本報告では、臨地実習で患者からのきつい言葉やつねるという行為による暴力を受けた看護学生への対応、指導に当たり、看護教員が自らの語り、ナラティブを通して、当時直面した葛藤と困難を振り返り、以下3点の疑問に対して考察した。①患者から受けた行為を告白した学生は、その事実の秘匿を教員に要望した。学生の意向を尊重し、「出来事に悩み葛藤、模索し、患者へ対応していく」という学びのプロセスのために秘密を守るべきか。②学生をつねった患者のケアおよび対応は、患者のニーズに応答していたか。③実習指導教員が学生との秘密を守ることは、臨床指導者と実習指導教員の協働の視点において適切であるのか。今回の事例報告を通して、看護学実習で学生が対象者と関わる際に生じる葛藤や困難感に対処できるよう、実習指導教員としてどのようなことができるかを考えるきっかけを提供することを意図している。
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