抄録
多様性ある「ユニバーサルきもの着付け」への取り組みとして、車いす利用者のための「きもの」着付けへの実践研究は、山野美容芸術短期大学の発信から福祉社会の中でも認知されることとなった。しかし、障がい者は車いす利用者だけではない。そこで今回は、視覚障がい者にも無理なく「きもの」着付けが可能であるかを実践研究した。障がい者福祉においても、2003年辺りからさまざまな支援法が施行され、障がい者が自分らしく自立し、主体的な日常生活が営める環境が徐々に整備され、主体的に選択できるしくみとなり、「自己選択」「自己決定」が推進されてきた。地域社会に生活する多様な人々が理解し合い、平等に地域に参加し、同じように自立した生活を送ろうというノーマライゼーションの理念の下、ここでは装い「きもの」から共同を考察する。
人は情報収集の約80%を視覚に頼っているが、とくに盲の人は光が眼に入ってこないため聴覚、触覚、嗅覚などから情報収集をしている。本研究ではここに注目し、主に聴覚と触覚で「きもの」を装う手法を検証した。その結果、「きもの」は、その容(かたち)が一定であるがゆえに、視覚障がいの人も自分で「きもの」を着ることが可能であることがわかったので、ここに報告する。