日本養豚学会誌
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原著
豚の系統造成における希望改良量を達成するための選抜手法の比較
家入 誠二野村 哲郎広岡 博之
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2008 年 45 巻 4 号 p. 193-200

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抄録

豚の閉鎖育種集団を想定したモンテカルロシミュレーションを用い,通常のBLUP法から得られる推定育種価に線形計画を適用した選抜法(BLUP+LP法)と制限付きBLUP法による選抜法(RBLUP法)を比較した。選抜形質は背脂肪厚(BF)および1日平均増体重(DG)とし,両形質を予め設定した方向に改良するものとした。遺伝的パラメーターは,熊本県で実際に造成された系統豚「ヒゴサカエ302」のデータからの推定値を用い,選抜は7世代まで行った。500回の反復の平均値で見ると,両選抜法とも全世代を通じて育種価の集団平均を意図した方向に導いた。しかし,RBLUP法の下では,育種価の集団平均の反復間での分散がBLUP+LP法の下でのそれより大きく,その差は世代とともに増加した。遺伝相関に推定誤差がある場合,両選抜法の下での育種価の集団平均は意図した改良方向からずれを生じたが,RBLUP法におけるずれはBLUP+LP法におけるずれよりも著しく大きかった。近交係数については,両選抜法の間で全世代を通じて大差はなかった。以上の結果から,BLUP+LP法はRBLUP法に比較して信頼性に優れ,豚の系統造成における選抜法として有効であると考えられた。

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© 2008 日本養豚学会
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