北海道民族学
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選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • ―沿岸水産資源のCo-Stewardshipへの課題―
    濵田 信吾
    2024 年20 巻 p. 2-16
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2025/05/14
    ジャーナル オープンアクセス
    本論の目的は、米国アラスカ州南東部における先住民トリンギットとハイダによる伝統的な生業ニシン卵収穫の民族誌的記録と、脱植民地化に向けたニシン資源の協働管理責務システムの構築の必要性を主張することである。南東アラスカにおけるニシン卵の収穫は、抱卵ニシンを産卵前に漁獲する商用巻き網漁業と、産卵後のニシン卵を収穫する生業漁撈に大別される。ニシン卵は、北アメリカ北西部先住民社会において歴史的に貴重な交易品であり、現在も産卵床を人工的に増設する伝統的な方法で生業収穫されるニシン卵の多くが先住民社会ネットワークを通じて分配されている。しかしながら、1980 年に制定したアラスカ国家利益土地保全法で明記された、野生資源の利用における先住民の生業活動の優先的利用は水産資源管理において実現されていない。本論は、ニシン産卵域が歴史的な記録に比べると大きく減少し、生活様式の変化とともに生業収穫者数が減少する中で、ニシン資源をアラスカ州と先住民族が公正な立場で協働する資源管理責務(co-stewardship)の実現は、南東アラスカ先住民社会と生活の脱植民地化へとつながると論じる。 キーワード:南東アラスカ、ニシン、生業、ガバナンス、海洋政策
  • ―研究教育機関における文化復興―
    シン ウォンジ
    2024 年20 巻 p. 16-31
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2025/05/14
    ジャーナル オープンアクセス
    『松前家記附録外国部』の朝鮮漂客李先達関係資料は、1696年礼文島に漂着した朝鮮人の一人である李志恒が書いた書簡等を収録しており、書簡等の収載に先立ち、漂流民の発見から本国送還までの概要を序文で示している。本資料の全文を示し、その内容を同漂流事件について記している朝鮮側及び松前藩側の記録と比較検討を行った。本資料に収載されている書簡等が送られた背景については、朝鮮側の記録である『漂舟録』で詳細が確認できる。本資料は、成立時期の早い『福山秘府』「朝鮮漂人部」の一部と同じ内容を収載しているが、それにみえる誤りを踏襲していないため、資料の系統関係では、現在その存在が確認されていない共通の祖本から成立したものである。 キーワード:松前家記、福山秘府、漂舟録、朝鮮人漂着部、李志恒
  • ―研究教育機関における文化復興―
    北原 モコットゥナㇱ, 山道 ムカㇻ, 山田 チケンキオ
    2024 年20 巻 p. 32-43
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2025/05/14
    ジャーナル オープンアクセス
    アヌココㇿアイヌイコロマケンル(国立アイヌ民族博物館)の常設展示には、樺太アイヌがクマの霊送り(飼いグマ送り)の際にクマを繋いだ装飾的な杭、およびクマ用装飾を身に着けたヒグマのはく製が展示されている。これらの品は、敗戦後に網走市周辺に移住した樺太アイヌによって作られたのを最後に60年ほど作られず、製作技法の継承も途絶えていた。このような状況下で、民族誌に記された情報や博物館資料の観察に基づく復元的な展示物製作は、アイヌ文化復興の要としてのウポポイのあり方を象徴する作業であった。本報告では、この展示物製作にあたって収集した情報の概要と、作業を通じて得た知見、今後の課題についてまとめる。 キーワード:アイヌ、クマ送り、信仰、イナウ、物質文化
  • 笹倉 いる美, 西田 香代子
    2024 年20 巻 p. 44-50
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2025/05/14
    ジャーナル オープンアクセス
    北海道立北方民族博物館では、2023年に西田香代子が講師を務めたアイヌ文化講習会「イラクサの糸づくり」を開催し参加者はエゾイラクサから繊維を取り出す工程を学んだ。 イラクサの糸はアイヌ文化においてさまざまに用いられ、特にサハリンアイヌの草皮衣の素材であることが知られている。 本稿では、イラクサの糸づくりと本州で行われるカラムシの糸づくりとの比較を試み、アイヌの樹皮衣と草皮衣の理解に新たな視点を提示する キーワード:イラクサ アイヌ文化 テタラペ 草皮衣 カラムシ(苧麻)
  • 梅木 佳代
    2024 年20 巻 p. 51-68
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2025/05/14
    ジャーナル フリー
    かつて北海道に生息したエゾオオカミ(Canis lupus hattai)は、明治期に「有害鳥獣獲殺」制度の対象とされ、過度の狩猟圧を受けた結果として絶滅した。しかし、絶滅以前のエゾオオカミと人々の関係性をめぐっては従来曖昧な議論が続いており、なかでも和人との関わりについては過去の記録に基づく検討がほとんど行われていない。  本稿の目的は、開拓使の博物館事業の一環として実施されたエゾオオカミの「飼育」に注目し、その経緯を詳しく検討することで、明治期の和人とオオカミの関係性の一端を明らかにすることにある。そのために、明治期の公文書と新聞記事を主要な対象とした文献調査を実施し、開拓使が飼育したエゾオオカミに関わる情報の抽出と整理を通じて、道南地域における幼獣の収集から開拓使東京仮博物場への移送および飼育にいたる経緯を確認した。  本稿では、開拓使が1877(明治10)年から1879(明治12)年にかけて東京仮博物場で北海道産エゾオオカミの飼育に取り組んでおり、関連して最大で11頭が東京と北海道で飼育されていたことを明らかにできた。また、なぜ東京仮博物場でエゾオオカミが飼育されたのか、その理由に明確に言及した史料を見い出すことはできなかったが、現存する剥製標本の形態や当時の社会におけるオオカミの一般的なイメージに基づく考察を試みた。 キーワード:エゾオオカミ、飼育、野生動物、開拓使、北海道
  • ―公・民現場の関係性比較から環境保全の実務を改善する試み―
    元広 修爾
    2024 年20 巻 p. 69-83
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2025/05/14
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は、エスノグラフィーにより自治体の実務改善を図るための試論である。自治体職員の一人として環境学習における公民協働の不調という実務課題に向き合い、実務の基本を構成する「現場」や「市民」の意味を再考した。自治体職場と西中国山地・芸北のNPO現場をフィールドワークにより往還するなかで、実務の当たり前を揺さぶられるような複数の出来事に出合った。切実な地域課題や、NPO現場における人・モノの相互作用、環境保全を担う市民のかけがえのない複雑性は実務において経験的に学ぶことが難しい。このため私に深い印象を与えて、従来の実務のものの捉え方を振り返る好機となった。私は度々ジレンマに陥ったが、実務で見慣れた「現場」や「市民」、「自治体職員」の意味が更新されてゆく過程でもあった。課題解決の鍵となったのは、実務では脇役の聴く営みであった。実務改善の人類学的試案として提案したい。 キーワード:応答の人類学、環境保全、行政実務、現場・市民、聴く営み
  • 小南 光, 平田 昌弘
    2024 年20 巻 p. 84-98
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2025/05/14
    ジャーナル オープンアクセス
    森林認証制度は、認証材を市場に流通させ、持続的な森林利用を図り、森林所有者に自然環境と地域社会を守る取組を促す制度である。森林認証制度は、先住民社会および地域社会に配慮するよう、先住民族、地域住民の生活・文化に必要な動植物を採取する慣習を保全することも目指しているが、必ずしも機能しているとはいえない状況にある。そこで本研究では、森林認証制度の実現を通して今後の文化伝承活動を進めるために、十勝アイヌの人々の現在の樹木資源利用の実態を検討し、現代十勝アイヌの実態に適合した森林認証制度のあり方について提言を行うことを目的とした。現代十勝アイヌの17名に対して、樹木資源の利用経験と入手方法(採集・購入)について、聞き取り調査を実施した。その結果、現在の樹木の利用種数は合計14種類であった。伝統的な儀礼や伝承のために採取する樹木資源の場所について、現代十勝アイヌ自身も不確かな状況にあったため、購入した樹木資源を用いた文化伝承活動が散見された。真に機能する森林認証制度を成立させ、儀礼や伝承に必要な樹木資源を自由に採取することができるように、現代十勝アイヌと森林所有者の双方から要望を出し合い、協力しながら有用樹木資源利用地図を作成し、できるだけ多くの現代十勝アイヌの人々の参加のもとに話し合いを繰り返し、自由意志にもとづいた合意に達する必要があると考えられた。 キーワード:十勝アイヌ、文化伝承、樹木資源利用、森林認証制度、FPIC
  • 井上 淳生
    2024 年20 巻 p. 99-102
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/05/14
    ジャーナル オープンアクセス
  • 田中 佑実
    2024 年20 巻 p. 103-105
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2025/05/14
    ジャーナル オープンアクセス
  • 榎本 歩美
    2024 年20 巻 p. 106-110
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2025/05/14
    ジャーナル オープンアクセス
  • 鈴木 邦輝
    2024 年20 巻 p. 111-113
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2025/05/14
    ジャーナル オープンアクセス
  • 2024 年20 巻 p. 114-131
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2025/05/14
    ジャーナル オープンアクセス
  • 2024 年20 巻 p. 132-141
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2025/05/14
    ジャーナル オープンアクセス
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