長期にわたる久山町研究の結果から、耐糖能異常と心血管疾患の関係を中心に概説した。
有病率の時代的変化は、評価や診断基準が異なるため、明確な結論は得難いが、以下の傾向がうかがわれた。
糖尿病の有病率は近年増加する傾向にあるが、女性の高齢者に顕著である。IGTの有病率は18~20%で男女とも加齢に伴い増加する。発症率は6年間の追跡期間でIGT11%、DM2%であった。進展因子としてインスリン高値、食事の関与が考えられた。
糖尿病例には高血圧、比体重高値、血清コレステロール高値を伴う頻度が高いが、近年その傾向が顕著となりmetabolic syndromeの有病率は30~50%と推定される。
久山町研究における糖尿病例の予後は研究全体を通して大血管性合併症が規定したが、細かく見ると以下の事実が観察された。総死亡にたいする影響は研究初期では高血圧が顕著であったが、近年糖尿病のインパクトが増大した。小血管合併症では研究初期の集団で、蛋白尿と糖尿病の合併が生命予後を著しく悪化させたが、腎不全による死亡は無かった。第1集団の長期追跡では、糖尿病は女性の脳梗塞の危険因子であり、高血圧との合併はリスクを増大させた。近年の追跡研究の結果からは糖尿病もIGTも脳梗塞、冠動脈疾患発症のリスクを増大させた。
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