山口医学
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症例報告
Inotuzumab ozogamicinの投与後にCD22陰性白血病細胞が急増した再発急性リンパ性白血病
酒井 康平富永 貴元中野 考平松村 卓郎田中 慎介高橋 徹
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2021 年 70 巻 4 号 p. 175-180

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抄録

 症例は非血縁者間臍帯血移植後にB細胞性急性リンパ性白血病(B-ALL)を再発した48歳の女性.再発時の白血病細胞の大部分は初発時と同様にCD19+,CD22+であったが,一部はCD22-であった.Blinatumomabが無効で,続いてinotuzumab ozogamicin(InO)が投与されたが,初回投与の5日後に重篤な下血が出現した.患者は白血病細胞の急激な増加を伴ってInO投与から14日後に死亡したが,急増した末梢血白血病細胞はCD22-の表面形質を有していた.病理解剖では全小腸に粘膜出血があり,小腸粘膜や全身臓器へのCD22-白血病細胞の浸潤がみられた.InOは抗CD22ヒト化モノクローナル抗体とcharicheamicinが結合した抗体薬物複合体で,白血病細胞上に発現するCD22に結合して抗腫瘍作用を発揮する新規抗体医薬である.本例では,InO投与によりCD22+白血病細胞は消失したものの,再発時にみられていたCD22-白血病細胞が急激に増加して死亡したものと考えられた.白血病治療においては,経過中に表面形質が変化した白血病細胞クローンが増加する場合がある.抗体医薬の使用にあたっては,治療直前に白血病細胞の表面形質について再検討する必要があると考えられた.

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© 2021 山口大学医学会
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