中毒研究
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症例報告
  • 森 仁志, 吉村 有矢, 十倉 知久, 野田頭 達也, 今 明秀
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 37 巻 1 号 p. 29-35
    発行日: 2024/03/10
    公開日: 2024/03/30
    ジャーナル フリー

    86歳,女性。重度の意識障害,低血圧,徐脈のため当院にドクターヘリ搬送された。脳梗塞後の神経因性膀胱に対して1年以上前から臭化ジスチグミン5 mgを内服していた。Japan Coma Scale 300の意識障害と脈拍24回/minの徐脈,血圧70/40 mmHgの低血圧を認めた。気管挿管,人工呼吸管理,一時的ペースメーカー,高用量のカテコラミン投与を行ったが状態が改善しなかった。発汗,縮瞳,口腔内分泌物の低下などの身体所見と内服歴,コリンエステラーゼ(ChE)低値を総合してコリン作動性クリーゼを疑い,アトロピンの投与を開始したところ血圧は上昇した。その後も代謝性アシドーシスが改善せず,CTで小腸壊死を認めた。治療困難であり死亡退院となった。コリン作動性クリーゼは高齢者においては下限投与量であっても発症し重症化することがある。症状が非特異的であることや投与開始から発症までの期間が長い場合があるため診断に難渋する例がある。ChE阻害薬内服中の患者では常に本症を念頭に置き,トキシドロームを意識した診療が必要である。

  • 秋永 誠志郎, 大井 真里奈, 丸橋 孝昭, 浅利 靖
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 37 巻 1 号 p. 36-40
    発行日: 2024/03/10
    公開日: 2024/03/30
    ジャーナル フリー

    【背景】イヌサフランはユリ科植物の一種であり,その球根,塊茎にはコルヒチンが含まれる。本邦でも年間2~3例のイヌサフランの誤食,コルヒチン中毒が報告されている。50%致死量は0.5 mg/kgとされ,コルヒチン中毒は時に重篤な転帰をたどることが知られている。今回,われわれは致死量のコルヒチンを摂取したにもかかわらず保存的加療で軽快した症例を経験した。【症例提示】症例は61歳,女性。自宅の庭先に植えてあるユリ根と思われる植物の球根1つを炒めて摂取した。同日夜から嘔気,嘔吐が出現。のちに摂取した植物はイヌサフランであったことが判明し,コルヒチン中毒が疑われた。自宅から持参された球根より,1.6~4 mg/kgのコルヒチンを摂取したと予測された。胃管を挿入し,活性炭の反復投与を行い,集中治療室での慎重な経過観察の方針とし,連日血中,尿中コルヒチン濃度の測定を行った。経過中,消化器症状や骨髄抑制を認めたが第6病日まで活性炭の反復投与を行い,いずれも改善傾向となった。経過良好であり第13病日に自宅退院とした。【結語】イヌサフラン誤食によるコルヒチン中毒の1例を経験した。致死量を超えると推定された摂取量であったが,血中濃度のモニタリングを行い保存的治療で良好な経過をたどった。調理方法が予後に影響した可能性が示唆された。

  • 金 宗巧, 丸橋 孝昭, 吉村 久仁子, 大井 真里奈, 丸木 英雄, 長田 真由子, 浅利 靖
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 37 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 2024/03/10
    公開日: 2024/03/30
    ジャーナル フリー

    【はじめに】トウアズキは南亜熱帯に自生するマメ亜科の多年草である。種子には毒性物質であるabrinが含まれ,中毒例では蛋白質合成を阻害し臓器障害を引き起こし致死的となることがある。海外からの報告は散見されるものの本邦での報告例は検索し得たかぎりない。【症例】うつ病の既往がある20歳代男性。来院前日にインターネットで購入したトウアズキ約10 gの種子を砕いて自殺企図で経静脈と経口により摂取した。摂取後から下痢,嘔吐が出現したため当院救急外来を受診した。受診時,腹痛,嘔気がありトウアズキ中毒と診断し,入院のうえ保存的に経過を観察した。一過性の腎機能低下を認めたものの入院4日目には軽快し自宅退院となった。【結語】トウアズキ中毒の1例を経験し,トウアズキの入手が容易となっていることを把握した。海外では致死例も報告されるトウアズキ中毒は,今後増加していく可能性があることに留意すべきである。

症例短報
  • 増澤 佑哉, 須田 秀太郎, 庄司 高裕, 武部 元次郎, 菅原 洋子, 天津 裕子, 関根 和彦
    原稿種別: 症例短報
    2024 年 37 巻 1 号 p. 46-49
    発行日: 2024/03/10
    公開日: 2024/03/30
    ジャーナル フリー

    Diphenhydramine is a histamine H1-receptor antagonist that is commonly used for allergic reactions and frequently found in sleep aid products. A female in her 20s was brought to the emergency department with active tonic seizures after an intentional overdose of an over-the-counter drug containing diphenhydramine salicylate. Because the generalized tonic seizure continued for 52 min despite intravenous administration of diazepam, she underwent endotracheal intubation and continuous infusion of sedative agents, which terminated her seizures. Although her refractory status epilepticus was controlled using multiple antiepileptic medications, the state of severely impaired consciousness was prolonged, resulting in a vegetative state. While a literature search suggests that status epilepticus caused by diphenhydramine overdose is uncommon, special attention should be paid to this devastating neurological complication, and prompt medical management should be considered.

  • 飯沼 朗子, 佐藤 信宏, 田辺 耕介, 吉田 暁, 廣瀬 保夫
    原稿種別: 症例短報
    2024 年 37 巻 1 号 p. 50-52
    発行日: 2024/03/10
    公開日: 2024/03/30
    ジャーナル フリー

    Symplocarpus nipponicus Makino, a member of the Araceae family, contains insoluble needle-shaped calcium oxalate crystals that cause oral mucosal injury. We report two cases of a 55-year-old man and an 81-year-old woman who presented to the emergency department after ingestion of Symplocarpus nipponicus Makino that was accidentally identified as Hosta sieboldiana, a wild plant used for edible. Both patients experienced oral pain but recovered and were discharged the following day. Although Symplocarpus nipponicus Makino is unlikely to be ingested in large quantities owing to oral pain associated with its intake, physicians should be aware of its severe mucous membrane irritant effect that necessitates emergency treatment including airway management.

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