山口医学
Online ISSN : 1880-4462
Print ISSN : 0513-1731
ISSN-L : 0513-1731
症例報告
肥満患者の足指切断術における超音波ガイド下神経ブロックの1例
福田 志朗吉村 学坂本 誠史鳥海 岳
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 63 巻 3 号 p. 213-218

詳細
抄録
病的肥満患者における非外傷性足指切断術を,超音波ガイド下神経ブロック単独で行い,術中麻酔管理を安全に行うことができた1症例を経験した.患者は75歳女性でBMI 35.6kg/m2の高度肥満であり,糖尿病による末梢神経障害に起因する右足指壊疽のため,患部の切断術が予定された.高度肥満のため,全身麻酔導入の際の気道確保の困難,さらには機能的残気量の低下による麻酔維持中の人工呼吸管理困難に伴う低酸素血症の発生といった合併症の可能性が高いと判断し,手術開始前に神経ブロックを超音波ガイド下に行い,全身麻酔の施行を避けた.神経ブロック手技の選択は,予め右足指の切断部位を支配する神経領域から坐骨神経ブロックを選択し,なおかつ術中における切断部位の拡大,および右下肢でのターニケットによる駆血施行の可能性をそれぞれ想定し,予防的に大腿神経ブロックを併用した.手術中は患者の希望により,プロポフォールによる軽度鎮静を行い,その鎮静度はカプノグラムによる呼吸回数の確認およびベッドサイドでの患者に対する表情などの観察によって判断した.術中のバイタルサインに大きな変化はなく,患者は苦痛を訴えることなく手術は無事終了した.高齢化が今後ますます進んでゆく現状を考慮し,糖尿病による肥満患者のみならず,全身性血管病変による高度心機能低下を呈する患者や抗血栓・抗凝固療法を施行された患者がますます増加することが予想される.このような全身麻酔施行困難症例や脊髄くも膜下麻酔・硬膜外麻酔といった従来の区域麻酔施行が困難な症例に対して,今回のような末梢神経ブロック法単独施行による術中の麻酔管理が今後ますます必要となってゆくと予想される.この神経ブロックの安全かつ有効な施行の手段として,超音波ガイドによるブロック法は極めて有効であると考えられた.
著者関連情報
© 2014 山口大学医学会
前の記事
feedback
Top