神戸市北区の保養施設「しあわせの村」において, トランセクト法によるチョウ類群集の調査を行い, 同施設内の里山環境を評価した. 調査は, 2000年から2002年までの3年間に月2回, 4月から10月まで実施した. 3年間の調査で目撃したチョウは, 8科54種2106個体であった. 種数, 多様度指数, 各種環境指数はいずれも経年的に低下していた. 優占種は, ヤマトシジミ, キチョウ, イチモンジセセリ, コジャノメ, ヒメウラナミジャノメ, ミヤマセセリ, テングチョウであった. 都市緑地に多い種と, 二次林に多い種の, 両方の個体数が多いことは, 「しあわせの村」が広義の里山環境を維持していることを示している. 一方, チョウ類群集から算定される環境の階級存在比 (ER) は, 原始段階の環境に典型的なパターンを示した. このERにもとづく環境評価は, 現実の植生とは一致しない. 近畿地方の低地では二次段階と原始段階の環境をERのみで判別することは困難かもしれない.
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