日本養豚研究会誌
Online ISSN : 2186-2567
Print ISSN : 0388-8460
ISSN-L : 0388-8460
養豚飼料の消化率改善に関する研究
I 飼料への脂肪分解酵素添加および酸, アルカリ処理の飼料利用性におよぼす影響について (中間成績)
古橋 圭介萩原 達也佐藤 安弘甲斐 省三
著者情報
ジャーナル フリー

1970 年 7 巻 2 号 p. 82-86

詳細
抄録

飼料の利用性を高める一方法として, 給与前に酵素添加あるいは酸, アルカリで処理した場合の消化率に及ぼす影響について検討した。消化試験は全糞採取法により, 供試豚としては1試験当り4頭づつの同腹去勢豚を用いた。また, 供試飼料としては, 動物性油脂 (イエローグリス5%) 添加飼料を用いた。
1. 本試験における酵素として, 供試飼料の内容からみてリパーゼによる処理効果をとりあげ, その添加量は飼料中脂肪1g当り70単位とした。
処理条件は, 同酵素の活性条件を考慮し, PH 6.2, 37℃で2時間処理した区, 同12時間処理した区を設け, 無添加区と対比したが, 消化率改善の効果は認められず, また, 12時間処理区の方が2時間処理区よりかえって劣る結果を示した。これは, 酵素添加量が少なく, 不適であったこと, 及び, 長時間の浸漬, 加温処理で, ある種の変質が起ったためではないかと推測される。
2. 酸, アルカリ処理についても, 同一飼料を用いて消化試験を行なった。アルカリ処理の場合には, 流動状にした供試飼料に, 5 N-NaOH液を加えてPH9.5~11.0に調整した後, インキュベーター内で37℃に2時間保ったものを給与直前に5 N-Hcl液で中和して給与し, また, 酸処理の場合には, このNaOH液とHcl液を置き換えた以外は全く同じ条件で処理し, 無添加のものと対比した。
その結果, これまでと同一飼料の場合には, 処理の効果は認められなかったが, これは, 完配中に0.5%含まれている食塩量に加えて, 処理及び中和の過程で加えられるNaOH, Hclに基づくNa, clを考えると, 食塩過剰の悪影響が原因しているとも考えられる。このため, 同飼料から食塩 (0.5%) を除いた無加塩飼料について, 同一処理を行なったところ, 酸, アルカリ両処理区において, 消化率改善の効果が認められた。

著者関連情報
© 日本養豚学会
前の記事 次の記事
feedback
Top