本論文は,一般撮影において深度センサ付きカメラにより得られた被写体厚と,ポジショニング画像とAIを用いた撮影部位の推定により,最適撮影条件の自動設定を目指した研究である.
OpenPose 等のAI 手法を用いた骨格推定はさまざまな研究分野で利用されているが,骨格推定によるX 線撮影部位の特定への応用は新規性があり,今後他の放射線技術学領域の研究への応用が期待できる.
被写体と着衣の密着性や受像面と被写体の密着性等の課題が残るものの,手法の改善や併用などにより更に被写体厚推定精度が向上し,撮影条件の最適化が自動で行えるようになれば,被ばく線量の低減やエラー防止の観点から臨床的に有意義な研究であると考え,編集委員会で高く評価された.以上から本研究は瀬木賞に選出された.
本論文は,放射線治療分野における入射電子エネルギーの算出に関する研究である.高エネルギー電子線の入射電子エネルギースペクトルのLévy 分布を使用する際の至適パラメータを求め,新たな決定式を用いている.その結果,基準照射野における深部量百分率および軸外線量比のビルドアップを含めたすべての領域で計算結果と実測結果は高い線量一致を示した.本論文の手法は,従来の報告より簡便かつ高精度な線量分布計算に応用でき,将来的に学術面・社会的な貢献が大きいことが編集委員会で高く評価された.以上から,本論文は瀬木賞に選出された.
本論文は,CT撮影における被ばく推定に必要な特定スライスを,深層学習を用いて自動選択する手法についての研究である.WAZA-ARIv2 というWeb システムによる被ばく推定に必要なのは5スライスであるが,ほかにも目印となる4スライスを加えた9スライスを自動選択対象とすることで,5スライスの認識精度を上げているところに新規性がある.また,被ばくの推定精度が高く,比較的臨床運用に近いと考えられる点も編集委員会で高く評価された.
この研究ではWAZA-ARIv2システムへの利用を想定しているが,CT検査において特定スライスを推定する手法や精度向上のために用いられた手法は,他のアプリケーションへの応用も考えられ,関連研究分野への貢献も期待できる.以上から本論文は瀬木賞に選出された.