摂食障害は,自己評価に対する体型や体重の過大評価と食行動異常を主な症状とする精神疾患である。神経性やせ症は,最も治療が困難な精神疾患のひとつであり,致死率も高く,慢性化し,入院治療によって一時的には体重が回復しても,長期化,再燃することが多い。摂食障害患者は,食行動の問題の改善,体重の回復に対して両価的であり,受診につながらないケースも全患者数の半数以上を占めている。動機づけを高める取り組みは,治療に取り組む鍵となり,治療全般を通じて欠かせない要因の一つである。治療の導入時に動機づけを評価し,より良い方向への変化を促す効果的な介入は,長期的な回復にもつながると考えられる。摂食障害の標準的な治療ガイドラインでは,神経性過食症に対して,認知行動療法などの精神療法が第一選択の治療法の一つとして推奨されている。動機づけに関する治療導入の工夫を取り入れられることが推奨されている。
行動変容に関する古典的なモデルとして,変化の段階モデル1,2)は,もともと薬物乱用の領域で開発され,摂食障害患者に対しても応用されており,摂食障害の症状の維持要因に焦点付けした,動機づけを高める様々なアプローチが散見する。
本稿では,摂食障害,特に,AN,BNに対する動機づけに関連する先行研究の知見を踏まえて,回復への動機づけを高める支援の方法の様々な取り組みについて報告する。
抄録全体を表示