日本摂食障害学会雑誌
Online ISSN : 2436-0139
1 巻, 1 号
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目次
巻頭言
特集 第23回日本摂食障害学会学術集会から
会長講演
  • 安藤 哲也
    2021 年 1 巻 1 号 p. 3-11
    発行日: 2021/06/04
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル フリー

    平成26~28年度の厚生労働科学研究費補助金「摂食障害の診療体制整備に関する研究」および平成26年度に開始された「摂食障害治療支援センター設置運営事業」で明らかになった摂食障害の医療の課題を示し,それぞれの研究班と事業の成果について報告した。また,摂食障害の認知行動療法を我が国に導入する研究の経過について報告した。摂食障害のアンメットニーズにこたえるうえでの日本摂食障害学会の役割について私見を述べた。

教育講演1
  • 中里 道子
    2021 年 1 巻 1 号 p. 12-18
    発行日: 2021/06/04
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル フリー

    摂食障害は,自己評価に対する体型や体重の過大評価と食行動異常を主な症状とする精神疾患である。神経性やせ症は,最も治療が困難な精神疾患のひとつであり,致死率も高く,慢性化し,入院治療によって一時的には体重が回復しても,長期化,再燃することが多い。摂食障害患者は,食行動の問題の改善,体重の回復に対して両価的であり,受診につながらないケースも全患者数の半数以上を占めている。動機づけを高める取り組みは,治療に取り組む鍵となり,治療全般を通じて欠かせない要因の一つである。治療の導入時に動機づけを評価し,より良い方向への変化を促す効果的な介入は,長期的な回復にもつながると考えられる。摂食障害の標準的な治療ガイドラインでは,神経性過食症に対して,認知行動療法などの精神療法が第一選択の治療法の一つとして推奨されている。動機づけに関する治療導入の工夫を取り入れられることが推奨されている。

    行動変容に関する古典的なモデルとして,変化の段階モデル1,2)は,もともと薬物乱用の領域で開発され,摂食障害患者に対しても応用されており,摂食障害の症状の維持要因に焦点付けした,動機づけを高める様々なアプローチが散見する。

    本稿では,摂食障害,特に,AN,BNに対する動機づけに関連する先行研究の知見を踏まえて,回復への動機づけを高める支援の方法の様々な取り組みについて報告する。

シンポジウム1
  • 関根 典子, 山﨑 美穂, 新田 厚子, 河合 啓介
    2021 年 1 巻 1 号 p. 19-27
    発行日: 2021/06/04
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル フリー

    摂食障害の看護では,摂食障害患者に対して先入観を持たず,その病態を正しく理解する姿勢が基本となる。さらに,患者が自律的に望ましい行動変容に向かうことを大きな目標とし,共感的・受容的な姿勢で寄り添う役割も担う。しかし摂食障害では,患者と看護者の治療関係の構築の難しさが散見され,看護師が患者に対して陰性感情を抱いたり,モチベーションの低下に繋がったりすることもある。当科では,その対策として,摂食障害の病態理解を目的とした勉強会や症例検討会の実施,また医師と看護師は,他職種とチームとして関わり,治療方針や日々の対応について詳細な情報交換を行い,一貫した対応方法を目指している。さらに,入院時オリエンテーション用紙の活用や,スタッフ内でチームの良い雰囲気を作る取り組みなどを行い,スタッフの看護向上を図っている。本稿では,これらの取り組みの実際について症例を交えて報告する。

シンポジウム3
  • 髙倉 修
    2021 年 1 巻 1 号 p. 28-36
    発行日: 2021/06/04
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル フリー

    神経性やせ症,神経性過食症などの摂食障害(ED)は認知における障害であり,本質的には共通した中核的精神病理をもっているという考えに基づき,EDの亜型分類に関わらず適用可能とした認知行動療法がCBT-Eである。世界的には,有効性を示すランダム化比較試験の結果が報告されている。CBT-Eでは,治療者はまず患者の持つ不安に共感し,現在の問題に理解を示しつつ,治療への希望を与えることが不可欠である。その上で,ケースフォーミュレーションを患者と共同で作成し,EDの維持因子を明らかにする。また,自宅では食事のセルフモニタリングと規則正しい食生活の確立を目指す。低体重の患者は,これに加えて体重の回復を目指す。そして,自己評価における体重や体形,それをコントロールすることを過度に評価することにより生じる問題について積極的に取り扱う。治療の終盤には,再発予防策を講じて終了となる。

    良好な治療効果を得るには原法への忠実性も重要とされている。したがって,CBT-Eを実践するには,治療構造や治療技術について熟知する必要があるものと考えられる。

シンポジウム5
  • 澤田 実佳
    2021 年 1 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2021/06/04
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル フリー

    摂食障害の好発年齢は思春期・青年期であるが,近年,高齢の摂食障害患者が増加している。高齢摂食障害患者の食事内容や食環境は,若年患者と異なる特徴をもつ。高齢者における低栄養は,社会的要因や精神的心理的要因だけでなく,加齢に伴う臭覚・味覚障害や食欲不振などの身体的な要因が関与している。特に消化管の機能変化や筋肉量の減少は,高齢摂食障害患者の栄養療法に影響を及ぼす。高齢摂食障害患者の栄養療法では,易消化食や消化態栄養剤が相対的に適しており,エネルギー量だけではなく蛋白質の十分な摂取も重要となる。このように,高齢摂食障害患者では摂食障害の病態に加え,加齢に伴う身体的な変化と食生活上の特徴を念頭においた個別化した対応が重要である。

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