日本養豚学会誌
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原著
リン結晶化法を用いた豚舎汚水からのリン回収の可能性
川村 英輔田邊 眞鈴木 一好
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2011 年 48 巻 1 号 p. 1-9

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抄録

ふん尿分離型豚舎から排出される豚舎汚水の性状や汚水量等の調査を行い,ふん尿分離豚舎汚水からのリン回収の可能性を検討することとした。神奈川県内の13養豚場及び当センター内のふん尿分離型豚舎から排出される豚舎汚水の性状を調査したところ,豚舎汚水中のリン,マグネシウムの性状に対するpHの影響が明らかとなった。一つ目として,豚舎汚水中のpHと水溶性リン酸態リン濃度及びpHと水溶性マグネシウム濃度との間に負の相関が認められた。二つ目として豚舎汚水性状の年間調査から,pH,水溶性リン酸態リン及び水溶性マグネシウム濃度に季節変動が見られ,夏はpHが低く水溶性成分の濃度が高まり,逆に冬はpHが上昇し水溶性成分の濃度が低下する傾向が見られた。三つ目として水溶性及び結晶性リン酸態リンの構成割合は,夏に水溶性リン酸態リンが大部分を占めていたが,冬は結晶性リン酸態リンが大部分を占めていた。四つ目として豚舎汚水中の水溶性リン酸態リンと水溶性マグネシウムのモル比は,冬は1以上であったが,夏に1を下回る傾向が見られた。また,ふん尿分離豚舎汚水からのリン回収試験実施予定農場の汚水量を9月から翌年の5月まで調査したところ,気温の低下に合わせて9月から1月まで汚水量が減少した。1月以降は気温が上昇しはじめ,汚水量も増加する傾向が見られた。
これらの結果から,ふん尿分離豚舎汚水は,水溶性リン酸態リン濃度が低濃度ではあるが,水溶性リン酸態リンの結晶化によりリン回収が可能であると判断できた。その際,水溶性マグネシウム/リン酸態リン比が1よりも小さい汚水の場合には,1に近づけるようマグネシウム源の供給が必要であることが明らかとなった。

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