山野研究紀要
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現代に生きるマゲⅤ “お相撲さんのにおい”の歴史 : 梳油すきあぶらものがたり
下家 由起子
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キーワード: 日本髪, 髪油, におい, 結髪, 伝統
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2011 年 19 巻 p. 15-23

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抄録

明治維新の断髪令が強力な政府の意思を持って施行されたなか、男子社会で断髪をまぬがれ、マゲを許されて生き残ったのが大相撲のマゲであった。以来力士たちは実生活の中で、マゲを結い、日本の伝統和風文化を実践してきた。土俵には屋形、四色の房といったしつらえ、神事における所作という演出のもと、マゲに廻しの力士たちが力と技を競い合う相撲競技は、江戸時代の趣を現代に魅力的に伝えている。その力士たちの整髪料である「梳油」には髪を漆黒に輝かせ、髪を整えるという本来の目的のほかに、特有のにおいを発するという大きな特徴がある。上は横綱から下は新弟子に至るまですべての力士が平等に用いる整髪料の香りは、いまでは多くの人に「お相撲さんのにおい」と印象付けられている。本稿は、この梳油の周辺を調査し、主に「におい」という観点から、梳油に関する歴史的、比較文化的な考察を試みたものである。

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© 2011 学校法人山野学苑 山野美容芸術短期大学
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