防衛的悲観主義(Defensive Pessimism ; 以下DP)は, "過去の似たような状況において良い成績を修めていると認知しているにも関わらず,これから迎える遂行場面に対して低い期待をもつ認知的方略"と定義される(Norem, 2001)。高い期待をもつ認知的方略である方略的楽観主義(Strategic optimism ; 以下SO)とは対照的な概念であるとされている。Spencer & Norem (1996)は, DP者は,パフォーマンスの失敗場面を想定させて,どうやってその失敗をリカバーするのかまで思い描かせる"コーピング・イマジナリー"条件において, SO者は,パフォーマンスについての思考から離れくつろがせる"リラクゼーション"条件において,その後のダーツの成績が最も良かったことを報告している。しかし, DP者が"コーピング・イマジナリー"条件で高いパフォーマンスを示した理由が,あらかじめ最悪の結果を予想することによって,不安が統制されたためか(自己防衛的機能),予測される最悪の事態を考えることで,その対応策を考えられたためなのかを特定することができない。そこで本研究では,この2つの要因を分離して検討することにした。具体的には"コーピング・イマジナリー"条件を,失敗場面を想定させる"ネガティブ"条件と,予想される失敗に対してどう対処するのかを想定させる"コーピング"条件の2つに分けて検討することにした。
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