日本養豚学会誌
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原著
Micro Volume Air Cooling(MVAC)法によるブタ胚盤胞ガラス化保存の最適化
三角 浩司江川 紗智子御澤 弘靖平山 祐理
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2021 年 58 巻 1 号 p. 28-34

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抄録

Micro Volume Air Cooling(MVAC)法によってガラス化保存したブタ胚盤胞の生存性を改善するため,ガラス化保存溶液に添加する糖類の検討と同時に市販化器具の胚スティックの有効性を検討した。雌豚から採取した胚盤胞を自作器具とショ糖を添加したガラス化保存溶液を用いてガラス化保存する(HDM-S)区,同様に自作器具とトレハロースを用いた(HDM-T)区,胚スティックとトレハロースを用いた(HST-T)区に分け,ガラス化保存した胚を体外培養あるいは受胚豚へ移植した。対照区には,胚採取後無処理の胚(新鮮胚)を用いた。体外培養成績の脱出胚盤胞発生率は,HDM-S区が73.1%,HDM-T区が76.9%,HST-T区が88.0%および対照区が92.0%となり,各試験区間に有意な差は認められなかった。移植試験の子ブタ生産率は,HDM-S区が13.3%,HDM-T区が26.5%,HST-T区が32.3%および対照区が42.4%となった。HST-T区と対照区の間に有意な差は認められなかった。一方HDM-S区は他の試験区に比べ,HDM-T区は対照区に比べ有意に低い値を示した。以上の結果から,トレハロースを添加したガラス化保存溶液と胚スティックを用いてMVAC法でガラス化保存した胚盤胞の子ブタ生産率は,新鮮胚と同等の成績が得られることが明らかとなった。

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