抄録
長い歴史の中,ヘア・スタイルは服飾と深く関係しながら,それ自体強い主張を持ち激しく変化しつづけ,人間に最も密着したかたちで,その時代を反映してきた。そのヘア・スタイルと服飾の作り出すハーモニーとシルエットは,造形的に同時代の人間の感情や心理に訴えるため,何らかの必要条件をもつことになる。それは,ラインのもつ表情やマッスのもつ量感であったりする。19世紀末から20世紀初頭のヨーロッパにおいて花開いたアール・ヌーヴォー様式は,純粋芸術から応用芸術まで広い分野においてその特徴を見ることができる。ヘア・スタイルや服飾においてもそれらの影響を顕現している。本論では,その影響を与えたであろうと思われる芸術作品などのもつ特徴をヘア・スタイルやファッションのそれと比較し,その共通性について考察を試みた。このことによって,作品のイメージ形成と表現の過程に一つの視点と方法を見つけ出したい。