日本看護倫理学会誌
Online ISSN : 2434-7361
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巻頭言
原著論文
  • 岩﨑 真子, 梶谷 佳子
    2025 年17 巻1 号 p. 3-12
    発行日: 2025/03/20
    公開日: 2025/04/08
    [早期公開] 公開日: 2024/05/08
    ジャーナル フリー

    本研究は、臨床実習指導看護師が看護学生の倫理的思考をどのように促し、倫理的実践をどのように教え導いているのかという看護倫理に関する指導の実態を検討することを目的とした。質的記述的研究デザインを用い、臨床実習指導看護師9名に半構造的インタビューを行い、156のコードから12のカテゴリーを生成した。倫理的視点を包含する指導内容として、【患者主体の看護を実践することの大切さ】【様々な考え方を受容する姿勢の大切さ】などのカテゴリーが生成された。指導方法として、【学生の患者理解を深化させる】【学生と共に看護の意味を紡ぐ】などのカテゴリーが生成された。臨床実習指導看護師の指導実践は、患者の尊厳を守ることや患者中心の看護に価値をおくものであった。時機を見計らい、効果的なコーチングや倫理的な視点にたった発問を行うことにより、学生が倫理的に知覚し行動することを促進させ得ると考えられた。

  • 西海 亮太
    2025 年17 巻1 号 p. 13-22
    発行日: 2025/03/20
    公開日: 2025/04/08
    [早期公開] 公開日: 2024/06/10
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は道徳的感受性の高い精神科看護師が倫理的問題へどのようにして気づくことができるのか、また対応に至るまでの判断と倫理的問題への対応方法を明らかにすることである。調査は精神科病院に勤務する看護師9名へ半構造化面接を実施し質的帰納的な分析を行った。半構造化面接より248のコード、32のサブカテゴリー、11のカテゴリーが抽出された。参加者は患者尊重が欠如していることへの違和感を抱くことから倫理的問題だと気づくことに至っていた。次に参加者は患者や医療者に存在する様々な価値の明確化を行い、判断に至る際には信頼関係の構築が治療の根幹であると理解していた。参加者は倫理的問題への対応を行う上で患者、看護師間のケアリングを基盤とした対応を行っており、精神科看護師が倫理的問題へ対応する際の新たな示唆を得ることができた。

  • 尾之上 智世, 北村 愛子
    2025 年17 巻1 号 p. 23-30
    発行日: 2025/03/20
    公開日: 2025/04/08
    [早期公開] 公開日: 2024/07/05
    ジャーナル フリー

    集中治療室で終末期を迎える患者の治療選択における家族の解放的意思決定を支える看護実践を明らかにするために「集中治療に携わる看護師のクリニカルラダー」レベルⅣ以上の看護師11人に対し半構造化面接を行った。10カテゴリーが生成され、《家族の様子から理解の程度を推し量る》、《治療選択に関わる人々の関係性を把握する》、《話すことへの制約がかかっている状況を把握する》、《理解を深めるために現状を分かりやすく説明する》、《家族が理解できるように医師にはたらきかける》、《率直に話せる環境を整える》、《家族の悩みを共に考える》、《他の家族と助け合い決定できるように導く》、《家族の苦悩を受け止め力づける》、《納得した上で決定することができたか家族の言動から評価する》が明らかになった。今回、明らかになった支援内容を積極的に実践やカンファレンスで活用し医療チームで解放的意思決定を支えていく必要があると考える。

  • 妹尾 友理
    2025 年17 巻1 号 p. 31-38
    発行日: 2025/03/20
    公開日: 2025/04/08
    [早期公開] 公開日: 2024/07/05
    ジャーナル フリー

    目的:看護師にとってCOVID-19患者の看取りはどのような経験であったのかを明らかにすることを目的とした。方法:COVID-19患者の看取りを経験した5年以上の臨床経験をもつ看護師3名に非構造化インタビューを行い、現象学的アプローチを用いて分析した。結果:【看護師としてだけでなく、人としても許せないことをしてしまった後悔を感じる】と振り返りつつ、【経験を積み重ねてきた自分であっても初めての看取りがあることに驚き戸惑(った)】いながら、【作業ではない看護を改めて考える】、【自分の看護の力量を再確認】する機会となっていた。結論:看護師は患者の尊厳を守ることができなかった看取りに後悔と苦痛を感じており、非日常時でも患者の尊厳を守るケアの在り方を考える必要がある。看護の本質を再考する機会となっており、ネガティブな感情と向き合いながら看護師として成長していく経験であることが示唆された。

  • 高橋 梢子, 安部 史子, 川瀬 淑子, 平井 由佳, 岡安 誠子
    2025 年17 巻1 号 p. 39-49
    発行日: 2025/03/20
    公開日: 2025/04/08
    [早期公開] 公開日: 2024/09/03
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、看護学生が実習で体験した倫理的だと感じた場面、道徳的に悩んだ場面、倫理的ではないと感じた場面を分類することである。対象は、A大学4年生84名が看護倫理の授業で作成したレポート内の実習体験とし、一つの体験を1記録単位とし内容分析を行った。59名から同意が得られ、211記録単位を分析対象とした。学生が倫理的だと感じた場面は【真のニーズを捉え柔軟に関わっていた】などであった。道徳的に悩んだ場面は【患者の反応が捉えられず自分のケアに自信が持てずもやもやした】、【患者の自律尊重、尊厳を守った妥当でよいケアについて悩んだ】、【ケアしたいことがあるが自分の能力不足でできなかった】などであった。倫理的ではないと感じた場面は、58記録単位あり【患者の意向が考慮されていないケアがあった】などであった。本研究結果は、教員の実践場面の教材化に繋がり、実習の準備性ができる等の教育活動に役立つと考えられる。

  • 川原 由佳里, 鈴木 姿子, 辻 守栄, 飯田 郁実, 牛山 実保子, 関根 弘子, 内山 孝子, 藤澤 和歌子, 綾田 美紗姫
    2025 年17 巻1 号 p. 50-57
    発行日: 2025/03/20
    公開日: 2025/04/08
    [早期公開] 公開日: 2024/10/22
    ジャーナル フリー

    日本の保健医療の場における社会正義と解放に向けての専門看護師の実践を記述することを目的とした。資格取得後3年以上の実践経験を有する専門看護師14名へのインタビューのデータをもとに事例を作成し、分析した。結果、日本の保健医療の場における社会正義の問題として1)偏見や差別、役割と文化的規範、2)資源の偏在、制度や組織のはざま、3)医療の組織とイデオロギー、4)看護実践を支配するパースペクティブ、信念や価値が明らかになった。また専門看護師により人々の解放や擁護、組織や社会の変革に向けた実践が行われており、そこでは共に取り組む、二項対立ではなく関係性を意識する、言葉で説得する、モデルとなって実践するなど、優れた実践の基盤に基づくアプローチが用いられていた。今後の課題として人々の健康と提供されるケアに影響を及ぼす社会政治的要因の明確化、その知見を適切に共有し、改善していくアプローチの探究が示唆された。

  • 結城 佳子
    2025 年17 巻1 号 p. 58-65
    発行日: 2025/03/20
    公開日: 2025/04/08
    [早期公開] 公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    目的:倫理的葛藤を内包する日常的看護実践場面における看護師の行為選択過程に関する国内の研究を概観し、その課題を明らかにする。方法:CiNii Research、医学中央雑誌Web版を用い、適格基準・除外基準に基づき対象文献を選定し、倫理的葛藤場面における看護師の行為選択とその思考過程に関する記述を抽出、要約、検討した。結果:21文献を選定、分析対象とした。考察:従来の研究成果では、倫理的葛藤場面における看護師の行為選択は、患者とその家族を中心におき、看護師の経験により得られた知識、価値観や信念、思考や感情および看護・医療チーム等組織環境による影響を受けて行われる円環的な思考過程であることが明らかとなっていた。再現性を担保し、妥当性を有する研究方法の開発が課題であった。

短報
  • 小野 若菜子, 森田 誠子, 永井 智子, 小西 恵美子
    2025 年17 巻1 号 p. 66-72
    発行日: 2025/03/20
    公開日: 2025/04/08
    [早期公開] 公開日: 2024/05/27
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、インタビュー調査により、地域包括支援センター(以下、センターとする)の活動における倫理的課題と倫理的支援環境を探求し、住民へのよりよい倫理的実践について考察することである。研究デザインは、半構造的インタビューによる質的記述的研究であり、対象は、センターに勤務する保健師・看護師、社会福祉士、主任ケアマネジャー10名であった。その結果、センターの活動では、複雑な倫理的課題として【本人・家族が支援を望んでいない状況】【本人・家族、周囲の意向の違いによる葛藤】【本人の尊厳が脅かされる状況】【地域のつながりを築く困難】、相談業務の難しさとして【真実を見極める難しさ】【業務範囲を超える相談対応の難しさ】を抽出した。また、専門職は、専門性を尊重し合い一緒に仕事をする意識を持っており、このことは、相談しやすい職場環境を作り、よりよい倫理的実践に貢献すると考える。

  • 坂本 仁美
    2025 年17 巻1 号 p. 73-81
    発行日: 2025/03/20
    公開日: 2025/04/08
    [早期公開] 公開日: 2024/08/02
    ジャーナル フリー

    看護情報を扱う際の倫理的行動に対する認識について明らかにすることを目的に、層化無作為抽出した一般病院に勤務する看護管理職、および訪問看護ステーションに勤務する看護師の資格を有する管理職を対象に無記名自記式質問紙調査を実施し、147名の有効回答を得た。看護情報を扱う際の倫理的行動に対する認識について、自由回答の記述を分析データとし質的記述的に分析したところ、6コアカテゴリが抽出された。【情報漏洩を防ぐ】ことを明確な目的として予防的な行動を習慣化し、それを意識した上で対策を実行することが望ましく、【情報を扱うことに対する倫理観の涵養】に努めるとともに【情報や患者に対する誠実な態度】をもって、【適切な情報共有】を行うことが必要である。また、情報を守秘することのみに注視するのではなく【情報の完全性を確保】しつつ、【看護への活用】ができることが、看護情報を扱う際の倫理的行動として認識されていると明らかになった。

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