2020 年 29 巻 3 号 p. 138-149
系外惑星の大気組成は,惑星の形成・進化過程を探る重要な手がかりである.系外惑星大気はトランジット分光観測などによって近年盛んに調べられている. しかし, 多くの系外惑星は厚い雲に覆われていると考えられており,それらの大気組成を類推するのは容易ではない.本稿では,系外惑星に存在が示唆される鉱物雲に関する基本的な背景を紹介した後,筆者らの近年の研究から明らかとなった鉱物雲の鉛直構造や大気観測への影響に関する知見を紹介する.また,雲微物理モデルを応用することで「曇った系外惑星の大気組成に対してどのような示唆が得られうるか?」「得られた大気組成は過去の惑星形成過程にどのような示唆を与えうるか?」といった問いにも答える.