日本養豚研究会誌
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子豚用代用初乳に関する研究
I. 牛初乳の保存方法と初生豚への効果および子豚用人工哺育機の開発について
高橋 明阿部 恒夫森地 敏樹前田 昭二姫野 健太郎中野 正吾
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1979 年 16 巻 1 号 p. 1-12

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抄録

初生豚育成用の代用初乳として, ホ種乳牛の分娩後2日以内の初乳を, 自然〓酵法とチーズ・スターター〓酵法についての保存比較試験と, これらを給与する人工哺育器の開発, そしてそれらの育成試験を行ない, その間に牛初乳中のγ-グロブリン (IgG), および血清蛋白が子豚の血中への移行について調査し, およそ下記の結果がえられた。
(1) 牛初乳を15℃で自然〓酵させたものは, グラム陽性菌が支配的となり, 2~4日目で大腸菌群が著しく増殖するので, これを給与する場合は十分な注意が望まれる。
(2) スターター添加区は, 乳酸球菌が終始圧倒的支配となり, とくに大腸菌の増殖が抑制されるが, 4日以上の保存は冷蔵を要する。
(3) 抗生物質 (オーレオマイシン) 添加区は, 最初の1~2日以内は細菌の増殖抽制効果は認められるが, それ以後は大腸菌群やグラム陰性菌が著しく増進するので, 初生豚に給与することは適当でない。
本報の成績は, Tompson & Marth9) の報告と, 全般的によく一致している。
(4) 創案の子豚用人工哺育加機による育成は, 自然〓酵区は4~5日齢頃から下痢の発生が多く, 3週齢頃2までは自然哺育のものがすぐれているが, スターター添加区は至って健康的で, 4週齢以後は各区もほとんど差が認とめられず, 5週齢における体重は, 自然哺乳区8.4kg, 自然〓酵区とスターター添加区はともに8.1kgであった。
しかし, スターター添加区の3頭は, 33~38日齢で神経症状を呈して死亡した。牛〓酵初乳両区の育成率は92.5%であった。
(5) 牛初乳の給与による, IgG (牛) の子豚血中への移行量は, 母豚からのIgG (豚) 移行量の1/5~1/2レベルで, 約2週間子豚血清中に存在することを確認した。
また, 牛初乳中のIgGは〓酵処理および保存による影響は少ないことが認められた。
以上の結果から, 牛初乳の初生豚に対する給与は, 発育, または感染防禦に役立つことはかなり期待できるが, 今後も引続いて実験を累積していく計画である。

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