2020 年 29 巻 3 号 p. 104-114
直径1,000 km以上の太陽系外縁天体は現在6つ発見されており,近年の観測から,これらの大型の外縁天体は衛星を持つことが明らかになった.我々は,巨大衝突とその後の潮汐進化によってこれらの衛星系が形成されたと考え,巨大衝突と潮汐軌道進化の数値計算によって観測と整合的な衛星系が形成される条件を調べている.本稿では,外縁天体の形成・集積機構と1,000 kmサイズの外縁天体の熱史の関係,巨大衝突による衛星形成に対する分化状態の影響,そして潮汐による衛星系の軌道進 化,の3つの話題について議論する.離心率の小さい衛星系が多数存在するという観測事実から,我々は,太陽系外縁部においては100 kmサイズ以上の微惑星が太陽系初期数百万年以内に形成され,これらが衝突を繰り返すことで1,000 kmサイズの外縁天体を形成し,さらに巨大衝突によって衛星系も作られたというシナリオを提示する.