日本養豚研究会誌
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豚におけるしょうゆ粕の利用性とその飼料価値
吉本 正河村 禎
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1976 年 13 巻 1 号 p. 12-21

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抄録

養豚飼料としてのしょうゆ粕の利用性とその飼料価値を検討するために, 飼養試験, 消化試験およびと体成績, 肉質の理化学性の検討を行なった。供試豚はランドレース種, 同腹子豚7頭を用い, 対照区3頭, しょうゆ粕20%混合区3頭および同40%混合区1頭とした。飼養試験はケージに収容して行ない, 基礎飼料には新豚産肉能力検定飼料を使用し, 対照区にはこれを100%, しょうゆ粕混合区には, それぞれ77.8%および55.6%を配合して給与した。しょうゆ粕混合区には油脂をそれぞれ2.2%および4.4%添加して, 各区の飼料のDCP, TDNをほぼ同一にした。飼養試験は70日令から12週間行ない, 消化試験はこれと並行して全ふん採取法で5日間行なった。飼養試験終了後と殺し, と体, 赤肉および脂肪について調査した。その結果は次のとおりであった
1, 飼養成績: 各供試豚とも食欲および健康状態は正常であった。1日平均増体重は対照区が840gと高く, 20%混合区が800g, 40%混合区が803gと近似した成績であった。飼料要求率は, 対照区が3.22, 20%混合区が3.19と同様な成績を示し, 40%混合区が3.38とやや劣っていたが, これらの数値はいづれも優れた成績であった。
2, しょうゆ粕の組成, 消化率および栄養価: しょうゆ粕の組成は水分16.3%, 粗蛋白質22.2%, 粗脂肪9.8%, 粗繊維4.2%, 可溶無窒素物29.0%, 粗灰分8.5%および総エネルギー4290Kcal/kgであった。消化率は粗蛋白質64%, 粗脂肪74%, 粗繊維53%, 可溶無窒素物78%および総エネルギー67%であった。しょうゆ粕の組成と消化率からその栄養価値を求めるとDCP14.2%, TDN60.9%および可消化エネルギー2866Kcal/kgであった。
3, と体成績: 枝肉率は対照区が65.3%, 20%混合区が64.0%および40%混合区が64.5%と近似した成績であった。その他のと体成績も枝肉率と同様に大きな差異は認められなかった。
4, 赤肉の理化学的性質: 赤肉の水分, 蛋白質, 脂肪および灰分の割合は各区とも近似していた。pHは各区ともやや低い傾向にあったが区間差はなかった。肉色はしょうゆ粕混合区に淡いものが見られたが個体差があり対照区との間に差はないものと認められた。
5, 脂肪の理化学的性質: 脂肪の屈折率および融点は対照区よりしょうゆ粕混合区の方が低かったが, 各区の成績は正常な範囲にあった。
したがってしょうゆ粕は20%程度を配合飼料に混合した場合, 配合飼料に劣らない発育効果があり, と体, 赤肉および脂肪に大きな影響を及ぼさないものと考えられる。また, しょうゆ粕の組成および消化率から得られた栄養価値は良好なものであり, 今後, しょうゆ粕を養豚飼料として大いに活用すべきであると考える。

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