日本養豚研究会誌
Online ISSN : 2186-2567
Print ISSN : 0388-8460
ISSN-L : 0388-8460
豚の萎縮性鼻炎の防除に関する試験
超早期離乳について (初乳搾乳給与による子豚育成法)
森谷 昇一古市 充利矢部 寛明和藤 昇
著者情報
ジャーナル フリー

1969 年 6 巻 2 号 p. 73-79

詳細
抄録

AR清浄豚作出方法の手段として, 母豚と子豚の接触をさけ, 隔離育成の精度を高めるために, 初乳を搾乳給与することにより, 母体免疫の子豚への移行をはかり, SPF豚用人工乳で子豚を育成した超早期離乳による子豚の育成成績の大要は次のとおりである。
1. 分娩と初乳搾乳給与の状況
1) 初産のものが多く, 分娩頭数は少なかったが, 搾乳, 脳下垂体後葉性ホルモン剤応用のためか, 分娩所要時間は極めて短かかった。
2) 豚の搾乳は, 容易ではなく, 母豚と搾乳者, 搾乳時間により搾乳量にかなりの差があり, 当初の目標量を搾乳することはできなかった。
3) 脳下垂体後葉性ホルモン剤の応用は有効であったが, 多量 (1回5ml, 50JPU以上) 注射すると, 貧血症状を呈した。
4) 初乳の給与は比較的容易であったが, 搾乳量が少なかったために, 2時間間隔に給与した給与量は, いずれも目標量以下となり, 1頭当りの最高は233ml, 最低は80mlであった。給与回数は, 最高12回, 24時間離乳, 最低6回12時間離乳を行なったが, 子豚の育成に異常はなかった。
2. 人工乳給与の状況
1) SPF豚用人工乳は, 1頭を除き2日令から給与し, 子豚の採食量により給与したところ, 当初の給与計画とは相違したが, 最高は6日令で521±138.0gとなった。
2) SPF豚用人工乳から市販人工乳特Aへの完全な切換えは, 10~18日令であった。
3. 子豚の育成成績
1) 20日令までの育成率で, 一部にとくに悪いものがあったが, 以後の成績は順調であり, へい死原因の下痢の予防に注意を要する。
2) 初期の発育は悪かったが, 発育の斉度はおおむね良好であり, 40日令では発育, 発育斉度とも既報の特製哺乳枠による介助哺乳よりややよかった。
4. 肉豚の発育成績
初期の発育は悪かったが, 120~150日令で発育標準に達し90kg到達日令は175±18.1日となった。
なお, 飼料消費量と飼料要求率は, 飼槽の構造不良のためにロスが多く, かなり高い数値となり, とくに前期において悪かった。
5. 初乳搾乳給与後の母豚の発情再帰と妊否
9頭について発情再帰を観察した結果, 8頭が平均34.9日で発情し, 人工授精で5頭は妊娠したが, 28日までの発情再帰で早期に授精した3頭には繁殖障害が発生した。

著者関連情報
© 日本養豚学会
次の記事
feedback
Top