抄録
腰仙椎部の神経根ブロックにより消失する腰痛について検討した.神経根ブロックで消失する腰痛は, 神経根障害による下肢痛に合併している症例と下肢痛を合併していない腰痛単独の症例に大別された.下肢痛合併例では, 下肢痛の責任神経根をブロックすることにより下肢痛とともに腰痛も消失した.
この腰痛と下肢痛は, すべての症例において同一側に存在し, 且つ症状誘発体位も同じであった.この事実は, 腰痛と下肢痛の起源が同一で, この腰痛は神経根障害により発生している可能性を示唆している.下肢痛を合併していない腰痛単独の症例では, 腰痛はすべて片側性で, その原因と考えられる高位の神経根ブロックを行うことにより消失した.この神経根ブロックで消失する腰痛の発生や伝達経路には, 髄節性の洞椎骨神経や神経根が関与していると考えられる.したがって, 腰仙椎部の単一神経根ブロックで消失する腰痛は神経根性腰痛として, 神経根ブロックで消失しない腰痛とは病態が異なると考えられる.