2021 年 30 巻 3 号 p. 100-104
高温星周辺のホットジュピターは,ホットジュピターの軌道進化の解明に適した天体である.軌道進化の手がかりとなる惑星軌道傾斜角は,トランジット分光観測からドップラー・トモグラフィー法で測定されているが,1回の観測では見かけの惑星軌道傾斜角しか測定できない.しかし,この惑星系特有の現象である軌道歳差を観測することで,真の惑星軌道傾斜角を算出することが可能となる.本稿では,高分散分光器HDS,HIDES,TS23によるトランジット分光観測と,MuSCATとMuSCAT2によるトランジット測光観測から得られた,高温星周辺のホットジュピターWASP-33bの約10年間にわたる軌道歳差の振る舞いと,算出した真の惑星軌道傾斜角について述べたいと思う.