日本惑星科学会誌遊星人
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火の鳥「はやぶさ」未来編 その28 〜はやぶさ2試料の化学的初期分析からわかってきたこと〜
圦本 尚義 橘 省吾渡邊 誠一郎はやぶさ2初期分析チーム
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2022 年 31 巻 4 号 p. 286-297

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抄録

化学的初期分析では,「はやぶさ2」が持ち帰った小惑星リュウグウ試料の化学組成と同位体組成を測定した.リュウグウは炭素質隕石,特にCIコンドライトと呼ばれるイヴナ型炭素質隕石から主に構成されていることが判明した.その主な構成鉱物は、リュウグウの母天体中で水溶液から析出した二次鉱物である.母天体中の水溶液は,リュウグウに元々あった一次鉱物を変質させ,太陽系が誕生してから約500万年後に,この二次鉱物を沈積させた.その時の温度は、約40℃で圧力は0.06気圧以上であった.その後,今日まで,持ち帰ったリュウグウ試料は100℃以上に加熱されていないと思われる.これらの結果から,リュウグウ試料は,これまで見つかっている隕石を含め,人類が手に入れている天然試料のどれよりも,太陽系元素存在度を保ち化学組成的に分化をしていないという意味で,最も始原的な特徴を持っているものだと結論した.今後,リュウグウ試料は,新しい太陽系の標準試料として国際的に活用されていくと思われる.

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