山口医学
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原著
ブタ冠状動脈において血管平滑筋弛緩作用を有する新規の魚類由来ペプチド
木村 友彦
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2015 年 64 巻 2 号 p. 101-107

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抄録

血管拡張薬は,虚血性心臓病,高血圧症,心不全など多くの心血管病に対して,急性期/慢性期を問わず,頻用されている治療薬である.これらの心血管病では,急性発症や急性増悪する場合も少なくないため,日常から摂取可能な食品や食品成分の中から,血管弛緩を引き起こす成分が発見できれば,これらの心血管病の予防の一助となる可能性が期待される.さらに,同定された食品成分が水溶性であれば,注射薬の開発にも繋がると期待される. そこで,食品や食品成分から幅広くスクリーニングを行い,血管弛緩作用を有する食品成分として,水溶性の魚類由来ペプチド群(FDPFs)を見出した.FDPFsは,食用可能なタンパク質分解酵素を用いて魚類タンパク質から生産されたペプチド群であり,内膜を除去したブタ冠状動脈平滑筋条片を濃度依存性に強力かつ持続的に弛緩させた.さらに,タンデム型質量分析計を用いて,FDPFsの中から,連続性のあるアミノ酸配列を有する4つのペプチド(PG,GPG,VGPG,VGPGG)を同定した.これらのペプチドは生理活性を有するものとして過去に全く報告のない新規ペプチドであった. FDPFsから同定された新規ペプチドのアミノ酸配列に従って合成したペプチドは,実際にブタ冠状動脈平滑筋条片を濃度依存性に弛緩させた.さらに,ペプチド長に応じて血管弛緩作用も増強したため,最長のVGPGGを認識する新規の受容体の関与が示唆された.また,この弛緩は,血管平滑筋の細胞質カルシウムイオン濃度([Ca2+]i)の低下を伴わなかったため,平滑筋収縮のCa2+感受性の低下によるものと考えられた. FDPFsは強力かつ持続的な血管弛緩作用を有していたことから,血管病を予防する有望な食品成分となり得ると期待される.また,同定ペプチドも同様な作用を有しており,また水溶性であることから,注射液などの医薬品への応用が可能となれば,心血管病の急性期治療へ貢献できる可能性を持っていると期待される.

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© 2015 山口大学医学会
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