日本看護倫理学会誌
Online ISSN : 2434-7361
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巻頭言
原著論文
  • 坂本 仁美, 永峯 卓哉
    2023 年 15 巻 1 号 p. 3-12
    発行日: 2023/03/20
    公開日: 2023/04/14
    [早期公開] 公開日: 2022/03/08
    ジャーナル フリー

    本研究では、情報化社会において、看護師が適切な倫理観のもと看護情報が扱えることを目的に、看護学分野において曖昧となっている「情報倫理」の概念を明確化することである。Walker & Avantの概念分析の手法を用い、情報倫理の一般的用法について19件、概念の属性、先行要件、帰結の抽出には20件の文献を対象に分析を行った。結果、3つの属性、5つの先行要件、6つの帰結が抽出された。看護における情報倫理は、まず知識や能力、特に情報活用能力を身につけたうえで、リスクに対する感受性や情報の重要度に対する判断、情報を扱う意識を養っていく必要がある。そのうえで、情報活用能力と情報を扱う意識を醸成し、個人情報の保護と守秘義務を遵守するとともに、患者(対象者)に対する配慮ある行動、そして適切な情報の収集と管理の元、それを看護実践へ反映することの重要性が示唆された。

  • 大西 香代子, 中原 純, 箕輪 千佳, 有江 文栄
    2023 年 15 巻 1 号 p. 13-20
    発行日: 2023/03/20
    公開日: 2023/04/14
    [早期公開] 公開日: 2022/06/24
    ジャーナル フリー

    目的:倫理審査を受けた看護学研究者の倫理審査に対する評価とその特性との関連及び望ましいあり方を明らかにする。

    方法:全国の看護系大学90校の看護学研究者900名に質問紙調査を実施した。個人属性、組織変数のほか、倫理審査の評価18項目、望ましいあり方11項目について5段階で回答を求めた。重回帰分析により尺度としての妥当性を確認し、特性との関連を検討した。

    結果・考察:審査結果が妥当だった等の肯定的評価の一方、手続きの大変さも感じていた。審査の肯定的評価には、審査基準の公表や結果を1カ月以内に出すこと、審査へのサポート体制があることなどが関連していた。また、科学的妥当性への言及や同意取得の手続き等について、研究者の理解不足も示唆されたが、委員になるための研修制度や資格が整備されることを望んでいた。

    結論:看護学研究者に対する研修だけではなく、倫理審査に対する組織の取組みの改善が重要である。

  • 柿澤 美奈子, 坂江 千寿子
    2023 年 15 巻 1 号 p. 21-30
    発行日: 2023/03/20
    公開日: 2023/04/14
    [早期公開] 公開日: 2022/06/24
    ジャーナル フリー

    精神看護学実習中、臨床指導者の参加を得て開催している倫理的課題に関するカンファレンスの学修効果を明らかにすることを目的に学生の記録を質的帰納的に分析した。結果〈病状や行動制限範囲などの情報とエビデンスに基づいたケアの必要性(判断)〉〈患者の思いをくみ尊重する姿勢の認識〉〈患者が望みや自信をもって、自己決定の権利を行使できるような支援〉〈精神症状による影響と患者・家族・地域のつながりは退院支援の鍵〉〈多職種尊重、連携・協働がケアに不可欠〉〈患者のニーズとリスクの二面を見据えた看護師の実践〉〈複数の価値が対立する中で根気よく最善の解決方法を模索する看護師〉〈倫理的感受性の高まりと新たな問題意識の芽生え〉〈看護師・学生からの複数の視点を得て深まる考え〉の9カテゴリーが生成された。学生は対話により倫理的感受性が高まり倫理的能力が促進された。効果的なカンファレンスには臨床指導者の参加が不可欠である。

  • 小野 聡子, 伊東 美佐江, 村上 京子, 梶原 恵美
    2023 年 15 巻 1 号 p. 31-39
    発行日: 2023/03/20
    公開日: 2023/04/14
    [早期公開] 公開日: 2022/09/01
    ジャーナル フリー

    看護師との関わりにおける患者のケアリング体験を明らかにするために、入院経験のある19歳以上の患者18名を対象に半構造的面接を行った。面接内容をテーマ分析した結果、4つのテーマおよび7つのサブテーマが生成された。患者は、看護師との関わりの中で、その時の【看護師の個性が与える安心感】に触れることでケアリング体験を知覚し、患者自身の【辛さに応じた関わりの捉え方】を実感していた。これらの体験と看護師との【会話の積み重ねから深まる信頼関係】が相互に作用することで、個の看護師から受けるケアリング体験をしていた。さらに看護チームという集団の看護師との関わりから、【看護チームにみられる統一感】を体験していた。これらのテーマから、患者のケアリング体験を深化させるためには、個の看護師の態度や専門性の向上に加え、組織的スキルの向上が必要であることが示唆された。

  • 佐藤 章伍
    2023 年 15 巻 1 号 p. 40-52
    発行日: 2023/03/20
    公開日: 2023/04/14
    [早期公開] 公開日: 2022/11/08
    ジャーナル フリー

    看護師の倫理的行動と個人・組織特性の関連を明らかにすることを目的に、東海地方の一般病床200床以上の病院に勤務する看護師2,000名を対象として無記名自記式質問紙調査を実施し、331件の有効回答を得た。調査内容は個人特性7項目、組織特性7項目、看護師の倫理的行動尺度改訂版を用いた倫理的行動とした。分析方法は、基本統計量の算出および、個人・組織特性による倫理的行動得点の差の検定を行い、有意差のみられたものは多重比較を行った。その結果、属性による比較では、尺度全体得点において「子どもの有無」、「職位」、「所属病棟診療科」、「時間外労働時間数」で有意な差がみられた。特に「時間外労働時間数」は尺度全体得点及び全ての下位因子で有意な差がみられ、看護師への身体的・精神的負担の増大と同時に倫理的行動にも大きく影響することが明らかとなった。

  • 蔡 小瑛
    2023 年 15 巻 1 号 p. 53-61
    発行日: 2023/03/20
    公開日: 2023/04/14
    [早期公開] 公開日: 2023/01/11
    ジャーナル フリー

    This article aims to present what constitutes ‘not-good nursing’ by analyzing firsthand accounts of the experiences of 16 Taiwanese cancer patients as part of the Good Nurse International Collaborative Research Project. The author wishes to discuss the significance of this particular research project from the perspective of logotherapy, developed by the Austrian neurologist and psychiatrist, Viktor Frankl (1905–1997). The characteristics of ‘not-good nursing’ were perceived and articulated by the participants in the following five ways: (a) Being professionally unreliable; (b) Being rigid; (c) Being rude; (d) Behaving like a ‘step-mother’; (e) Being callous. The characteristics clearly demonstrate that the ethical dimension of nursing has become less prominent in this technology-driven era. We can, perhaps, from a historical and social perspective, understand that the concept of ‘not-good nursing’ is the result of a kind of an ‘attitude of living from day to day without any plan’, ‘a fatalist mindset’ in the era of nihilism, or a ‘loss of meaning’, as described by Frankl. The firsthand accounts of patients recorded in this study will be valuable as teaching materials in nursing education, nursing practice, and research. The hope is that the ‘conscience’ of a nurse can be ‘re-awakened’.

短報
  • 岡本 あゆみ, 渡邉 弘美, 米山 あゆみ, 佐野 明子, 高橋 正子
    2023 年 15 巻 1 号 p. 62-71
    発行日: 2023/03/20
    公開日: 2023/04/14
    [早期公開] 公開日: 2022/06/24
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、看護職と後見人等との連携における現状と課題を明らかにすることである。地域包括ケア加算と認知症ケア加算の届け出のある全医療機関1,564ヶ所で高齢者ケアに携わる看護職のアンケートのうち、看護職と後見人等との連携に関する自由記述のあったものを対象とした(n=53)。看護職は【高齢患者の社会的境遇】を実感しており、【後見等の知識ニーズの意識】【後見等に関する高齢者看護のニーズの自覚】【後見等に関する期待】があるが、【後見等への認知・感情】には認知の差と肯定的または否定的な感情があり、【高齢患者の意思決定やACPへの対応】【後見等に関連する実践】にも差が生じていたことが窺えた。後見等の啓発により、制度を利用する者だけでなく医療の場にも拡がることで、看護職も高齢者本人の望む人生終盤の生活を支える地域包括ケアのチームの一員として機能する可能性を考える。

  • 松浦 利江子
    2023 年 15 巻 1 号 p. 72-82
    発行日: 2023/03/20
    公開日: 2023/04/14
    [早期公開] 公開日: 2022/08/05
    ジャーナル フリー

    目的:精神科と一般科看護師の道徳的感受性とその関連要因について比較し、それぞれの特徴を明らかにする。方法:中部地方の1精神科病院200名、1総合病院577名の看護師に自記式質問紙調査を実施した。道徳的感受性質問紙日本語版2018(前田ら2019、以下「J-MSQ2018」とする)、個人要因、職場環境要因、看護師の自己像を尋ね、J-MSQ2018を従属変数として重回帰分析を実施した(p<0.05)。結果:J-MSQ2018に欠損のない555(有効回答率71.4%)を分析対象とした。自由度調整済み決定係数は精神科0.16、一般科0.24であった。一般科は、「個人要因」の男性、「看護師の自己像」の項目と関連があった。「道徳的強さ」は、両科共に自尊感情との間に関連がみとめられた。結論:一般科は「看護師の自己像」の側面での支援が、両科共に自尊感情低下防止が看護師支援に寄与しうることが示唆された。

  • 丸山 始美, 山下 早苗, 篁 宗一
    2023 年 15 巻 1 号 p. 83-91
    発行日: 2023/03/20
    公開日: 2023/04/14
    [早期公開] 公開日: 2022/08/22
    ジャーナル フリー

    ターミナル期にある小児がんの子どもの意思決定を支援する看護師の倫理的苦悩を明らかにすることを研究目的とし、看護師を対象にした半構造化面接を行った。分析対象となったのは9名の語りで、ナラティヴ研究法によるテーマ分析と構造分析を行った。その結果、構造分析により6つの語りの構造とその語りの特徴が見出され、テーマ分析により9名の倫理的苦悩のテーマと5つの意思決定の内容と13の行いたいと考えた行動と17の行動の妨げが見出された。看護師は倫理的苦悩を語る際に、迷いながら、言葉を選び、自身の行動を語る特徴があった。また、看護師は子どもの意向を確認したり、説明する必要性を認識していたとしても、行動を妨げる要因があるために、倫理的苦悩を抱えていた。看護師は子どもや家族とともに揺らぎ、悩みつつ、倫理的苦悩に対峙し続けていくことで、看護師としての成長があるのではないかと示唆された。

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