山口医学
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症例報告
鳥肌胃炎に対するHelicobacter pylori除菌治療の6年後に発見された未分化型早期胃癌の1例
安田 真弓岡本 建志永尾 未怜佐々木 翔
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2016 年 64 巻 1 号 p. 47-51

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抄録

症例は34歳,女性.2008年5月,空腹時の嘔気・下腹部痛を主訴に当院を受診した.上部消化管内視鏡検査で胃幽門部に鳥肌胃炎を指摘され,血液検査にて抗Helicobacter pylori IgG抗体が陽性であったため,除菌治療が施行された.除菌1ヵ月後の尿素呼気試験でHelicobacter pylori陰性となり,以降,上部消化管内視鏡検査は受けていなかった.除菌成功6年後の2014年1月に嘔気・嘔吐,下痢を認めたため,上部消化管内視鏡検査が施行された.胃体中部前壁に早期胃癌を認め,生検で未分化型癌が検出されたため,幽門側胃切除術・D2郭清・Billroth I法再建が施行された.病理組織学的には印環細胞癌で深達度SM2,複数の領域リンパ節転移を認めた.背景の胃粘膜に萎縮や炎症細胞浸潤,腸上皮化生は認めず正常の胃底腺粘膜であった. 鳥肌胃炎は若年のHelicobacter pylori感染者に見られ,胃癌のハイリスク群と報告されているが,除菌治療後の経過などは不明な点が多い.鳥肌胃炎を認め除菌治療を行ったが,6年という長期経過後に早期胃癌を発症した1例を経験したため,若干の文献的考察を含めて報告する.

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© 2016 山口大学医学会
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