石川県農業短期大学農業資源研究所報告
Online ISSN : 2433-6513
Print ISSN : 0915-3268
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  • 島田 多喜子
    原稿種別: 本文
    1999 年 6 巻 p. 1-8
    発行日: 1999年
    公開日: 2018/03/16
    研究報告書・技術報告書 フリー
    最近の10年の間に重要な穀類の形質転換植物体の育成に成功した。現在のところ,植物の形質転換には組織培養技術が必須である。ここでは,穀類,特にイネにおける組織培養技術と,形質転換技術の発展に対する日本の研究者の貢献と,最近の研究の進展について概観する。日本ではイネが最も重要な穀物であり,その研究の歴史は長く,蓄積も大きい。イネの組織培養も日本の研究者が取り組み,カルスからの再分化の系が確立した。その後,プロトプラストからの植物体の再生,プロトプラストを用いた形質転換イネの作出,そしてアグロバクテリウムを使った形質転換系の確立と着実な進展は,日本の研究者によるものである。現在,種々の環境ストレスに耐性を待ったイネ,病害虫に抵抗性のイネ,飛躍的な収量増となるイネ,新たな機能を待ったイネ等を目指して多くの研究グループが形質転換イネの育成と解析に取り組んでいる。また,実用化のための試験として,ウイルス抵抗性,および低アレルゲンの形質転換イネが環境にたいする安全性のテストを終丁している。イネに比べると,他の穀類のこの分野の日本における研究は少ない。しかし,コムギのカルス誘導,カルスからの再分化系の確立は,我々が世界に先駆けて成功した。さらに,1995年には,パーテイクルガンを用いて形質転換コムギを作出した。オオムギについても,日本の研究者のレベルは高い。 トウモロコシでは,アグロバクテリウムを使って形質転換に成功している。実用的な遺伝子組換え穀物を育成するには,形質転換系の確立と共に,農業上有用な遺伝子の単離が鍵である。日本では,イネゲノムの解明に大きなエネルギーが注がれ,近い将来には多くの有用な遺伝子が単離されると期待される。それらの遺伝子は,他の植物と多くの共通点をもつに違いないため,他の穀類の遺伝子組換えにも利用できるだろう。
  • 島田 多喜子
    原稿種別: 本文
    1999 年 6 巻 p. 9-12
    発行日: 1999年
    公開日: 2018/04/02
    研究報告書・技術報告書 フリー
    カルス誘導培地に7日間培養したイネ完熟種子胚の胚盤組織細胞にパーティクルガンで遺伝子を導入して形質転換イネを育成している。ここでは,DNAをコーティングした金粒子を照射された胚盤組織を組織学的に観察した。培養7日後,胚盤の表皮組織を構成する柵状細胞が細胞分裂をして数細胞となっている。パーティクルガンを照射すると,全粒子は均一にその胚盤組織の表面に散布される。内部の細胞層にまで貫通する金粒子は殆ど見られない。しかし表層では金粒子が導入されている細胞が見られる。2週間培養を続けると,胚盤表皮層の細胞は分裂を続け,細胞塊を形成する。1個の柵状細胞が分裂を繰り返し,胚発生に似た増殖をし,大きな細胞塊となっているのが観察された。これらの胚抗体は生長を続け,再分化植物体となると考えられる。従って,遺伝子がコーティングされた金粒子が表層の細胞にのみ導入されることによって,胚盤表層の細胞は再分化能力が高いため,形質転換イネは比較的効率よく得られると考えられる。また,形質転換体は単一細胞の増殖によって再生するので,得られた形質転換イネはキメラてはないと考えられる。
  • 中谷内 修, 古賀 博則
    原稿種別: 本文
    1999 年 6 巻 p. 53-60
    発行日: 1999年
    公開日: 2018/04/02
    研究報告書・技術報告書 フリー
    イネ白葉枯病菌を接種したイネ葉身のリポキシゲナーゼ活性を経時的に調べた。親和性の組合せでは24〜36時間で,わずかながら活性の抑制がみられた。それに対して非親和性の組合せでは12時間後には活性の増大がみられ,その後36時間まで高い活性がみられた。また,接種葉内のイネ白葉枯病菌の菌体密度の経時的変化を調べたところ,親和性の組み合わせでは接種直後から活発な増殖が見られたのに対し非親和性の組合せでは増殖が強く抑制されていた。これらの結果より,イネ白葉枯病抵抗性にリポキシゲナーゼが関与している可能性が示唆された。また,菌体外多糖質変異株とhrp変異体を接種したイネ葉身の24時間後のリポキシゲナーゼ活性を調べた。菌体外多糖質変異様を接種した場合は野生株を接種した場合と同様の結果が得られ,菌体外多糖質はリポキシゲナーゼ活性に影響を与えないと考えられた。hrp変異株を接種した場合は,非親和性の組合せでは野生株の場合と同様に活性の増大がみられたが,親和性の組合せにおける活性の抑制はみら壮なかった。これより,hrp遺伝子に間る代謝系,分泌系が親和性イネにおけるリポキシゲナーゼ活性の抑制に関わっているかもしれないと考えられた。
  • 田知本 正夫
    原稿種別: 本文
    1999 年 6 巻 p. 61-66
    発行日: 1999年
    公開日: 2018/04/02
    研究報告書・技術報告書 フリー
    畿つかの既知あるいはランダムのプライマーを用いてDNAの一部をPCR増幅レそのバンドパターンをもとにレンゲ根粒菌の菌株を識別することを試みた。PCR反応には国内外のレンゲ根粒菌5菌株を供試しSPH I(ランダムプライマー,nifHDK(窒素固定遺伝子nifの一部),およびERIC IRとERIC2(腸内細菌の遺伝子間反復配列の両端)のプラプライマーセットを用いた。いずれのプライマーでもPCRによってDNAの断片が増幅され,中国産と日本産のレンゲ根粒菌はそれぞれ類似のバンドパターンを示し両グループの識別は容易であった。各グループ内の菌株間の識別はひとつのプライマーあるいはプライマーセットだけでは困難な場合もあったが,各プライマーによる結果を組み合わせると識別が可能であり,接種根粒菌の感乗率の調査等に利用が可能であると考えられる。水田転換畑の同一圃場に栽培されたレンゲの根粒からランダムに分離したレンゲ根粒菌は多様なバンドパターンを示し同一圃場でも数種類のレンゲ根粒菌が存在することが示唆された。ポット栽培による根粒菌接種栽培試験において形成された根粒から分離された根粒菌についてPCR法によって菌株を調べたところ,一部の接種菌株を除き,接種菌株による根粒形成が確認された。
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