2023 年 32 巻 3 号 p. 186-215
1930年代から大気圏での微生物採集実験が行われて,胞子を形成するBacillus属とカビ,紫外線耐性菌が採集されている. 100年以上前にパンスペルミア仮説が提唱された.パンスペルミア仮説と,宇宙由来の有機化合物が地球に飛来した可能性の検討を,地球低軌道での微生物・有機化合物実験(たんぽぽ計画)で行った.紫外線耐性菌Deinococcus radioduransの細胞塊(0.5 mm厚)は紫外線が当たる宇宙空間で3年間生存した.この紫外線耐性菌の生存率の年変化から,紫外線があたる環境で2〜8年間,紫外線があたらない環境では48年間この紫外線耐性菌が生存可能であると推定された.シアノバクテリアの3年間の宇宙生存と,有機化合物の宇宙環境での安定性,超高速衝突痕が分析された.火星探査の結果から,火星表面に生命増殖環境がある可能性がでてきている.生命探査では,高解像度の顕微撮像と,擬陽性を許容しつつも検出漏れのない方法による探査が重要である.また見つかった生物の候補微粒子が,非生物か地球生物か地球外生物かを,アミノ酸種とDNAの分析で識別するフローチャートが提案されている.惑星保護に関してもふれる.