日本養豚学会誌
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原著
養豚場の排水処理を高度化するスマート制御技術とIoT遠隔モニタリングの評価
横山 浩山下 恭広石田 三佳西島 也寸彦小島 陽一郎Sudeshinie Piyathissa臼井 野々花伊藤 和紀水口 人史長峰 孝文井上 孔伸松永 圭史長谷川 輝明芝田 晃一甲斐 敬康金城 孝高木 和香子
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2025 年 62 巻 2 号 p. 19-32

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抄録

養豚場の排水処理では,原水の濃度や活性汚泥の量などが日々変動する。変動に応じて曝気装置や汚泥引き抜きポンプなどの運転条件を最適化することが望ましい。しかし,その様な制御は技術的に困難なので一般的には行われていない。IT技術を活用した養豚排水処理施設の遠隔モニタリグの事例は少ない。本研究は,データに基づいて装置の運転を最適化制御(スマート制御)する2つの新しい技術「①改良型BOD監視システムと②スマート活性汚泥浮遊物質(MLSS)制御」および運転管理を省力化する③IoT遠隔モニタリングの実用性を養豚排水処理施設にて評価した。既存のBOD監視システムに電極電位の変数化やマイナス電流の抑制機能,遠隔操作機能などを追加した改良型を開発した。これにより,操作性の向上と処理水のBODが<20 mg/Lの低い排水処理施設においても安定したBOD測定が可能になった。スマートMLSS制御は,曝気槽のMLSSの値を正確(R2>0.9)に測定可能であり,MLSSを目標値に制御できることが示された。IoT遠隔モニタリングでは,カメラによる曝気槽や配電盤などの監視,MLSSセンサなどの測定データを可視化できた。これにより,施設の運転管理に要する作業時間を70%程度削減できた。これらの3つの技術は,養豚排水処理施設のスマート化と運転管理の省力化への貢献が期待される。

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