抄録
腰痛疾患患者で, 訴えが過度な症例など, 心理的要因の関与が疑われる場合, その治療方針決定の一助として, MMPIを実施してきた.対象症例は, 腰痛のみの症例 (腰痛群) 34例, 腰痛および下肢症状のある症例 (下肢症状群) 49例である.他覚的所見の明らかな症例に手術を施行した.腰痛群: 手術例では, MMPI+ (問題あり): 改善4, 不変0, MMPI- (問題なし): 改善6, 不変0であった。保存療法例では, MMPI+: 改善7, 不変9, MMPI-: 改善8, 不変0であった.下肢症状群: 手術例では, MMPI+: 改善12, 不変2, MMPI-: 改善8, 不変3であった.保存療法例では, MMPI+: 改善8, 不変9, MMPI-: 改善5, 不変2であった.他覚的所見の明らかな症例では, MMPIの結果に関わらず手術で症状の改善が得られた.MMPIで問題のある症例では, 保存療法を施行しても不変例が多く, 心理療法が必要と考えられた.