日本惑星科学会誌遊星人
Online ISSN : 2423-897X
Print ISSN : 0918-273X
ISSN-L : 0918-273X
特集「火星圏のサイエンス」
火星隕石の放出過程
黒澤 耕介玄田 英典岡本 尚也松井 孝典
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 27 巻 3 号 p. 197-206

詳細
抄録

火星隕石は火星の表層物質が地球に到達することがあるという物的証拠である. ところが, 衝撃物理学の原理に従うと火星表層物質が宇宙空間に射出されるという力学的制約(放出速度> 5 km/s)と, 火星隕石の岩石学的分析から得られる制約(最大経験圧力<50 GPa)を同時に満たすことはできない. 我々は先行研究に比べて一桁以上高い空間解像度で数値衝突計算を実施し, 火星隕石放出過程について詳細に調査した. その結果, 衝撃波と膨張波の伝播によって加速された物質が玉突き事故を起こすことによって, 心太式に加速されることによって衝撃物理学から決まる上限の速度よりも高速度の放出が達成されることがわかった. 我々はこの緩やかな加速を「後期加速」と名付けた. 本稿ではこの新発見について紹介し, 天体衝突による高速度放出についての未解明点を整理する.

著者関連情報
© 2018 日本惑星科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top