「濫用等のおそれのある医薬品」に指定されている6成分を含むOTC医薬品で調査を行ったため,生薬については調査できていない.しかし,漢方製剤は2種類以上の生薬を決められた分量で組み合わせて作られた医薬品であり,生薬中に含まれる成分には指定成分を含むものも多数存在する.例えば,麻黄や半夏にはエフェドリンやメチルエフェドリン,プソイドエフェドリンが含有されている.また,OTC医薬品には漢方製剤が2154品目あり,そのすべてが指定第2類以下のOTC医薬品であることから漢方製剤についても詳細な調査が必要である.3つ目は,現段階で「濫用等のおそれのある医薬品」に指定されていない成分を含むOTC医薬品についてである.医薬品医療機器等法(以下,薬機法)に基づいて厚生労働大臣が指定する「習慣性がある医薬品」の成分の一つとして,アリルイソプロピルアセチル尿素がある.8)アリルイソプロピルアセチル尿素はブロモバレリル尿素と同様に催眠鎮静作用を目的として配合されているが,9)その品目数は132品目とブロモバレリル尿素の1.61倍で,132品目中131品目(99.2%)が指定第2類一般用医薬品に該当する.以上のことから,アリルイソプロピルアセチル尿素も今後「濫用等のおそれのある医薬品」に指定される可能性が考えられ,漢方製剤と同様に注意を払う必要があると考える.
今回の調査結果を踏まえて,OTC医薬品の乱用に対する今後の課題について考察した.これまでも国内の多くの薬局やドラッグストアなどでは,一部のOTC医薬品について購入制限や購入者が簡単に手にすることができないように空箱を陳列するなどOTC医薬品による薬物乱用防止対策が講じられてきた.10)しかしながら,廣瀬らはOTC医薬品による過量服用の危険性や流行している薬物中毒などの情報についてOTC医薬品を販売する者が十分に把握していないことがOTC医薬品による乱用の増加の要因の一つになっている可能性があると報告している.1)以上のことから,OTC医薬品の販売に関与する者は,研修会や学会などで薬物乱用についての新しい情報を入手するなど,最新の薬物乱用の動向を踏まえた防止対策を検討して実施していく必要があると考える.今回の調査結果により,乱用のおそれのあるOTC医薬品の特徴として,「かぜ薬(内用)」,「鎮咳去痰薬」,「鼻炎用内服薬」の指定第2類一般用医薬品であることが明らかになった.ここで注目すべき点は「指定第2類一般用医薬品」であるということである.要指導医薬品や第1類一般用医薬品については販売時にかならず薬剤師の介入が必要であるが,指定第2類や第2類,第3類一般用医薬品は薬剤師以外にも登録販売者も販売することが可能である.厚生労働省が実施した2023年度医薬品販売制度実態把握調査によると,第2類一般用医薬品等の販売に関する調査店舗において,購入前に使用方法等の相談を行った調査店舗1520件のうち,相談に対応した者が薬剤師であったのは129件(8.5%)であったのに対して,登録販売者であったのは1293件(85.1%)であったと報告されている.7)このように,指定第2類一般用医薬品のOTC販売においては薬剤師よりもむしろ登録販売者が係わるケースの方が圧倒的に多いことが推察され,今回の調査研究より,薬剤師による販売介入だけでは有効なOTC医薬品の薬物乱用防止につながらない可能性が示唆された.岸本らの調査によると,薬物乱用経験者の約7割が薬剤師や登録販売者などの有資格者による販売可否の判断が乱用目的の大量・頻回購入の抑止につながると報告されている.11)また,空箱の陳列や包装表示による注意喚起も抑止の働きがあることも報告されている.11)そのため,陳列方法の工夫や販売記録の作成,インターネット販売などについて薬剤師と同様にOTC医薬品を販売する資格がある登録販売者と密な連携を取り,協働して最新の薬物乱用の状況を踏まえた薬物乱用防止対策を検討・構築(例えば,薬剤師と登録販売者が合同でOTC医薬品の薬物乱用防止に関する研修会を開催するなど)していくことが今後の課題であると考える.最後に,本調査研究の結果が今後のOTC医薬品の適正使用推進の一助になることを期待する.
開示すべき利益相反はない.