2009 年 15 巻 1 号 p. 52-57
表面筋電図を用いて腰背筋の筋活動を計測することにより,腰痛の存在を客観的に把握することができる.例えば,腰椎後弯症患者では,歩行時の表面筋電図計測により腰背筋の持続放電がみられるが,杖により正常例に近い筋活動リズムになる.また,急性腰痛患者では腰部固定帯の使用で前後屈時の腰背筋筋活動量が低下する傾向がみられる.慢性腰痛症においても同様の報告がなされている.こうした腰椎装具による腰背筋の筋活動低下効果が臨床的な有効性と関連している可能性がある.
一方,筋活動低下は,長期装用による筋の廃用を危惧させるが,現時点では長期間の固定帯装用後の腰背筋筋力に関する研究は乏しい.側弯症装具による筋力・可動性低下が治療終了後も持続するとの報告や腰椎の分節運動を制限するには腰椎装具では不十分との報告を加味すると,腰痛症の治療目的や予防的な場面での固定帯の装着は急性期にのみ使用することが望ましい.