抄録
ミクログリアは1919年にその存在が報告されて以来, 様々な実験手技の発展とともにその機能が明らかにされてきた. 近年のミクログリア培養法の確立, ミクログリア特異的抗Iba1抗体の開発はミクログリア研究を大きく進展させ, またIba1トランスジェニックマウスを用いたイメージング研究により, 静止型と思われていた正常脳におけるミクログリアの新たな機能が提示された. 一方, 脳の障害を感知するとミクログリアは炎症関連因子産生, 遊走, 貪食などの機能を発揮するため, 種々の中枢神経系疾患の病態発現に関与することが示唆されるが, さらに最近では自閉症スペクトラム障害などの精神疾患にも関与することが注目されている. 本稿ではこれまでに明らかになってきたミクログリアの機能についてまとめ, 高次脳機能におけるミクログリアの役割を考察したい.