本研究は,日本の株式市場が「連結利益」をどのように評価してきたかを,検証する。その際,(A)親会社個別情報中心の開示制度と(B)連結情報中心の開示制度の期間を対比する。本研究の重要な成果は,両期間を対象とする検証を通じて,以下の事実を発見したことである。まず,先行研究と同様に(A)の期間,子会社利益が過小に評価されていたことを確認した上で,(B)に移行後,かかる過小評価が解消されている事実を発見した。これはグループベースの情報提供が徹底されたことにより,子会社利益を適切に評価できるようになったことを示唆しており,連結制度改革の効果を裏づけている。ただし同時に本研究では,(B)に移行後も,連結利益の構成要素の一つである,持分法利益が過小に評価されている事実を発見した。この点は,持分法適用企業に関する情報が現状において不足しており,現行の連結開示制度には一定の課題も含まれていることを示している。
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