2018 年 27 巻 4 号 p. 314-319
金星大気の全球的な流れを計算する数値モデル「AFES-Venus」とそれを用いた数値実験・データ同化について紹介する.AFES-Venusは,金星大気の惑星規模筋状構造や周極低温域,大気安定度の地方時依存性などの再現に成功している.AFES-Venusでは,高度55 km付近に低安定度層を導入したことと,空間解像度を高めたことによって,傾圧不安定の発達が計算されるようになった.数値実験により,傾圧不安定の発達が,金星大気の現実的な風速・温度場の再現にとって重要であることが分かってきた.また我々は,AFES-Venusを用いたデータ同化システムも開発しており,「あかつき」による観測を反映した現実的かつ時空間的に偏りのない金星大気のデータセットの創出や,個々の観測の重要度評価による観測計画立案への貢献も目指している.