森林認証制度は、認証材を市場に流通させ、持続的な森林利用を図り、森林所有者に自然環境と地域社会を守る取組を促す制度である。森林認証制度は、先住民社会および地域社会に配慮するよう、先住民族、地域住民の生活・文化に必要な動植物を採取する慣習を保全することも目指しているが、必ずしも機能しているとはいえない状況にある。そこで本研究では、森林認証制度の実現を通して今後の文化伝承活動を進めるために、十勝アイヌの人々の現在の樹木資源利用の実態を検討し、現代十勝アイヌの実態に適合した森林認証制度のあり方について提言を行うことを目的とした。現代十勝アイヌの17名に対して、樹木資源の利用経験と入手方法(採集・購入)について、聞き取り調査を実施した。その結果、現在の樹木の利用種数は合計14種類であった。伝統的な儀礼や伝承のために採取する樹木資源の場所について、現代十勝アイヌ自身も不確かな状況にあったため、購入した樹木資源を用いた文化伝承活動が散見された。真に機能する森林認証制度を成立させ、儀礼や伝承に必要な樹木資源を自由に採取することができるように、現代十勝アイヌと森林所有者の双方から要望を出し合い、協力しながら有用樹木資源利用地図を作成し、できるだけ多くの現代十勝アイヌの人々の参加のもとに話し合いを繰り返し、自由意志にもとづいた合意に達する必要があると考えられた。
キーワード:十勝アイヌ、文化伝承、樹木資源利用、森林認証制度、FPIC
抄録全体を表示