山口医学
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ミニ・レビュー-小西賞受賞者-
心筋型リアノジン受容体構造安定化による新しい心不全治療
小林 茂樹
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2023 年 72 巻 4 号 p. 155-158

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抄録

 心不全時には,心筋細胞内Ca2+貯蔵庫である筋小胞体(SR)膜上に存在する心筋型リアノジン受容体(RyR2)から拡張期Ca2+漏出が生じ,このことによりSR内Ca2+枯渇や細胞内Ca2+過負荷が生じる.その結果,心筋細胞機能が障害され,収縮・拡張不全やトリガードアクティビティの機序で致死的不整脈が引き起こされる.近年,クライオ電子顕微鏡による単粒子解析により,RyR2の微細構造が解明され,RyR2四量体構造の不安定化が拡張期Ca2+漏出の原因であることが明らかになってきた.カテコラミン誘発性多形性心室頻拍(CPVT)では,RyR2の1アミノ酸変異により,N 末端ドメイン(1-220)と中央ドメイン(2300-2500)間に連関障害(unzipping)が引き起こされる.また,横行大動脈縮窄(TAC)心不全モデルや心筋梗塞(MI)心不全モデルでは,心筋細胞内に活性酸素種(ROS)が生じ,そのROSが,RyR2を酸化することにより,unzippingが生じ,RyR2からカルモジュリン(CaM)の解離と拡張期Ca2+漏出を引き起こす.その結果,左室リモデリングや致死的不整脈が惹起され,TACモデル,MIモデルともに生存率が著明に低下する.しかしながら,ダントロレンは,これらのどのモデルに対してもRyR2のN 末端ドメイン(1-220)と中央ドメイン(2300-2500)で形成されるドメインスウィッチに直接結合し,RyR2四量体の構造を安定化し,拡張期Ca2+漏出を抑制する.最近,Ⅲ群抗不整脈薬抵抗性のヒト心不全に合併した心室頻拍(VT)ストームに対しても,ダントロレン静注は,VTストームの停止や予防に有効であることを報告した.現在,臨床応用のために,慢性心不全に対するダントロレンの予後改善効果を明らかにするためのランダム化二重盲検試験(SHO-IN試験)が進行中である.これらの基礎実験および臨床試験の経験を踏まえて,慢性心不全,VTストームに対するRyR2安定化薬であるダントロレンの使い方や臨床応用の可能性について考察する.

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© 2023 山口大学医学会
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