日本循環器病予防学会誌
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40 巻, 1 号
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  • 第2報 : 減塩学習終了後の食塩の追跡
    竹森 幸一, 山本 春江, 浅田 豊
    2005 年40 巻1 号 p. 2-8
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    研究目的はシナリオ学習をとりいれた健康教育モデルTYA (Try Angle) 方式2002の有効性と課題を検討することである。対象は青森県N町で開催された減塩教室に参加し、教室終了後10カ月後まで追跡することができた減塩教室参加者23人 (参加群) と塩分検査のみを希望した者 (検査群) 8人であった。教育効果と課題は教室前後、教室終了後5ヶ月および10ヶ月に測定した尿中食塩、カリウムおよび血圧値、並びに質問紙調査から分析した。参加群は教室終了後の食塩レベルを維持していたグループ (維持群) とリバウンドがみられた群 (戻り群) に分けられた。戻り群において、教室終了後5ヶ月に開かれたクラス会の学習効果が、10ヶ月後にみられた。最高および最低血圧は維持群と戻り群で低下し、検査群では変化がみられなかった。維持群の健康習慣レベルは戻り群や検査群のレベルより高かった。食塩に関する食習慣の改善が維持群と戻り群にみられた。このことから、健康習慣スコアが高く、食習慣が改善した人達が、教室終了後の食塩レベルを維持していたものと考えた。
    以上の結果から、教育プログラムは減塩教育に有効であったといえる。一方、リバウンドがみられる者があることから、対象者の生活習慣全体を考慮に入れたプログラムの開発が必要であると考える。
  • 千葉 雄, 斉藤 重幸, 高木 覚, 磯部 健, 竹内 宏, 加藤 伸郎, 藤原 禎, 赤坂 憲, 中村 陽介, 島本 和明
    2005 年40 巻1 号 p. 9-14
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    近年、腹部超音波を用いた内臓脂肪の蓄積を評価する方法が検討されている。そこで我々は住民検診において腹囲及び腹部超音波 (US) 法を応用し内臓脂肪蓄積の評価を実施した男性363名 (平均63.0±12.2歳) を対象に腹部肥満と動脈硬化危険因子との関係を検討した。
    対象は血圧高値群、高血糖群、高中性脂肪群、低HDLコレステロール群に分類し、危険因子集積を目的変数とした重回帰分析を行うと、腹囲、US法による内臓脂肪径 (visceral fat distance : VFD) が危険因子集積の説明変数として採択された.また、危険因子集積2個以上の高リスク群は1個以下の低リスク群と比較して腹囲、VFDが有意に高値であった.腹囲とVFDの中央値で区分した4群での比較で、動脈硬化危険因子との集積を検討すると、腹囲<86cmでVFD≧5.3cmである群では動脈硬化危険因子の集積が高率であった.
    US法VFD計測による内臓脂肪蓄積の評価が動脈硬化危険因子の集積評価に有用である可能性が示唆された。
  • 血糖、血中インスリンの変化と運動、およびウォーキング習慣の形成
    泉 嗣彦, 西田 潤子
    2005 年40 巻1 号 p. 15-21
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    耐糖能異常 (impaired glucose tolerance : IGT) に対する強力な生活習慣への介入は糖尿病の発病を予防できると報告されている。人間ドックにおける75例 (男63、女12、平均年齢59±9歳) のIGTへの保健指導による翌年の血糖と血中インスリンの変化を運動、およびウォーキング習慣の面よりretrospectiveに検討した。75gOGTTの2時間後の血糖は、166±16mg/dlから152±35mg/dlに減少していた (p<0.01) 。さらに、2時間後の血中インスリンも75±45μU/mlから67±45μU/mlに減少していた (p<0.05) 。血糖の改善した症例では血中インスリンが減少して、悪化した症例では増加していた。新しく定期的に週1回以上の運動習慣 (全てウォーキングだった) ができた12例ではいずれも血糖、血中インスリンは改善していた。活動的によく歩くウォーキングの習慣ができた29例では、その7割で血糖、血中インスリンは改善していた。以上よりウォーキングの習慣化は血糖と血中インスリンを改善でき、糖尿病の発病予防が期待できる。
  • 脳卒中および冠動脈疾患
    笠置 文善, 児玉 和紀, 早川 岳人, 岡山 明, 上島 弘嗣
    2005 年40 巻1 号 p. 22-27
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    日本を代表する集団の19年に及ぶ死亡追跡調査成績 (NIPPON DATA80) に基づいて、脳卒中や冠動脈疾患死亡のリスク評価チャートを作成した。この健康評価チャートは、年齢、性別、喫煙習慣、血圧水準、耐糖能異常の有無、血清総コレステロール値、等の個人が持っている要因の各レベルに対応した死亡確率が色づけで示されており、自らの健康度を見た目で容易に把握することができると共に、生活習慣の改善や予防対策を講ずるという個人への動機付けに利用することもできる。
    類似のチャートは、米国フラミンガム研究やニュージーランドのものが冠動脈疾患に関して存在するが、これらは日本国民にそのまま当てはまるものではない。日本の代表集団10,000人を対象として追跡調査したNIPPON DATA80は、日本人に起こっている要因と死亡との関連が適切に表現されている調査であり、最もこのようなチャートを作成するに適した成績である。このチャートは広く国民の健康増進に役立つものと期待できる。
  • 樗木 晶子, 長弘 千恵, 金 明煥, 小林 大佑, 小車 莉絵子, 福田 直行, 中田 亜希子, 香川 智啓, 長家 智子
    2005 年40 巻1 号 p. 28-33
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    38℃と41℃という湯温の違いが入浴時の高齢者の呼吸・循環動態へ及ぼす影響を以前報告した。この変化が高齢者に特有なものか否かを検討するため今回は12人の健常高齢者 (男性5人、女性7人、平均年齢 : 70±5歳) と12人の健常若年者 (男性6人、女性6人、平均年齢 : 23±3歳) を対象に、湯温41℃の入浴で、血圧、脈拍、pressure-rate product (収縮期血圧と心拍数の積、PRP) 、酸素飽和度、鼓膜温の変化を計測した。高齢者では収縮期血圧は入浴中有意な変化はなかったが、出浴後は若年者に比べ低下傾向が強かった。拡張期血圧は両群とも入浴中から低下し出浴後もそれが続いた。脈拍は両群とも入浴中上昇し、出浴後は入浴前より低下し、両群間に変動の差はなかった。PRPは高齢者は入浴直後に上昇したが、若年者は出浴直後に上昇し出浴後安静1時間の問に入浴前より低下した。酸素飽和度は高齢者のほうが出浴後長時間経過したときの低下がみられた。鼓膜温は若年者より高齢者の方が上昇傾向を示したが有意差は得られなかった。高齢者と若年者では入浴時の呼吸・循環動態の変化が異なることが明らかとなった。
  • 上田 一雄, 清原 裕, 飯田 三雄
    2005 年40 巻1 号 p. 34-40
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    長期にわたる久山町研究の結果から、耐糖能異常と心血管疾患の関係を中心に概説した。
    有病率の時代的変化は、評価や診断基準が異なるため、明確な結論は得難いが、以下の傾向がうかがわれた。
    糖尿病の有病率は近年増加する傾向にあるが、女性の高齢者に顕著である。IGTの有病率は18~20%で男女とも加齢に伴い増加する。発症率は6年間の追跡期間でIGT11%、DM2%であった。進展因子としてインスリン高値、食事の関与が考えられた。
    糖尿病例には高血圧、比体重高値、血清コレステロール高値を伴う頻度が高いが、近年その傾向が顕著となりmetabolic syndromeの有病率は30~50%と推定される。
    久山町研究における糖尿病例の予後は研究全体を通して大血管性合併症が規定したが、細かく見ると以下の事実が観察された。総死亡にたいする影響は研究初期では高血圧が顕著であったが、近年糖尿病のインパクトが増大した。小血管合併症では研究初期の集団で、蛋白尿と糖尿病の合併が生命予後を著しく悪化させたが、腎不全による死亡は無かった。第1集団の長期追跡では、糖尿病は女性の脳梗塞の危険因子であり、高血圧との合併はリスクを増大させた。近年の追跡研究の結果からは糖尿病もIGTも脳梗塞、冠動脈疾患発症のリスクを増大させた。
  • 川嶋 成乃亮
    2005 年40 巻1 号 p. 41-49
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    生体においては、酸化物質として活性酸素種があり、その一方、様々な抗酸化物質が存在し、その両者がバランスをとって存在する。そしてそのバランスが破綻し、酸化側に傾いた状態が酸化ストレスである。活性酸素種とは、大気中に存在する分子状酸素に比べ活性化された酸素分子種であり、フリーラジカルであるスーパーオキシド (O2) 、ヒドロキシラジカル (・OH) 、および非ラジカルである過酸化水素 (H2O2) などからなる。近年、種々の病態形成において、酸化ストレスの重要性が注目されているが、循環器領域においても同様であり、特に虚血性心疾患などの血管病の基盤となる動脈硬化において、酸化ストレスがその発症・進展に深く関係していることが明らかになってきている。以下に我々の研究成果を中心に、酸化ストレス、特にその中心となるスーパーオキシドの動脈硬化における産生増加の機序、そして動脈硬化の進展に及ぼす役割について述べる。
  • 相澤 仁志, 長谷部 直幸, 菊池 健次郎
    2005 年40 巻1 号 p. 50-54
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    脳卒中は本邦の循環器病の中では最も発症率が高く、国民病ともいわれている。脳卒中の中でも、とくに脳梗塞急性期の病態には酸化ストレスが深く関与しており、酸化ストレスを抑制することが治療の新たなターゲットと考えられる。脳が虚血に陥るとフリーラジカル/活性酸素種が産生され膜リン脂質・タンパク質・DNA・ミトコンドリア・小胞体などが障害され最終的には神経細胞死にいたる。本邦で脳梗塞急性期に使用可能となったフリーラジカルスカベンジャーのエダラボンは細胞毒性の高いハイドロキシラジカルなどの消去により、内皮細胞保護作用や脳浮腫・脳梗塞・遅発性神経細胞死の抑制を介して、臨床的に神経症候や機能障害を改善すると考えられている。脳梗塞急性期には白血球もスーパーオキシド/活性酸素種発生源の一つであるが、エダラボンにより白血球関連フリーラジカルも抑制することが明らかになった。
  • 豊増 功次, 吉田 典子, 岩崎 瑞枝, 平田 伸子, 原田 悟史
    2005 年40 巻1 号 p. 55-59
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    医療の現場における「ヒヤリ・ハット」の体験の有無とその回数を新規採用看護師に対し、採用後3ヶ月目とその後3ヶ月ごとに調査し、その回数が増加する例と不変・減少する例とで比較し、「ヒヤリ・ハット」の体験状況とメンタルヘルスとの関連を検討した。「ヒヤリ・ハット」は、質問紙から自己申告の形で3ヵ月間、仕事中に体験したかどうか、体験があればその回数を求めた。メンタルヘルスは、職業性ストレス簡易調査票、GHQ28日本版精神健康調査票から評価した。その結果、3ヶ月目から6ヶ月目にかけて「ヒヤリ・ハット」の回数が増加した「増加群」では、3ヶ月目の時点で「不変・減少群」に比べて仕事の適合性や職場内支援度が不良であった。「不変・減少群」では、3~6ヶ月目にメンタルヘルスの改善が見られたが、「増加群」では見られなかった。以上より「ヒヤリ・ハット」を繰り返す例では、職場内における個人面接を増やすなどメンタルサポートを行なうことが対策として重要と考えられた。
  • 第1報 : シナリオ・チュートリアルの導入過程
    浅田 豊, 山本 春江, 竹森 幸一
    2005 年40 巻1 号 p. 60-66
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    本研究は、シナリオ・チュートリアルシステムを導入した新しい健康教育モデルである「健康教育 TYA方式2002」を開発し、減塩教室の実施を通して、教室参加住民の学習過程を検証することを目的とした。対象は、減塩学習会に参加した青森県N町住民30名である。 2002年11月から2003年8月まで、健康教育TYA方式による減塩学習会及びクラス会を実施した。 TYA方式とは Try Angleの略であり健康教育における新方策開発の試みを意味する。同方式では地域住民・市町村・大学研究者の三者が連携協力し健康教育に参画する。また、健康問題に関する身近で具体的な状況を設定したシナリオが主たる教育材料となる。本研究では、地域の食生活改善推進員等が学習をサポートするチューターを担当した。実際の教室は塩分と血圧に関する講義・グループワーク・調理実習等の要素を含むものである。教室参加住民は、シナリオを基盤として、さらに、チューターによるサポートを受けて、減塩を中心とする生活習慣改善のための知識やスキルを習得することができた。また、参加住民同士が、お互いの生活経験を学習資源とした自由な討議を行なうことが、減塩に関する行動変容・実践につながったと捉えられる。さらに、TYA方式による健康教育を経て、参加住民の間に自ら学び、自ら実践を継続する力の基盤が養われたと推察された。
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