2024 年 73 巻 1 号 p. 11-21
診療参加型臨床実習における診療録の記載は重要な基本的診療技能であり,現在の臨床実習では担当指導医による個別指導が主体であるが,一定の到達目標に基づく継続的かつ体系的な教育評価は行われていなかった.この学修を支援し到達度の向上を明らかとすることを目的に研究者が考案した診療録のピア・ レビュー教育の3年間の評価をまとめ,教育手法としての有効性を検討した.臨床実習2中に医学教育部門専任教員が診療を行っている第一内科または第一外科に配属された医学生が実症例やシナリオ課題に基づき作成した診療録に対し,専任教員である研究者がSOAP別の記載状況等の項目別評価および概略評価を各5段階で行った.研究者からの評価や指導コメントの入力および学生の評価閲覧は医学科の電子シラバスシステムを用いた.評価は各診療科での6週間の実習中に2回行い,最後に学生にアンケート調査を行った.結果,1回目に比べて2回目の評価で全項目の評点が上昇した.特に1回目は,「臨床推論の過程・ 診断のプロセス」や「計画」の記載が不十分な学生が多く見られたが,いずれも2回目で改善を認めた.実習全4期における時期別の比較では,第Ⅰ〜Ⅲ期と比較し第Ⅳ期で「問題志向型診療録としての体裁」,「臨床推論の過程・ 診断のプロセス」「計画」および「概略評価」の評点が有意に高かった.学生アンケートでも本ピア・レビュー教育は概ね好評であった.現在の臨床実習では,診療録の記載にあたり学生が自ら臨床推論を行い,プロブレムリストの作成を含めたアセスメントと計画を立案する学修機会が十分でないことが示唆されたが,複数回のピア・レビュー教育を通じてこれらの技能が向上し,学生の学修意欲向上にも寄与して いた.診療録記載技能教育の充実化を図る上で,本研究に示すピア・レビュー教育は有効であり,同様の形成的評価を普及させ,学生の技能の更なる向上を期待したい.