2021 年 35 巻 1 号 p. 66-71
すべての妊産婦に助産師のケアをという目標を掲げて10年,日本助産学会はエビデンスに基づいた快適なケアの実践指針を示すべく,助産ガイドラインを作成している。
この助産ガイドラインに期待する役割には,臨床の場では助産師が女性と共に意思決定を行う際に使用する情報としてのツール,教育の場ではケアの根拠とそのエビデンスの質の程度を知るツール,研究の場ではエビデンス・ギャップを認識するツールとして活用されることがあげられる。この度,2回目の改訂版となる「エビデンスに基づく助産ガイドライン―妊娠期・分娩期・産褥期2020」を刊行した。
この助産ガイドラインは,公募した臨床的課題の中から,重要であると判断した課題をクリニカルクエスチョン(Clinical Question:CQ)として設定した。CQに関連するエビデンスについて,国内外のガイドライン,MEDLINE,The Cochrane Library,医中誌Webのデータベースを使用し,2018年1月までの期間で網羅的検索を行い,まとめ,推奨を決定した。
2020年度版の助産ガイドラインには,2016年版に新たなクリニカルクエスチョンCQを10項目(妊娠期CQ5項目,産褥期CQ5項目)追加し,既存のCQについて,エビデンスの追加や臨床課題の重要性の再検討を実施した。この再検討により,表現の変更を行ったCQは,14項目(妊娠期CQ1項目,分娩期CQ13項目),推奨内容の追加や変更を行ったCQは,11項目(妊娠期CQ5項目,分娩期CQ6項目)である。2016年版と同様,産科領域で広く実践されているケアであるものの,医行為に関わるものは,推奨ではなく「エビデンスと解説」にとどめている。
本稿は,日本語で出版されている助産ガイドラインをもとに作成したものであり,世界に紹介・普及させ,英語で引用可能となることを目的に出版する。